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四章『トマト編』

第357話 怪物の眠る森6

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 扉を勢いよく開いたエリノアが叫ぶ。

「皆(みんにゃ)! 大変だよ!」
「どうした?」
「伝令が殺された!」
「なに!?」

 俺たちは慌ててベースキャンプの広場に出る。

 人だかりができている。そこには無残に殺された聖騎士の姿があった。

「アイナ、見るな」
「見ます。何が起きたのか知らなければなりません!」

 2組の死体は喉をかき切られたのか。頭がかろうじて繋がっている状態だ。なんともエグい殺し方だ。

 さらに見張り台から聖騎士の声がする。外に何かいるらしい。

 エリノアが抜刀して跳躍。丸太の柵に飛び乗る。

「あれは魔人だにゃ」

 俺たちも遅れて外に出る。

 あれはどの魔人だ?  口から滴る血を綺麗に舐めとっている。
 オショーが書類を見て照らし合わせる。苛立ちを隠せない声で呟いた。

「あれは3頭の魔人のどれでもないですぞ」

 つまり新手か。
 なぜわざわざ殺した伝令を連れてきたのか。

 新手の魔人が叫んだ。

「はははは! 人間! お前たちに逃げ道はない! その巣から逃げようものなら! この豹の魔人であるチーターズが首をかき切ってやろう!」

 なるほど、おどしか。
 これでは迂闊に伝令を送って援軍要請ができない。

「お前たちは孤立した! はははは!」

 チーターズは高笑いをする。確かにな、これじゃ消耗するだけだ。

「誰だあんた?」

 ベースキャンプを出てチーターズに向かって歩く男が一人。
 オショーだ。

「私の部下は戦って死んだのか?」
「は?」
「お前が殺したのは私の部下だ。彼らは戦って死んだのか?」
「ああ!そうだな! 一人は不意打ちしてやったが、もう一人は剣を抜いたぞ! 俺に瞬殺されたがな」
「そうか」

 オショーはそう言うと背中の聖鎌を構える。
 チーターズの姿勢が低くなる。戦闘態勢か。

「私は聖騎士大隊長、オショー。推して参る」

 オショーは聖鎌を振るう。チーターズとはまだ20メートルほど離れている。いくら鎌が大きくても射程外のはずだ。

 だが。チーターズは飛び退いて回避行動を取る。
 なんだ? チーターズのいたところの草が刈り取られている。

「我が聖鎌『カマさん』のスキル。鎌鼬(カマイタチ)を回避するとは、なんたる動物的直感」
「へ!風魔法は元から視認しにくいものだが目を凝らせば大したことないな!」
「ただの風魔法ではありませぬぞ」
「な!?」

 オショーはもう動いていない。
 だがチーターズはしきりに動き回っている。

「この風!追尾してくるのか!」
「その鎌鼬は目標に当たるまで追尾しますぞ」

 オショーはカマさんを振ってさらに鎌鼬を作り出す。

「ほらほら、私を殺さない限り終わりませぬぞ」
「くっ!!」

 チーターズが足を折りたたみ。限界まで軋ませる。
 そして爆発的な跳躍力でオショーに襲いかかる。

 チーターズの腕がオショーの喉元に迫る。

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