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四章『トマト編』
第382話 伝説の剣を抱いて5
しおりを挟むトマトを半分食べた彼女は、俺から口を離す。
「足りたか?」
「全然っスね」
「取ってこようか?」
「悪いっスよ」
「気にすんなよ。だから耐えてくれ」
「耐える? 何をスか?」
「いや、え? その腹に刺さった剣だよ、見るからに重症だろ」
「ああ、これっスか」
女性が剣に触る。
「おい、迂闊に触るな。奇跡的に重要な臓器を傷つけずに貫通しているんだろうからな。トマトを取ってきたら助けを呼んでくるから待っててくれ」
「ここからは出られないっスよ」
「どうしてわかるんだ。諦めるなよ」
「諦めるも何も、私は自分からこうしているんスよ」
「なに?」
どういうことだ? 自分で刺したとでもいうのか?
「自己紹介がまだだったっスね。私は」
次の彼女の言葉に俺は戦慄した。
「魔王軍四天王が一人。『魔女』のスカリーチェっス」
その言葉を理解した瞬間に俺は距離をとる。
なんだ何が起きている?
「くすくす。驚いてるっスね。まー無理もないっスよね。勇者さん」
「な!?」
俺が勇者であることもバレているのか!?
「この洞窟は私の固有結界なんスよ。入れるのは魔王様と勇者だけっス」
わからない謎だ。なぜ自分からバラす?
俺がハンバーガーだから油断しているのか?
「なんでバラした?」
「挨拶は基本ッスよ? 勇者も名乗ったらどうっスか」
「・・・・・・俺は勇者。バーガー・グリルガードだ」
「バーガーっスね。覚えたっスよ」
戦闘が始まる気配はない。
「そう身構えないでほしいっス」
「それは無理な相談だろ」
「ほらこの剣。これを取りに来たんスよね? じゃなきゃこんなところに来ないっスもん」
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「そうっス。伝説の剣『Mソード』っス」
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「なんでそんなものがスカリーチェに刺さっているんだ?」
「だから自分で刺したんスよ」
ますます意味がわからんぞ。
「ほら抜かないんスか?」
「抜いたら出血してしまうだろ?」
「敵の心配をしている場合スか? 別に構わないっスよ」
「ちょ。ちょっとまて」
「なんスか?」
「スカリーチェ、君はどっち側なんだ?」
「どっち側スか。簡単な質問スね」
スカリーチェの頬に赤みがさす。
「魔王様に決まっているス! ああ魔王様に早く会いたいっス!」
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