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第三章 1年 2学期
不在の危機4
しおりを挟む少しの間話してから、ライゴウ先生は部屋まで送ってくれた。
『また部屋に不審者が来るかもしれないのに、本当に戻るのか?』
「明日には理事長も先輩たちも帰ってきますし、生徒会の部屋の方が逃げ道が多いので笑」
『そうか。一晩一緒にいてやれなくてすまん。警備員を置くにしてもあの不審者の正体がわからないために信用できないからな、、』
「先生も夜勤がありますし、、」
2.3年生がいない最後の日。
昨日の夜、ライゴウ先生に部屋に送ってもらった後、深夜にまた例の不審者が部屋の前に来てドアを叩いてきたけど、気にしないように、目を瞑って布団に包まって過ごした。
寝不足ながら授業をいつも通り受けた後、本日最後の仕事である温室の点検に向かった。
たまに昼寝をしていたり、サボりで隠れたりする生徒がいるため、確認をする必要があるらしい。
点検をするために中に入ると、庭師の方がいた。
『おや、今日はいつもの生徒さんじゃないね。』
「こんにちは。今日は代理なんです。」
『そうですか。皆さんいつもグルッと一周して点検しているので、その流れでいくと良いと思うよ。』
「そうします。」
それから庭師の方と雑談しながら点検をした。
「へぇ、あの高い木もカットしてるんですか、、すごいですね。教室くらいの高さがありますよね。」
『高いところまで手入れすると学園がより綺麗に見えるからね。』
色んな人が働いてこの綺麗な学園が出来上がっているのか、、感謝だ。
「よし、これで点検項目は完了っと。」
点検が終わろうとしたその時、
ザァァァァァァァァァァァ
「ッッわ?!雨?」
『スコールだね。』
「指定されている時間と違う、、トラブルかもしれません。植物に影響がでると大変なので一度止めてきます。」
設定する機械のところまで行き、一度スコールを止めた。
「30分だけ早く設定されてる、、しかも最大量だし、、いたずらか、、?」
規定の設定に戻して、庭師さんのところまで戻った。
慣れない作業に時間がかかり、全身が濡れてしまった。
『完全に濡れてしまったね、、、絞れるくらいだ、、笑』
「そうですね笑 着替えないと、、僕はこれで失礼します。庭師さんも風邪をひかないようにしてくださいね。」
『温室の裏手に用務員の部屋があるんだ。髪と靴も濡れてしまっているし、タオルを貸そうか。その状態では大変だろう。寮までは距離もあるし。』
たしかに、この状態で廊下を歩いたら廊下の絨毯が濡れてしまうな、、
「、、お言葉に甘えさせていただきます。」
案内してもらった用務員の部屋は、外は倉庫のようだったけど、中はエアコン、水道などのライフラインが完備されていた。
ドライヤーもあり、髪を乾かしてタオルで身体を覆った。
『災難だったね。体が冷えていると思ってホットココアを入れたよ。そこにお菓子もあるから自由に食べて。』
「ありがとうございます。」
用務員さんたちの好みなのか、和菓子がたくさんある。
綺麗な花の形の和菓子、好きなんだよね、、金平糖もある、、
「庭師さんは他にもたくさんいらっしゃるんですか?この広い学園の草木を手入れするのは大変ですよね。」
『うん、たくさんいるよ。普段は用務員として働いている人もいるし、俺もそのうちの1人なんだ。』
「そうなんですね。」
『そうそう、この春にちょうど剪定をしたんだ。新学期の授業の様子が見えて新鮮だったよ。』
みんなが授業を受けてる姿は僕もちょっと見てみたいかも笑
30分ほど経ったのだろうか。
しばらくそんな他愛もない話をしていたら眠くなってきた。
「ふぁぁ、、」
欠伸をしたのに気づいたのか、庭師さんが
『眠いのかな?少し寝ていてもいいよ?』
と言ってくれたけど、教室に荷物を置いたままだし、時計を見ると17:30。
18時にはカナメと待ち合わせをしている。
「いえ、、そろそろ帰り、ます。」
ここ数日の間、ずっと寝不足だったからか瞼がどんどん重くなる。
19時に先輩たちが帰ってくるから迎えに行こうって、、
眠い、、寝たい、、
『最近寝不足だったからかな?少し休んだほうがいいよ。』
、、、ん、、?
「、、寝、不足、、ってどうして分かるんですか?」
『ん?あぁ、目の下に隈ができていたし、点検で会った時も少し疲れているように見えたから。』
「そ、うですか、、そうですよね。、、友達を待たせているのでやっぱり帰らないと笑」
一瞬変な違和感を感じてしまい、立ち上がっても治らないこの異常な眠気も変に思ってますますここを出たくなった。
『この状態でひとりで歩くのは危ないよ?送っていこう。』
バランスを崩しそうになって肩を支えられた。
「、、!!」
前を見た時、視線の先のガラス棚の中に、あの不審者がつけていたものと同じ手袋があった。
用務員室だし同じものがあっても不思議ではないが、恐怖が沸き上がってくる。
そう言えば、この庭師さん、作業着の下にフードのある服を着ていた。フードの服なんて、作業の時危ないよな、、それにあの不審者もフードを被っていたし、、
あぁ、何で気が付かなかったんだろう。
僕、馬鹿だな、、
あの不審者は、この人なのだと察した。
でも眼が少し冴えた。
どうする。
「教室まで歩いてすぐなので、大丈夫です。お気持ちだけいただきます。ありがとうございました。」
とにかく離れよう。逃げるべきだと脳が警笛を鳴らしている。
『はぁ、、察しが良いよね、本当に。気づいてるんだよね。』
「、なにがでしょう、、?」
早く離れようとする心情を読み取られたかな、、、
支えられていた肩への力が強くなった。
『本当はさ、昨日連れ出すつもりだったんだ。でも、あの問題児たちのせいで担任とずっと一緒にいただろう?』
「、、嫌がらせもあなたですか?」
『あれは俺じゃないよ。まぁ、君が少しだけ疲れるように刺激はしたけど。
やっぱり体力を削ぐ計画にして良かった。無理やり連れ去って君が怪我をしたら大変だしね。』
「、、いつから?」
『4月からだよ。最初は首席が編入生で気になっただけだった。4月の剪定の時にSクラスを覗いたら、君がいたんだ。
一目惚れだった。
それから少しずつ少しずつ準備をして、、、3年の帰国が遅れると聞いた時は運が巡ってきたと思ったよ。』
半年も前から、、、
『過程はもういいんだ。さぁ、眠って。次に目を覚ましたときは俺たちの家だから。』
「、、飲み物に睡眠薬か何か入れた?」
『あぁ、安心して。効果は高いけど身体に害はないものを選んだから。』
睡魔が絶え間なく襲ってくる。
でも、なんとか渾身の力を込めて触れている手を払いのけ、ドアを開けて全速力で走った。
『あれ、寝てくれると思ったのになぁ。』
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