357 / 1,167
四章『トマト編』
第357話 怪物の眠る森6
しおりを挟む扉を勢いよく開いたエリノアが叫ぶ。
「皆(みんにゃ)! 大変だよ!」
「どうした?」
「伝令が殺された!」
「なに!?」
俺たちは慌ててベースキャンプの広場に出る。
人だかりができている。そこには無残に殺された聖騎士の姿があった。
「アイナ、見るな」
「見ます。何が起きたのか知らなければなりません!」
2組の死体は喉をかき切られたのか。頭がかろうじて繋がっている状態だ。なんともエグい殺し方だ。
さらに見張り台から聖騎士の声がする。外に何かいるらしい。
エリノアが抜刀して跳躍。丸太の柵に飛び乗る。
「あれは魔人だにゃ」
俺たちも遅れて外に出る。
あれはどの魔人だ? 口から滴る血を綺麗に舐めとっている。
オショーが書類を見て照らし合わせる。苛立ちを隠せない声で呟いた。
「あれは3頭の魔人のどれでもないですぞ」
つまり新手か。
なぜわざわざ殺した伝令を連れてきたのか。
新手の魔人が叫んだ。
「はははは! 人間! お前たちに逃げ道はない! その巣から逃げようものなら! この豹の魔人であるチーターズが首をかき切ってやろう!」
なるほど、おどしか。
これでは迂闊に伝令を送って援軍要請ができない。
「お前たちは孤立した! はははは!」
チーターズは高笑いをする。確かにな、これじゃ消耗するだけだ。
「誰だあんた?」
ベースキャンプを出てチーターズに向かって歩く男が一人。
オショーだ。
「私の部下は戦って死んだのか?」
「は?」
「お前が殺したのは私の部下だ。彼らは戦って死んだのか?」
「ああ!そうだな! 一人は不意打ちしてやったが、もう一人は剣を抜いたぞ! 俺に瞬殺されたがな」
「そうか」
オショーはそう言うと背中の聖鎌を構える。
チーターズの姿勢が低くなる。戦闘態勢か。
「私は聖騎士大隊長、オショー。推して参る」
オショーは聖鎌を振るう。チーターズとはまだ20メートルほど離れている。いくら鎌が大きくても射程外のはずだ。
だが。チーターズは飛び退いて回避行動を取る。
なんだ? チーターズのいたところの草が刈り取られている。
「我が聖鎌『カマさん』のスキル。鎌鼬(カマイタチ)を回避するとは、なんたる動物的直感」
「へ!風魔法は元から視認しにくいものだが目を凝らせば大したことないな!」
「ただの風魔法ではありませぬぞ」
「な!?」
オショーはもう動いていない。
だがチーターズはしきりに動き回っている。
「この風!追尾してくるのか!」
「その鎌鼬は目標に当たるまで追尾しますぞ」
オショーはカマさんを振ってさらに鎌鼬を作り出す。
「ほらほら、私を殺さない限り終わりませぬぞ」
「くっ!!」
チーターズが足を折りたたみ。限界まで軋ませる。
そして爆発的な跳躍力でオショーに襲いかかる。
チーターズの腕がオショーの喉元に迫る。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
「お前は彼女(婚約者)に助けられている」という言葉を信じず不貞をして、婚約者を罵ってまで婚約解消した男の2度目は無かった話
ラララキヲ
ファンタジー
ロメロには5歳の時から3歳年上の婚約者が居た。侯爵令息嫡男の自分に子爵令嬢の年上の婚約者。そしてそんな婚約者の事を両親は
「お前は彼女の力で助けられている」
と、訳の分からない事を言ってくる。何が“彼女の力”だ。そんなもの感じた事も無い。
そう思っていたロメロは次第に婚約者が疎ましくなる。どれだけ両親に「彼女を大切にしろ」と言われてもロメロは信じなかった。
両親の言葉を信じなかったロメロは15歳で入学した学園で伯爵令嬢と恋に落ちた。
そしてロメロは両親があれだけ言い聞かせた婚約者よりも伯爵令嬢を選び婚約解消を口にした。
自分の婚約者を「詐欺師」と罵りながら……──
これは【人の言う事を信じなかった男】の話。
◇テンプレ自己中男をざまぁ
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
<!!ホットランキング&ファンタジーランキング(4位)入り!!ありがとうございます(*^^*)!![2022.8.29]>
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生したら『無職』でした~モフモフお兄さんたちに囲まれてスローライフのつもりが商人無双しています~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
悪神を倒して死んだ僕は、異世界に転生してました。もちろん、3人の兄も一緒でした。
ええっ?
こんなとこまで、ついてこないでよ、お兄ちゃん!
エブリスタにも、掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる