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四章『トマト編』

第377話 本懐

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「丁度いい。聞きたいことがあるんだ」
「あーん? ついでに聞かれてもなぁ、答える気がせんぞ」
「伝説の剣のことなんだが」
「これ話を聞かぬか愚か者」
「なんだよ。教えてくれてもいいだろ。いまピンチなんだよ」
「あんなものをピンチじゃと? ははは! やっぱり貴様はユーモアのセンスがあるのぉ」
「いや俺からしたらマジでヤバい状況なんだが・・・・・・。というか、少し離れていた俺がこうなっているってことは、他の人は大丈夫なのか?」
「他人の心配をしとる場合か?  まぁよい、貴様が一番重症じゃから安心せい」
「そうか、なら誰も死んでないな」
「まぁの」

 女神は飽きたように指を鳴らす。
 巨大なクッションが出現する。女神はそれにボディプレスを喰らわせる。

「そうじゃな。一ついいことを教えてやろう」
「いいこと?」
「伝説の剣はすぐに見つかるぞ」
「本当か!?」
「余が嘘をつくものか」
「そ、そうだな。あの地にあるんだ」
「余の助言通りに動いておればそこまでは問題あるまい」
「そこまで?」
「ああ、全部手伝ったらつまらぬからな。そろそろ無様に散ってもよいぞ?」
「誰が散るか。俺は絶対に生き残ってやる」
「ははっ! ハンバーガーの分際でよく言うのぉ」
「ここまで来たんだ。行けとるところまで行くだけだ」
「なら、さらに一つ教えてやろう」
「羽振りがいいな」
「いやか?  いやなら」
「お願いします!」
「よろしい。トマトじゃ」
「はい?」
「トマトがある」
「トマトだと?」
「そうじゃ、貴様はハンバーガーに魂を支配されかけておるが、ハンバーガーの本懐を理解しておらぬ」
「ハンバーガーの本懐か、食べられることだろ?」
「被食願望は最終的なものじゃ。その前にあるじゃろうが」
「・・・・・・美味しくなりたい」
「ピンポーン。珍しく正解じゃ」
「それにはトマトが必要なのか?」
「ハンバーガーと言えば、パテ、レタス、トマト、チーズ、そして○○○○じゃろうが」
「なに?  最後の言葉が聞こえなかったぞ」
「全部言ったらつまらぬからな」

 その4つとあと何かを挟めば俺は旨くなるのか。

「他の転生者は自らの力に溺れて、そこに付け込まれて死んだ。結構な割合でじゃ。貴様にはその心配はないが、ハンバーガーを理解することじゃな」

 女神は指を鳴らす。クッションが消える。

「さて、そろそろ行くがいい。まず戻ったら、選択は間違えないことじゃな」
「選択?」
「ハンバーガーの本懐を忘れるな、ということじゃ。にひひ」




 俺は白い光に包まれて消えた。

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