130 / 185
第四章「恩愛訣別関(おんないわかれのせき)」
【魂魄・参】『時空を刻む針を見よ』32話「三兄弟③」
しおりを挟む
「いくら山賊でも、晒し首はやり過ぎよっ」
「お嬢さま、守護職には、どうぞ口を挟まないで下さい。お父上から一任されています」
「なっ……」
机に向かい書類に目を通し、ふり向きもしない刻蔵の背中を浄瑠璃は睨み付ける。
奴隷としてこの家に来たとき彼は全てに怯えて震えるばかりだった。その時は「心配することはない」と安心させたものだが、人は変われば変わるものだ。
狂都守護職副長。
今や彼は肩書だけの喜多方当主に代り、組織を統率しまとめあげ、山賊狩りを筆頭に鬼とする異人の処罰、正規の朝廷軍部が出動するまでもない、都の汚れ仕事を一手に引き受けていた。
「副長、お伝えしたいことがあります……あっ、姫さま、ご機嫌うるわしく」
「うるわしくないいわよっ」
副長室に入ってきた職員に姫は苛々した様子で言い放ち、鼻息を荒げて退室した。残った刻蔵は涼しい顔で知らせを受ける。
「四条大橋に現れる異人?」
「見た者の話では、黒い巨人が道行く者から刀を奪っているとのことです」
ここ狂都では異人の存在は認められていない。邪馬徒を凌ぐ文明と技術を持った彼らを覇道皇は恐れ、難破船から日ノ本に漂流した者を、鬼と決めつけては悉く処刑していた。
彼らを追い詰める華の仕事を軍部が行い、後始末――処刑するのはいつも守護職の役目だ。
「軍部に任せておけ」
「しかし、彼らは九尾狐との戦いで動けません。ここは我らの出番かと」
「都の治安は我らの務めか……わかった、今夜出動する」
刻蔵はそう言って職員を退室させ、胸元から名の彫られた首飾りを取り出した。それはかつて泣いてばかりの自分に母親が作ってくれたお守りだった。
忙しく毎日を送る中でも母親と兄のことを忘れた日はない。彼らは元気でいるだろうか……。
「フンッ……どうせ、もう……死んでいる」
刻蔵は呟くと首飾りを握り、残っていた書類を片付け、夜に向けて準備を始める。
異人であれば自分が出動せずとも下っ端で充分であるが、黒い異人はめっぽう力強いと聞く。それに軍部から難癖を付けられる場合もある。自分が参加した方が奴らも口を出せまい。
彼の自信は最近の守護職……刻蔵の功績の数々に裏付けられていた。
○
「ここが……鬼が出るという五条橋か」
牛若は被衣で顔を隠して横笛を吹き、巷で噂される鬼が来るのを待った。
あれから役所へ行ったが、二人の兄の情報を得ることはできなかった。役所に登録されていないとなると、彼らは既に死んでいる可能性もあるが……彼は考えた。
何かの事情で登録していないだけかも知れない。それであれば功績を重ねて兄たちに自分を見つけて貰うしかない……と。
「刀を奪う鬼か。一体、何者だろう」
牛若は霧が立ち込める橋の中央を歩く。鬼は橋を通る者を誰彼構わず襲い物品を奪うという。中でも刀には目が無いらしく、多くの武人が被害に遭っていた。笛を吹き目立てばあちらから姿を現す……作戦は見事に的中した。
「……刀置いてケ」
「お前が橋の上の鬼か」
霧が風に流れると巨大な鬼が姿を現した。
剃髪した顔は暗闇に紛れるほど黒く光り、同じく漆黒の衣服は僧が着る法衣に似ている。更に両手で巨大な金剛杖を持ち構えていた。
「さては僧から剥ぎ取ったな……悪い子だ」
そう呟くと牛若は、橋の欄干を駆け跳び、軽やかに鬼に斬り付けた。
鬼は杖でそれを受け止めると杖で風を切り対抗する。牛若はいかにも重そうな杖を軽々と避けると、鬼の背後に周り斬りつけるが、鬼は少しも痛がることもなく白い息を吐く。
