上 下
378 / 1,167
四章『トマト編』

第378話 伝説の剣を抱いて1

しおりを挟む


「ぐ・・・・・・ここは」

 意識を取り戻す。
 この感覚、ハンバーガーの体だ。つまりここは異世界、だが、前にいた風景とはだいぶ変わっていた。

「暗い・・・・・・何も見えないぞ」

 動くことができるから埋まっているわけではないな。
 とりあえず具材を確認する。

「スーちゃんの前髪の破片が少しだけか・・・・・・まずいな」

 女神のところに行ったということは俺に刻まれた魔法陣が傷ついたということだ。その回復にスーちゃんの前髪の魔力を使ったのだろう。起きるのがもう少し遅ければどうなっていたか・・・・・・。

 俺の体は暗くて確認できないが、動かした感じ五体満足(手足ないけど)だ。

「たしかニードルハックの棘を植え付けられた魔物が魔法反射能力を持ったクリスに向かって魔法を放ったんだよな」

 そしてその爆発に巻き込まれた俺は意識を失った。
 他の人たちは大丈夫なのだろうか。

「おーい!! 誰かいないかー!!」




 ダメだ、俺の声が反響するだけだ。くそ! まだ戦闘が続いているかもしれないってのに・・・・・・ニードルハックもあの近くにいるはずなんだ。

 魔人が3頭、聖騎士大隊長のオショーがいるとはいえ、かなり危険な状態だ。

「ここから出ないと」

 空が見えないってことは、ここは地下なのだろうな。
 ならば上に進めば出られるはず・・・・・・っていってもなぁ。

 具材の残りも少ない。まずは具材を確保しなければ。

 そもそもここはただの空洞で出口なんてないのかもしれない。
 魔力供給するための具材だってない可能性のほうが高い。

 どうすれば・・・・・・。


 俺は女神の言葉を思い出す。

 『ハンバーガーの本懐を忘れるな』・・・・・・か。これは助言か、それともただの戯れ言か。

 やることもない。己の中に眠るハンバーガーの声でも聞いてみるか。

 俺は目を閉じて内側に意識を向けていく。


 懐かしいな。筋トレ後期はこうやって坐禅に時間を費やしたもんだ。アニメ見ながら。

 筋肉との対話に成功した経験上。ハンバーガーもきっと俺に答えてくれるはずだ。










 む、声は聞こえなかったが、何やら気になってきたな。
 ビビビっときた、なんだ?  向こうからだ。

 俺は開眼して、気配のするほうに這いずる。
 行き止まりではないらしいな。

 しばらく進むと光が見えてくる。気配が強くなっている。
 一体何が・・・・・・。

 道を曲がると、光の正体がわかる。一部の岩が光っている。
 視界を取り戻して分かったことがある、この空洞はかなり広い洞窟だ。

 む、気配はさらに奥のほうからだな。

 俺は岩を跳ねて登る。少し高い場所に『それ』はあった。











「トマトだ!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

あなたを、守りたかった

かぜかおる
ファンタジー
アンジェリカは公爵家の娘、隣国の第二王子ローランドと結婚して、この国の王妃になる予定である。 今、公爵家では結婚直前の披露パーティーが行われていた。 しかし、婚約者のローランドが迎えにこない! ひとまずパーティー会場に一人で向かうもののそこにいたのは・・・ スカッとザマァではない 4話目の最後らへんで微グロ注意。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

さよなら 大好きな人

小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。 政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。 彼にふさわしい女性になるために努力するほど。 しかし、アーリアのそんな気持ちは、 ある日、第2王子によって踏み躙られることになる…… ※本編は悲恋です。 ※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。 ※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...