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四章『トマト編』

第387話 伝説の剣を抱いて10

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 ニードルハックはこちらを睨みつける。
 真っ直ぐには近づいてこず、斜めに徐々に近づいてくる。

 かなり警戒している様子だ。

 そしてあるていど近づくと、足元に落ちているクリスだった水晶の欠片を拾う。それを口元に運び、

「ガリッ!! ガゴッ!!」

 いい音を立てて、それを喰らい始める。

「なぁスカリーチェ」
「はいっス」
「勇者を前にニードルハックは何をしていると思う?」
「食事っス。見た通りスね」

 あんなもの食べて腹壊さないのか・・・・・・?
 ハンバーガーの俺を差し置いて石ころを食べるか普通?

 あいつ食ってばっかだな。それも強くなるためか。

 水晶を食べたあとは。リーチだった蛭たちをつまんで喰らいだす。蛭たちは力なく、お菓子のようにつままれていく。

 これ、止めた方がいいよな。
 俺が僅かに動くと、ニードルハックがこちらに右腕を向ける。食事はつづいている。あくまで視線と右腕だけを俺に向けている。食事の邪魔をするなというわけか。

 即座に攻撃を仕掛けてこないのは戦う気がないのか。それとも・・・・・・。

 よくわからんな。

 手持ち無沙汰になった俺は、気まぐれでMソードを解析する。
 武器を解析するのは初めてだな。

 『Mソードから勇者斬(ブレイヴスルー)を検出。1回使用可能』

 たった1回こっきりか。
 などと嘆いていると。さらに言葉が続いた。

 『時間経過により再使用可能』

 ほっとけば魔力が回復するってことだよな、これ。
 さすがは神クラスの武器だ! 使い捨てじゃなかったんだな!

 食事を終えたニードルハックが立ち上がる。こちらをキツく睨みつけている。

 その視線はまたしてもスカリーチェに向けられている。

「また狙われてるぞ」
「いやっスねぇ。私の体は魔王様だけのものっスよ」

 ニードルハックはこちらに一歩、また一歩と近づいてくる。

「そんなこと言ってる場合か。逃げてろって言ってるだろ? それともあれか? やっぱり俺とやり合うってのか?」
「クスクス」

 スカリーチェは妖艶に笑うだけだ。
 俺は先程の唇の感触を思い出して、バンズが食べ頃の熱さになるのを感じる。

 スカリーチェは口元に指を這わせる。

「だからダメでスよ、この体は魔王様のものっス」
「・・・・・・調子狂うな!」

 俺はニードルハックに向かって跳ね出した。

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