異世界は醤油とともに

深山恐竜

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第14話

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 家に着くと、干し柿を食べてその渋さに顔をしかめてお互いの顔を見て噴き出した。
 おだやかな時間だ。
 俺たちはとりとめもない話をして、酒を飲んで、食べた。
 夜の鳥が鳴く声も消えた頃、もうそろそろ、と夜食会はお開きになり、風呂に入って、部屋に戻る。

 俺が自分の寝室のドアを開けると、シッティが俺のベッドに横になっていた。
 彼の長いまつ毛が影をつくっている。
 その顔があまりにもきれいで、俺は生唾をごくりと飲み込む。

 ――僕たちの夫婦としての初めての夜だよ。

 途端に、彼の帰路での台詞が脳内に再生される。

「いや、あの、シッティ、なんでこっちで寝てるんだよ。酔ったのか?」

 俺がこの空気を変えようと馬鹿みたいに明るい声を出す。
 しかし、シッティはそれに流されない。

「ジロウ」

 彼の声は明朗で、俺の心の奥深くを刺す。

「おいで」

 俺の心臓が大きく跳ねた。


 
 シッティがいっしょに暮らしはじめてから四か月。
 シッティのこんなに熱っぽい目を見たのははじめてだった。
 彼の視線で俺の肌は焼き焦げそうだ。
 
 シッティは俺に覆いかぶさると、俺の唇を撫で、自分の唇を重ねる。
 いつだったか熱を出したシッティの看病をしたときのような、当たるだけのキスではない。
 熱い舌が俺の唇を這い、俺がゆっくりと口を開くと、そこに舌が入り込む。

 深い、深い口づけだ。
 歯列をなぞり、舌を吸う。

 思わず、唇の間から「はぁ」と声がもれる。
 その声が妙に艶があって、俺の声ではないように感じた。
 俺はぎゅっと目をつむった。

「どうしたの、ジロウ」

「……恥ずかしい」

 年甲斐のない俺の言葉をシッティは笑わない。

「これから、もっと、恥ずかしいことをするんだよ」

 シッティの言葉に、俺は両手で顔を覆った。

「シッティが……、俺のシッティがシッティじゃないみたいだ……」

「ずっと我慢してたんだ」

 指の隙間から見上げると、彼は金色の髪を耳にかけて、こちらをじっと見ている。
 その青い瞳が欲に濡れて、知らずこちらの呼吸もあがる。

 シッティは俺の服を脱がせて、自分も脱ぐと俺の乳首に舌を這わせる。
 ちゅ、ちゅ……。
 芯をもったそこをシッティの舌が嘗めあげ、ざらりとした感覚に背筋が震えた。

「かわいい」

 シッティの言葉に、俺の顔にかっと血がのぼる。
 その俺の頬を、シッティは撫でる。
 まるで生娘のような反応をしてしまうのは、俺がこれから何をされてしまうのか、知っているからかもしれない。

 シッティは俺の片足を持ち上げて、股を開かせる。
 俺の肉棒は硬くそそり立ち、はやくも透明のよだれをたらしている。
 しかし、シッティはそれには触れず、俺の股の奥、尻の肉をかき分けたところにあるそこに触れた。

 俺は跳ねた。

「う……あっ……!」

 最初は軽く、まわりをなぞり、押し、くすぐるように指先ではじく。
 俺は初めての感覚に翻弄されて、開いた口が閉じられない。

「あ、ぁ……い、……やっ……」

「気持ちいい?」

 聞かれて、首を振る。

「わ、わかんなっ……」

 人に性的に触られたことがない場所だ。
 俺はぎゅっとシーツを掴んだ。
 シッティは力の入った俺をあやすように頭を撫でる。

「大丈夫、大丈夫。怖くない……」

 これじゃあどっちが年上だかわかったもんじゃない。
 シッティは俺の目じりに浮かんだ涙を吸い、俺を落ち着かせる。
 俺の呼吸が落ち着いた頃、シッティの指がそこに侵入してきた。

