僕らの青春はここにある。

たまご

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第二章 1年 1学期

イケメンかよ。

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「、、ってことがありました。」




昼休みになり、食堂の隅っこの席で1限目を抜けた事情を3人に話した。





五十嵐渚イガラシナギサ先輩がいたんだ、、、。背が高くて顔がいい、、、。けど怖い、、。』ブツブツ




『なんで2年の階に行くって俺に言わねぇんだよ。バカなのか。』





『厄介な相手に会ったね、、、。』






「イガラシ先輩ってどんな人、、、?」





『たまに煽られて喧嘩してたけど、すごく強かった。でも風紀委員長の如月キサラギ先輩と行動してるみたいだったし、仕事のヘルプかな?怖いけどファンは多いよ。美形だもん。ペナルティー班ってのもポイント高い、、、』ブツブツ







そう、、なんだ?






『嫌いになったやつを全力で潰すって。特に権力目当てのやつは片っ端からって噂を聞いたことがあるよ。
でも先輩の家はみんながコネを作りたがるほど重要な家系ではなかったはず、、。』





へぇ、、、







『そいつ、友達が権力で利用されていたのに気づいて、キレて相手を言い負かしたって噂されてたな。相当目立ってたのか、中等部でもすぐに知れ渡っていた。』







怖いけど、、、、でも、ただ怖い人ってわけではないみたいだな。んー、、、










「僕、今からイガラシ先輩に謝りに行ってくる。」











『『『話を聞け?』』』









おぉ、ユニゾンか笑











「大丈夫。イガラシ先輩は怖かったけど、いい人な気がしてきた。」











『『『気がしてきた??』』』












仲良しかよ笑











「うん。じゃ、ちょっと行ってくる。」










『え、ほんとに今から?』









『居場所も分からないのに、どこに行くんだよ。』








「ちょっと心当たりがあるんだ。みんなはゆっくり食べてて!5限目には戻れると思うから!」









『『『えっ』』』























┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

〈晴れてるから屋上で寝ようと思ってたんだけど。〉






って言ってたから!食堂にいないなら屋上にいると思ってとりあえず階段を駆け上がってるんだけど!






「この学園、天井も高いから、、、階段が長いッッ‼︎」






3人の話を聞いてたら、なんか、ただ正義感が強い人だと思ったんだよな。








もし喧嘩が強くて風紀の見回りを手伝っていたとしたら?





友達が権力で利用されるのが嫌いで、理不尽に権力を振り翳すやつを見つけて潰しているだけだとしたら?










もし僕がただ身長と怖い雰囲気だけで偏見を持っていたとしたら?









僕は屋上に向かって走り出した。















「はぁ、、、はぁ、、、」









やっと屋上の扉の前まで辿り着いた。











キィィィッッ    ガチャッッ









「到着‼︎ え、開いた。」







そっと扉を開くと、青空が広がる。




「わぁ、、、屋上ってすごい、、、」




なんか感動だ、、小中学生の時は鍵がかかってて入るのを諦めたんだよなぁ。








高くて網目の細かいフェンスが取り付けてあって、事故の心配がないから解放されてるのかな。









「あ、、」







影になっている場所で、イガラシ先輩が寝転んでいた。





近づいて、先輩の横にしゃがむ。









『スーッ、、、、』





「寝てる、、、?」







ってかこの人もほんと綺麗な顔してんなッッ 




この学園に、こんなにも芸能人のような人がたくさんいるなんて思いもしなかった。


街中でこんなのが歩いてたらみんなほっとかないでしょ。ツカサ先輩やウタ先輩やハヤト先輩たちもそうだけど、The イケメンズで溢れてるんだよ。



毎日芸能人を見てる気分。僕のライフは着々と減ってるよ、、、。日常は何処へ、、、。








「はぁ、、、」









『、、人の顔覗いといてため息かよ。』






いつの間にか、青い瞳がこちらを見つめていた。






「す、すみません。、、、いつからお目覚めで、、?」






『ドアが開いた時から。』






「そ、そうでしたか。起こしてしまってすみません。」








ていうか先輩の話し方、今は普通だ。朝みたいな怖さを煽るような感じはしない。






『、、、何か用?』







「はい。今朝のこと、改めて謝りにきました。先輩に対して生意気だったと思いますし、勝手に怖いと思い込んで避けてしまってすみませんでした。」









『、、、は?』









だよね!怒ってる!!









「見た目と雰囲気で判断するなんて、本当に僕は、最低だったと思います。」







『、、、この数時間でどんな心境の変化だよ。』



 
 


「友達から先輩のことを聞いたんです。」








『友達?、、はぁ?、、そいつ、なんて言ってたわけ。』






「友達は“ケンカとても強い”、“厄介な相手”、“権力目当てのやつを片っ端から潰す”と言ってました。」







『、、、その話聞いて、思い込みだったって、本気で言ってんの?』






「はい、本気です。」






『結論が合ってねぇよ。バカはこの学園に入れないの。金でも積んだ?』









「一応首席です。」








『いや知ってるし。、、、とりあえず説明。』








「はい。」







僕は、ここに来るまでに考えていたことを話した。





「、、、ということから、イガラシ先輩は怖い人じゃないと思いました。

そもそも会長がイガラシ先輩をペナルティー班隊長として認めている時点で気づくべきだったんですが。」






『、、、で?認識を改めたのは分かったし、今朝のツカサの様子からあんたが一般人ってのも分かったけど、信用なんてしねぇよ?