「中々の腕だな……しかし、ここはどうだッ」
高い防御力を誇る体は、いくら斬りつけても意味が無いと判断した牛若は、そのまま身をひるがえすと、鬼の前方にしゃがみ、膝のサラを砕こうとする。
急所さえ押さえれば、いくら強力な鬼でも戦闘不能となるはずだ。
「アウチッ」
「なにッ」
鬼はそう言って足を抱えて転げ回った。
牛若は驚く……彼の鋭い横薙ぎを鬼は跳躍して避けたのだ。今まで誰にも攻撃を避けられたことがなかった、彼の一薙ぎはサラではなく鬼の脛を捉えたが、驚きはそれだけではなかった。
「痛い……痛いヨ!」
「しゃべれるのか……いや、お前、ヒトかッ」
牛若は脛を抑え涙を流す黒い鬼を抱き抱えた。月明かりに照らされた顔をよく見ると、目が二つに鼻と口もある、牛若と同じ顔、ただ皮膚の色が黒いだけの同じヒトだった。
無論、その額にツノなどない。頭部には日ノ本の直毛とは異なる縮れた剛毛が生えていた。
「刀……カタナ……」
「お前……一体何者なんだ」
そう言う牛若に彼は少しずつカタコトの言葉で説明し始めた。
自分は遙か遠い国から来て奴隷として船で働かされていたが、嵐の晩に沈没し漂流して日ノ本に辿り着いたという。
問答無用に斬りかかる軍部から逃げ延び、世話になった寺の住職から「刀を千本集めれば、売った代金で帰れる」と言われたという。
その住職は亡くなるまで彼を保護し、言葉や様々なことを彼に教えたという。
「お坊さん……優しかったヨ」
「そうか。同じヒトだったのか……名前は何と言うんだ」
「ベンジャミン……ベンジャミン・慶庵」
「不思議な名前だ……ケイアンとは? 和尚の名か」
「そうだヨ、亡くなる前に法衣と一緒にくれたヨ」
牛若は彼をかくまうことにした。歴史ある狂都は排他的で、異人は見つかり次第に殺される。いくら牛若が強くても勢力を増す守護職に見つかっては厄介だ。
牛若は彼の名を縮めてベンケイと呼んだ。そして牛若を慕う彼と共に、二人の兄を探そうと、夜の都から静かに離れて行った――。
○
同じころ、四条では職員を三人連れた刻蔵が鬼を成敗しようと、大橋を渡っていた。
すると立ち込めた霧の中から人影がヌッと現れる。その人影は物凄い勢いで駆けて来ると、続けざまに職員を二人斬り殺し、刻蔵を守る最後の職員を真っ二つに両断すると、鬼の形相で刻蔵に迫ってきた。
「お前が……守護職の刻蔵かッ」
「そうだ。鬼よ……相手にとって不足はない。かかってこい」
涼しい顔で刻蔵は太刀を受け止める。
それは今まで彼が受けたどの攻撃よりも強力で重く、守護職になってから微塵も動かさなかった眉を寄せるほどの威力であった。
「やるな、しかし……これならどうだ」
そう言うと刻蔵は刀を片手で構えもう片方の掌に添える。この構えは短期間で守護職の副長にまでのし上がった彼の得意技だった。
相手の急所に狙いを定めて一瞬の内に突く。いまだかつて、この技を見切れた者はいない。
「猪口才な……これでも食らえッ」
対する男……浅見も得意の技で対抗する。
両手で構えた刀を背中にまわす事により、その軌道を隠し一気に両断するのだ。防御なしの捨て身の技なので、やはり一瞬の勝負となる。
「いくぞッ」
「おうッ」
「お嬢さま、守護職には、どうぞ口を挟まないで下さい。お父上から一任されています」
「なっ……」
机に向かい書類に目を通し、ふり向きもしない刻蔵の背中を浄瑠璃は睨み付ける。
奴隷としてこの家に来たとき彼は全てに怯えて震えるばかりだった。その時は「心配することはない」と安心させたものだが、人は変われば変わるものだ。
