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四章『トマト編』
第396話 モンスターパニック1
しおりを挟む「なんだあの巨大生物は!」
「私は聖騎士たちをまとめてきますぞ! 勇者様たちは避難を!」
そう言うとオショーは走り去って行った。
巨大生物は立ち上がったまま動かない。ここからじゃ少し距離があるがそれでもでかいことに変わりはない。
「バーガー様・・・・・・」
アイナが不安がっている。しっかりしないとな。
「大丈夫だ。ヤバそうな相手だが、こっちには聖騎士の軍勢と、それにSクラス冒険者たちがいる。それにアイナもな!」
「はい! 頑張ります!」
「よしジゼルたちと合流だ」
俺たちがジゼルたちの元につくと何やら話し込んでいる。
「ジゼル、エリノア!」
「んにゃ、バーガーだにゃ」
「何を話していたんだ?」
「あの魔人の事だよ」
エリノアが指さすのは伝説山のふもとに立ち尽くしている巨大生物だ。
魔人? 魔人と言ったか?
「あれ魔人なのか?」
俺の質問にジゼルは淡々と答えた。
「あれはニードルハック」
「え? 何言ってんだ、ニードルハックは人形・・・・・・というか、俺がMソードで上半身を吹き飛ばしたぞ」
「Mソードにそんな力が? 穴の中で何があったか、詳しく話して」
スカリーチェのことで頭がいっぱいで話すのを忘れていたな。
俺はジゼルたちに洞窟内で起きたことを話した。スカリーチェの正体は伏せた。
「そう。そのせいかも」
「どうしてだ?」
「魔人と言えど頭部が破壊されれば、本来なら死は免れない。それがリーチの群体性で、棘一つ一つに命が宿り生き延びた」
「棘に命が?」
「仮説の話。筋は通っている」
「わかった、続けてくれ」
「司令塔だった頭部を失った棘たちは暴走を開始。手当たり次第に魔物に棘を刺して支配し体の一部にした」
「それがあれだってのか?」
「そう。あの魔力はニードルハックのもの。あれがニードルハックなのは間違いない」
やられて巨大化するとか、なにレンジャーの敵だよ!
とかツッコンでる場合じゃないか。
「どうすれば倒せる、急所はないのか?」
「すでに急所だったニードルハックの頭部を破壊している。どこを破壊しても一緒」
ゾンビ状態ってわけか。
俺はモーちゃんの背中に乗っているスーに視線を向けた。
「スー」
「ふあぁ。なんなの?」
「前髪もらうぞ」
「わかったの。ん」
アイナに持たれて俺はスーの額に近づく。スーは目を閉じている。
前髪を挟むといとも容易く前髪が取れた。正式にはこれは髪じゃない。魔力生命体のスーは魔力で人の姿を作っているだけだ。
これでいつでも筋肉の精霊を呼び出すことができる。
そして退魔の力を持った伝説の剣、Mソード。
磐石の布陣だ。
だがまだ足りない。
「クスクス、何か足りないんじゃないっスか?」
テントの影から現れたスカリーチェはにこやかにそう言った。
「何か足りない、だと?」
「ほらあの、赤くてまぁるい」
「トマトか!」
そうかトマトから検出された魔法、強化魔法(ストレングスマジック)なら魂(マテリア)の実体化(ライズソウル)で召喚した筋肉の精霊を強化できるのか。
「あの魔力草があればなんとかなるかもしれないっスね。洞窟はあの魔人の近くっス」
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