人のコネ狙いのやつなんて腐るほどいる。』








「信用はこれから得られるように頑張ります。僕の仕事ぶりを見ていてください。」









『、、、ふーん。、、仮に信用を得たとして、あんた、俺と仲良くなりたいの?』







「仲良く、、とまではいかなくても、信頼できる仕事仲間だとは思ってほしいと思っています。」




『それも本気で言ってんの?』






ここまできて嘘は言わないでしょ。







「はい。」






『へぇ、、予想外だったな~。
俺は解任されるんだと思ってた~。』





、、、は?





「会長以外にそんなことできるわけがないでしょう。」





『それ、逆。会長以外の生徒会役員がペナルティー班隊長と風紀委員長を解任することができるの。

生徒会の権限の項目、読んでない?部屋のテーブルの上に置いてあったでしょ。副会長の役割についての冊子。』





会長だけが解任の権限を持っているとすると、組織のトップが学園を好きに支配できてしまい、せっかくの三権分立が成り立たなくなる。だから会長以外の生徒会役員にはその権限が与えられているらしい。他の解任方法は生徒の署名とかね。
後から分かったことなんだけど。





「副会長の部屋にそれがあるんだとしたら、読んでいません、、、。昨日までずっと2人部屋にいたので、、、。」







『そっかぁ、、、、怒ってたように見えたから、クビにされると思ったんだけどな~。』






「ちゃんと怒ってましたよ。」




『え』





「イガラシ先輩、ゴホンッ『嘘くさいんだよ。変なやつとは関わりたくねぇんだけど。』って言いました。   にはイラッとしました。」






『そこ?』





「そこです。」








『ん~、、、謝るから仲直りしよ?






、、、色々言ってごめんね、副会長ちゃん。』










「はい、許します。」








これでこれから上手くやっていけるような、、、『やったぁ。これで仲直りだね~、ピヨちゃん。』









はい、仲直りですね~、、、ん?










?」










先輩の手が僕の髪に触れる。







「わっ、、、?」







『いつ言おうかと思ってたんだけど、風で髪の毛が一束ずっと上がって鶏冠トサカみたいになってたんだよね~。だからピヨちゃんね。』







僕が呆けている内に、先輩は僕と向き合って座り直し、僕の髪で遊びながら、楽しそうにそんなことを言う。






「それ、、早く言ってください。

、、ちなみに僕の名前は涼宮海です。」







『うんうん。ピヨちゃんね~。』






違う違う‼︎なんでそうなる‼︎







「、、、そんなあだ名で呼ばれても、返事しませんよ。」






『じゃあ名前で呼ぼうかな~?俺、ツカサとショウみたいな付き合いの長い奴らしか名前で呼ばないんだけど、、なぁ?』ニヤァッ




この人、相手の困った反応見て面白がってるよ クッッ 






「普通に苗字だといいんですが。」







『えー、、だって俺ら、仲直りした仲じゃん?』





どんな仲だよ。謎だわ。





「はい、出会ってすぐに拗れて仲直りしただけの信用のない仲ですね。」





『ははっ結構言うじゃん笑 


ねぇ、、、、ピヨちゃんって呼ぶの、ほんとにダメなの?迷惑?』




クッ顔がいいからって覗いてこないでよ。

地面についている僕の手をそっと握り、子犬のような目で見つめてくる。今朝はあんなに冷えた目だったのに。








『、、、、どうなの?だめ?』







「、、、、で、、す、、」









『ん~、、聞こえない。』








「ぴ、、」









『ぴ?』ニヤッ










、、、、、。




















「ピヨちゃん、、、でいいです、、」













はい、僕。敗北しました。サムッッ













『、、、あはっ笑 いいんだ笑』







、、普通に笑うとただのかっこいい先輩なんだけどなぁ、、、。







「ほぼ選択肢なかったでしょう。」







『そうだね~。ピヨちゃんかわい~。』






くっ解任してやるぞ。しないけどッッ







『ピヨちゃん、ところでさぁ、、俺、飯食い損ねそうなんだけど。』





えっ。






「、、、ずっと寝てたんですか?」









『うん。快晴の日の屋上って最高じゃん?』








「たしかに、、、じゃなくて、ペナルティー班の隊長がそんなに授業サボって大丈夫なんですか。」








『大丈夫じゃない~?それに俺、たまにここで寝ないと欲求不満になるんだよね~。』





いや特殊。





「そうですか、、、。」







『ってことで、俺、パン買いに行くから。』





「あの、僕が買いに行きます。先輩の昼食の時間を邪魔したのは僕なので。」







『別にいーよ。じゃあ、また放課後にね~。』







「でも、、、!」






ポンッ








『副会長、頑張れよ。』









僕の頭をくしゃっと撫ぜたあと、ポケットに手を突っ込んで行ってしまった。







い、イケメンかよ、、、。







僕はまだまだだなと実感させられた瞬間だった。



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