狂都守護職副長。
今や彼は肩書だけの喜多方当主に代り、組織を統率しまとめあげ、山賊狩りを筆頭に鬼とする異人の処罰、正規の朝廷軍部が出動するまでもない、都の汚れ仕事を一手に引き受けていた。
「副長、お伝えしたいことがあります……あっ、姫さま、ご機嫌うるわしく」
「うるわしくないいわよっ」
副長室に入ってきた職員に姫は苛々した様子で言い放ち、鼻息を荒げて退室した。残った刻蔵は涼しい顔で知らせを受ける。
「四条大橋に現れる異人?」
「見た者の話では、黒い巨人が道行く者から刀を奪っているとのことです」
ここ狂都では異人の存在は認められていない。邪馬徒を凌ぐ文明と技術を持った彼らを覇道皇は恐れ、難破船から日ノ本に漂流した者を、鬼と決めつけては悉く処刑していた。
彼らを追い詰める華の仕事を軍部が行い、後始末――処刑するのはいつも守護職の役目だ。
「軍部に任せておけ」
「しかし、彼らは九尾狐との戦いで動けません。ここは我らの出番かと」
「都の治安は我らの務めか……わかった、今夜出動する」
刻蔵はそう言って職員を退室させ、胸元から名の彫られた首飾りを取り出した。それはかつて泣いてばかりの自分に母親が作ってくれたお守りだった。
忙しく毎日を送る中でも母親と兄のことを忘れた日はない。彼らは元気でいるだろうか……。
「フンッ……どうせ、もう……死んでいる」
刻蔵は呟くと首飾りを握り、残っていた書類を片付け、夜に向けて準備を始める。
異人であれば自分が出動せずとも下っ端で充分であるが、黒い異人はめっぽう力強いと聞く。それに軍部から難癖を付けられる場合もある。自分が参加した方が奴らも口を出せまい。
彼の自信は最近の守護職……刻蔵の功績の数々に裏付けられていた。
○
「ここが……鬼が出るという五条橋か」
牛若は被衣で顔を隠して横笛を吹き、巷で噂される鬼が来るのを待った。
あれから役所へ行ったが、二人の兄の情報を得ることはできなかった。役所に登録されていないとなると、彼らは既に死んでいる可能性もあるが……彼は考えた。
何かの事情で登録していないだけかも知れない。それであれば功績を重ねて兄たちに自分を見つけて貰うしかない……と。
「刀を奪う鬼か。一体、何者だろう」
牛若は霧が立ち込める橋の中央を歩く。鬼は橋を通る者を誰彼構わず襲い物品を奪うという。中でも刀には目が無いらしく、多くの武人が被害に遭っていた。笛を吹き目立てばあちらから姿を現す……作戦は見事に的中した。
「……刀置いてケ」
「お前が橋の上の鬼か」
霧が風に流れると巨大な鬼が姿を現した。
剃髪した顔は暗闇に紛れるほど黒く光り、同じく漆黒の衣服は僧が着る法衣に似ている。更に両手で巨大な金剛杖を持ち構えていた。
「さては僧から剥ぎ取ったな……悪い子だ」
そう呟くと牛若は、橋の欄干を駆け跳び、軽やかに鬼に斬り付けた。
鬼は杖でそれを受け止めると杖で風を切り対抗する。牛若はいかにも重そうな杖を軽々と避けると、鬼の背後に周り斬りつけるが、鬼は少しも痛がることもなく白い息を吐く。
「中々の腕だな……しかし、ここはどうだッ」
高い防御力を誇る体は、いくら斬りつけても意味が無いと判断した牛若は、そのまま身をひるがえすと、鬼の前方にしゃがみ、膝のサラを砕こうとする。
急所さえ押さえれば、いくら強力な鬼でも戦闘不能となるはずだ。
「アウチッ」
「なにッ」
鬼はそう言って足を抱えて転げ回った。
牛若は驚く……彼の鋭い横薙ぎを鬼は跳躍して避けたのだ。今まで誰にも攻撃を避けられたことがなかった、彼の一薙ぎはサラではなく鬼の脛を捉えたが、驚きはそれだけではなかった。
