358 / 1,167
四章『トマト編』
第358話 怪物の眠る森7
しおりを挟む「ギャアアアア!!」
悲鳴だ。激痛に襲われた者のリアクションだ。
チーターズの鋭い爪はオショーには届かなかった。
それどころか、チーターズの突き出した腕が空高くに切り飛ばされている。
「お、俺の腕がぁッ!!」
「カマさんのスキル。旋風(ツムジカゼ)。設置型のトラップスキルですぞ」
「クソッ!!」
チーターズは右腕の切断面を左手で強く抑えて後方へ退く。
今度はオショーもチーターズに詰め寄る。
圧倒的だ、俺たちが加勢に入るまでもない。
「バーガー様、射ますか?」
「まだ様子を見よう。下手をすれば戦いの邪魔になり兼ねない」
「わかりました」
「もちろん、アイナの腕を疑っているわけじゃないからな」
「ふふ。わかっていますよ」
あの戦いの決着はもう着くだろう。チーターズとかいう魔人も大したことなさそうだ。あれならAクラスの魔物、幻影大鷲(アパリションイーグル)の方が強そうだ。
「く、くく」
チーターズは不敵に笑っている。
オショーはゆっくり距離を詰めている。
「ここまで引き寄せれば・・・・・・それはもう孤立したも同然だ!」
オショーの足が止まる。辺りの茂みが不自然に揺れる。
飛び出したのはチーターズだ。
まてまて、チーターズはそこにいるだろ?
「群れる魔人か」
「そうだ、俺たちは群れる豹の魔物だった!」
総数15頭のチーターズがオショーを取り囲む。
それを見た聖騎士たちが駆け寄ろうとする。
オショーが叫んだ。
「手出しは無用ですぞ!」
「賢明な判断だな、その巣から出れば容赦なく狩る!」
オショーを取り囲み、ジリジリと距離を詰めるチーターズ。
そして、
「殺せ!」
腕を飛ばされた個体が叫ぶと、一斉にチーターズがオショー目掛けて襲いかかる。
その刹那、オショーはため息をつく。
「台風(タイフウ)」
オショーの呟きに呼応して風が渦巻く。瞬く間にオショーとチーターズを巻き込む。
少しして風が止む。オショーの周りが円状にえぐれている。
間を置いて、ボトボトと何かが落ちてくる。肉塊だ。チーターズだったものが次々に落ちてくる。
「ここまで離れれば、私の攻撃に皆を巻き込むこともない」
残った隻腕のチーターズが戦略的にではなく、あからさまに恐れて後退りをする。
「ぐ、俺の仲間たちを」
「あとはお主だけですぞ」
「くっ!!」
チーターズは踵を返して走り出す。
オショーは幾重にもカマさんを振るい。鎌鼬を作り出す。
「あの足の速さ、あれが魔人としての特異な点ですな。私の足では彼奴に追いつけません。どなたか追いつける方は?」
「オショーで追いつけないにゃら、ミーたちでも無理だにゃ」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
あなたを、守りたかった
かぜかおる
ファンタジー
アンジェリカは公爵家の娘、隣国の第二王子ローランドと結婚して、この国の王妃になる予定である。
今、公爵家では結婚直前の披露パーティーが行われていた。
しかし、婚約者のローランドが迎えにこない!
ひとまずパーティー会場に一人で向かうもののそこにいたのは・・・
スカッとザマァではない
4話目の最後らへんで微グロ注意。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
さよなら 大好きな人
小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。
政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。
彼にふさわしい女性になるために努力するほど。
しかし、アーリアのそんな気持ちは、
ある日、第2王子によって踏み躙られることになる……
※本編は悲恋です。
※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。
※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる