思いが重なるとき

やぼ

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吉岡瑠璃子

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日記の女性の名は、吉岡瑠璃子だと
祖母の弟である郷田一郎に教えて貰った。

それは、久生が日記と共に書斎に置いて
いたおそらく出すはずだっ手紙の宛名だ

祖母と同じ名前。
日記の女性を思って娘に同じ名を
つけたのだろうかとマヤは思った。

一郎は
今まで、その手紙を開けて読んだことは
なかったが、マヤが父親のことを
知りたがっているのを聞いて、何か因縁
めいたものを感じたようだ。

手紙を父親は、処分することもなく
日記と一緒に保管していたのは何故か。

そして、どことなくスケッチブックの
女性は、マヤにも似ていた。

一郎は、手紙を開封した。

~~~~~~

拝啓

瑠璃子さん、お元気ですか。
先日、あなたからのお手紙が届き
その内容に驚いてます。

お父上は、私の手紙を全てご処分されて
おられるみたいですね。

実は、私はあなたへ、もう何通もお返事を
出しています。

この手紙は届くでしょうか。

私は、あなたを連れ去ってしまいたい
衝動はあります。
しかし、現実的ではありませんよね。

今は、日本も大変な事態になりました。
私もまたいつ戦地へ赴くのか、分かりません。

でも必ずあなたのお父上を認めさせられる
ような武勲をあげてみせます。

お誓いします。
 
そして、二人のことを認めて貰えたら
必ず、必ず、あなたを迎えに行きます。

それまで、私を待っていてください。

寒さが身に染みる季節となりました。
ご家族様、あなた様がお風邪など召しません
ように。


手紙は、それで終わっていた。

一郎は、父の面影を思い出していた。
口数の少ない、それでいて家族への
愛情は深く、母親とは大恋愛で一緒に
なったのかと思わせるほど子どもから見ても
仲が良かった。

しかし、ここに若い青年の父が確かに
いたのだ。

愛する女性を思って書いた手紙。

マヤもまた、郷田久生の手紙を見て
祖母の優しさを思い出していた。


マヤちゃん。今はママと二人
いつもひとりでお留守番は寂しいかも
しれないけど、きっと、幸せになれますよ。

何か困ったことがあったら、何でも
おばあちゃんに言いなさい。
マヤちゃんが大好きよ。

いつもマヤを膝に乗せて、そう慰めて
くれた祖母。

「おばあちゃんみたい。」

そう呟くと、祖父の嘉孝が
マヤの頭を優しく撫でた。

    
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