「痛い……痛いヨ!」
「しゃべれるのか……いや、お前、ヒトかッ」
牛若は脛を抑え涙を流す黒い鬼を抱き抱えた。月明かりに照らされた顔をよく見ると、目が二つに鼻と口もある、牛若と同じ顔、ただ皮膚の色が黒いだけの同じヒトだった。
無論、その額にツノなどない。頭部には日ノ本の直毛とは異なる縮れた剛毛が生えていた。
「刀……カタナ……」
「お前……一体何者なんだ」
そう言う牛若に彼は少しずつカタコトの言葉で説明し始めた。
自分は遙か遠い国から来て奴隷として船で働かされていたが、嵐の晩に沈没し漂流して日ノ本に辿り着いたという。
問答無用に斬りかかる軍部から逃げ延び、世話になった寺の住職から「刀を千本集めれば、売った代金で帰れる」と言われたという。
その住職は亡くなるまで彼を保護し、言葉や様々なことを彼に教えたという。
「お坊さん……優しかったヨ」
「そうか。同じヒトだったのか……名前は何と言うんだ」
「ベンジャミン……ベンジャミン・慶庵」
「不思議な名前だ……ケイアンとは? 和尚の名か」
「そうだヨ、亡くなる前に法衣と一緒にくれたヨ」
牛若は彼をかくまうことにした。歴史ある狂都は排他的で、異人は見つかり次第に殺される。いくら牛若が強くても勢力を増す守護職に見つかっては厄介だ。
牛若は彼の名を縮めてベンケイと呼んだ。そして牛若を慕う彼と共に、二人の兄を探そうと、夜の都から静かに離れて行った――。
○
同じころ、四条では職員を三人連れた刻蔵が鬼を成敗しようと、大橋を渡っていた。
すると立ち込めた霧の中から人影がヌッと現れる。その人影は物凄い勢いで駆けて来ると、続けざまに職員を二人斬り殺し、刻蔵を守る最後の職員を真っ二つに両断すると、鬼の形相で刻蔵に迫ってきた。
「お前が……守護職の刻蔵かッ」
「そうだ。鬼よ……相手にとって不足はない。かかってこい」
涼しい顔で刻蔵は太刀を受け止める。
それは今まで彼が受けたどの攻撃よりも強力で重く、守護職になってから微塵も動かさなかった眉を寄せるほどの威力であった。
「やるな、しかし……これならどうだ」
そう言うと刻蔵は刀を片手で構えもう片方の掌に添える。この構えは短期間で守護職の副長にまでのし上がった彼の得意技だった。
相手の急所に狙いを定めて一瞬の内に突く。いまだかつて、この技を見切れた者はいない。
「猪口才な……これでも食らえッ」
対する男……浅見も得意の技で対抗する。
両手で構えた刀を背中にまわす事により、その軌道を隠し一気に両断するのだ。防御なしの捨て身の技なので、やはり一瞬の勝負となる。
「いくぞッ」
「おうッ」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
紀伊国屋文左衛門の白い玉
家紋武範
歴史・時代
紀州に文吉という少年がいた。彼は拾われっ子で、農家の下男だった。死ぬまで農家のどれいとなる運命の子だ。
そんな文吉は近所にすむ、同じく下女の“みつ”に恋をした。二人は将来を誓い合い、金を得て農地を買って共に暮らすことを約束した。それを糧に生きたのだ。
しかし“みつ”は人買いに買われていった。将来は遊女になるのであろう。文吉はそれを悔しがって見つめることしか出来ない。
金さえあれば──。それが文吉を突き動かす。
下男を辞め、醤油問屋に奉公に出て使いに出される。その帰り、稲荷神社のお社で休憩していると不思議な白い玉に“出会った”。
超貧乏奴隷が日本一の大金持ちになる成り上がりストーリー!!