「あ……ああっ!」
「すごい……どんどん入る……」

 シッティの指はぬるりと俺の尻穴に入った。第一関節、第二関節……シッティはゆっくりと俺の奥を拓いていく。
 喉が震えた。
 怖くてたまらないのに、俺の肉棒はいまだに熱を失わない。
 それどころか、シッティに与えられる刺激を待っている。
 指が奥へ進み、掌が俺の尻たぶに当たって、シッティの指を全部飲み込んだことがわかった。
 
 彼も呼吸が荒い。2人の呼吸だけが部屋に響く。
 僕たちは何も言葉を発さなかった。
 シッティは獲物を見るように俺を見て、俺は彼にすがるように見上げる。

「力を抜いて……」

 指がゆっくりと抜き差しされる。
 はじめはゆっくりと、次は、早く。
 そして、時折何かをさぐるように円を描く。

 俺は歯を食いしばって違和感に耐えていた。
 シッティをがっかりさせたくない一心だった。
 しかし、ある瞬間、違和感がほかのものに変わった。

「あ、ああ! ひ、ひぃっ…!」

「ああ……ここ?」

「や、い、いぃや、ああっ!」

「気持ちいい?」

 脳に電気が走ったようだった。 
 俺の尻の穴の奥から、それは脳まで一直線に体を駆け巡る。
 俺は両足をぴんと伸ばし、シッティにしがみついた。
 シッティの指をぎゅっと締め上げる。

「あああああ!」

 俺は白濁を吐き出し、あっけなく果てた。


「はぁ……はっ……はぁ……は……」

 俺はしばし呆然とした。
 自分が尻だけでイケるとは思ってもいなかったのだ。
 俺は胸を上下させて自分が吐き出したものをシッティが拭き取る様子を眺めた。

「ジロウ」

 俺の腹を拭き終えると、シッティが俺の上にまた覆いかぶさった。

「私も気持ちよくしてくれる?」

 目だけを動かすと、シッティのそこは熱を持ち、屹立している。
 俺はそれをじっと見た。
 俺のものよりもひとまわり大きい。
 それを、いまからシッティがどうするつもりなのか、いまさらわからないなどとは言えないだろう。
 入るのだろうか。
 俺は恐怖もあった。しかし、それ以上にシッティが愛しかった。
 俺はゆっくりと唾を飲みこんだ。

「うん……いいよ……来いよ」

 シッティは俺の両足を抱えると、尻たぶをかき分け、俺のそこに肉棒を宛がった。
 熱いそれは、指とは比べものにならないほどに太い。

「いくよ……」

 シッティはそう言って、腰を進める。
 慣らされた穴がゆっくりと開いていく。
 くちゅ……と水音が耳に届く。

「あ……ああ……!」

 俺は嬌声をあげる。
 シッティのそれを飲み込んでいく様子がよく見えた。
 その光景は俺を陶酔させた。
 シッティの太いそれが俺の中に沈んでいく。

「あああ……」

「入った……」

 全部を飲み込んだ時、俺もシッティも肩で息をしていた。
 シッティは目をぎらつかせて俺を見て、俺は濡れた目で彼を見る。

「動いていい?」

「う……うん……いいよ……うごいて」

 ぱん、ぱん、と腰がぶつかる音が響く。
 ゆっくり、早く、またゆっくり。
 その音に合わせて、俺の奥が掘られる。
 深く、浅く、深く。

 俺は頭をめちゃくちゃに振った。

「ん、あ……! あ……! ああっ……!」

「気持ちいい?」

 何度か聞かれた言葉に、俺は次こそ答える。

「きもち、気持ちいい……!」

 俺の肉棒がまた芯を持つ。
 シッティに揺さぶられるのに合わせて、透明の汁を撒き散らす。

「あ、ああ、あ」

「好き、ジロウ、好き」

「お、俺も……俺も……好き」

 乳首を摘ままれる。
 快楽が走って、俺は仰け反る。

「ああっ!」

「いっしょに、いこうね」

「あ、あ!」

 ―――っ!






 俺たちは同時に果てた。
 シッティの吐き出した熱いものが腹の奥にじんわりと広がる。
 それを感じながら、俺はゆっくりと目を閉じた。
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