不屈の葵
ヌマサン
歴史・時代
戦国乱世、不屈の魂が未来を掴む!
これは三河の弱小国主から天下人へ、不屈の精神で戦国を駆け抜けた男の壮大な物語。
幾多の戦乱を生き抜き、不屈の精神で三河の弱小国衆から天下統一を成し遂げた男、徳川家康。
本作は家康の幼少期から晩年までを壮大なスケールで描き、戦国時代の激動と一人の男の成長物語を鮮やかに描く。
家康の苦悩、決断、そして成功と失敗。様々な人間ドラマを通して、人生とは何かを問いかける。
今川義元、織田信長、羽柴秀吉、武田信玄――家康の波乱万丈な人生を彩る個性豊かな名将たちも続々と登場。
家康との関わりを通して、彼らの生き様も鮮やかに描かれる。
笑いあり、涙ありの壮大なスケールで描く、単なる英雄譚ではなく、一人の人間として苦悩し、成長していく家康の姿を描いた壮大な歴史小説。
戦国時代の風雲児たちの活躍、人間ドラマ、そして家康の不屈の精神が、読者を戦国時代に誘う。
愛、友情、そして裏切り…戦国時代に渦巻く人間ドラマにも要注目!
歴史ファン必読の感動と興奮が止まらない歴史小説『不屈の葵』
ぜひ、手に取って、戦国時代の熱き息吹を感じてください!
堤の高さ
戸沢一平
歴史・時代
葉山藩目付役高橋惣兵衛は妻を亡くしてやもめ暮らしをしている。晩酌が生き甲斐の「のんべえ」だが、そこにヨネという若い新しい下女が来た。
ヨネは言葉が不自由で人見知りも激しい、いわゆる変わった女であるが、物の寸法を即座に正確に言い当てる才能を持っていた。
折しも、藩では大規模な堤の建設を行なっていたが、その検査を担当していた藩士が死亡する事故が起こった。
医者による検死の結果、その藩士は殺された可能性が出て来た。
惣兵衛は目付役として真相を解明して行くが、次第に、この堤建設工事に関わる大規模な不正の疑惑が浮上して来る。
強いられる賭け~脇坂安治軍記~
恩地玖
歴史・時代
浅井家の配下である脇坂家は、永禄11年に勃発した観音寺合戦に、織田・浅井連合軍の一隊として参戦する。この戦を何とか生き延びた安治は、浅井家を見限り、織田方につくことを決めた。そんな折、羽柴秀吉が人を集めているという話を聞きつけ、早速、秀吉の元に向かい、秀吉から温かく迎えられる。
こうして、秀吉の家臣となった安治は、幾多の困難を乗り越えて、ついには淡路三万石の大名にまで出世する。
しかし、秀吉亡き後、石田三成と徳川家康の対立が決定的となった。秀吉からの恩に報い、石田方につくか、秀吉子飼いの武将が従った徳川方につくか、安治は決断を迫られることになる。
和ませ屋仇討ち始末
志波 連
歴史・時代
山名藩家老家次男の三沢新之助が学問所から戻ると、屋敷が異様な雰囲気に包まれていた。
門の近くにいた新之助をいち早く見つけ出した安藤久秀に手を引かれ、納戸の裏を通り台所から屋内へ入っる。
久秀に手を引かれ庭の見える納戸に入った新之助の目に飛び込んだのは、今まさに切腹しようとしている父長政の姿だった。
父が正座している筵の横には変わり果てた長兄の姿がある。
「目に焼き付けてください」
久秀の声に頷いた新之助だったが、介錯の刀が振り下ろされると同時に気を失ってしまった。
新之助が意識を取り戻したのは、城下から二番目の宿場町にある旅籠だった。
「江戸に向かいます」
同行するのは三沢家剣術指南役だった安藤久秀と、新之助付き侍女咲良のみ。
父と兄の死の真相を探り、その無念を晴らす旅が始まった。
他サイトでも掲載しています
表紙は写真ACより引用しています
R15は保険です
剣客居酒屋 草間の陰
松 勇
歴史・時代
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる