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古い日記
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高校1年の新田マヤは、学校帰りに
自宅近くにある市立図書館に寄って
閉館時間まで、学校の課題をやる
のが、日課だった。
母子家庭のマヤは、母が仕事から帰って
来るまで、ここで過ごすのが小さい頃から
好きなのだ。
マヤの母は、まだ小さかった五歳のマヤに
「この図書館の本、ぜ~んぶ読んだら
マヤはきっと博士になるね」と言った。
博士が何なのか、分からなかったが
マヤは毎日のように図書館に行き
児童書の置いてるコ-ナ-で絵本を
読みはじめた。
自宅には本は1冊もなかったが
母は、必ず借りれるだけマヤが好きな本を
ここで借りてくれた。
お金のなかった母のやり方だった。
保育園から帰って来ると
母は、「ここでママが迎えに来るまで
ご本、読んでてね。絶対誰にも
ついて行かないこと。トイレに行きたい
時は、図書館のお姉さんに言ってから
行くこと。分かった?」
毎日、そう言って仕事に戻って行った。
泣きたいくらい寂しかったが
泣けば母が困ることを五歳でも
理解していたマヤだった。
本当なら子どもを放置していかれるのは
図書館の職員も困るのだろうが、
この母子の事情を分かってくれてるのか
何も咎められることはなかった。
寧ろ、司書の女性は、絵本を読み聞かせて
くれることもあった。
マヤは、小学校に上がっても
学校が終わると
友達とも遊ばずここで勉強した。
宿題が解らず悩んでると
顔馴染みの司書のお姉さんが
こっそりやってきて教えてくれたのだ。
だらだらと時間を無駄にせず
学校の課題を、静かで空調設備も整っている
自宅アパートの裏のこの図書館で
集中して出来るのは、マヤにとっても
母にとっても有り難いことだった。
いつものように、お気に入りの席に
着く。閉館時間まであと1時間だ。
7時には閉まってしまう。
急いで数学だけでも終わらせよう。
大急ぎでチャート本を出して
ノ-トを広げると、司書の山中さんが
たくさん本をワゴンに乗せてやってきた。
返却された本を元の棚に並べる為にだった。
「山中さん、お手伝いしましょうか?」
「いいの。いいの。マヤちゃんは
早く宿題やっちゃいなさい。」
「でも、こんなに沢山あるし、二人で
やればすぐに終わりますよ」
山中さんがいいと言っても、マヤは
席を立って手伝った。
五歳の頃から世話になってる人だ。
素直にただ山中さんの役に立ちたかったのだ。
勝手知ったる図書館は、マヤには
自宅の本棚同然なので(本棚など自宅には
なかったが)すぐに元の場所に本達を
戻した。
「あれ?これはどこだっけ?
こんな本、見たことないわ。タイトルも
ないし、誰かの忘れ物かな?」
「山中さん、どうしたの?」
「マヤちゃん、この本知ってる?」
「知らないけど、あ、ここに図書館の
ハンコが押してあるから、ここの本じゃ
ないのかな?」
「ああ、本当だね。」
山中さんは、本をパラパラと捲った。
「マヤちゃん、この本、誰かの
日記みたい。日付けで書いてあるわ」
マヤは、山中さんが差し出した
茶色く楠んでるその本を受け取った。
自宅近くにある市立図書館に寄って
閉館時間まで、学校の課題をやる
のが、日課だった。
母子家庭のマヤは、母が仕事から帰って
来るまで、ここで過ごすのが小さい頃から
好きなのだ。
マヤの母は、まだ小さかった五歳のマヤに
「この図書館の本、ぜ~んぶ読んだら
マヤはきっと博士になるね」と言った。
博士が何なのか、分からなかったが
マヤは毎日のように図書館に行き
児童書の置いてるコ-ナ-で絵本を
読みはじめた。
自宅には本は1冊もなかったが
母は、必ず借りれるだけマヤが好きな本を
ここで借りてくれた。
お金のなかった母のやり方だった。
保育園から帰って来ると
母は、「ここでママが迎えに来るまで
ご本、読んでてね。絶対誰にも
ついて行かないこと。トイレに行きたい
時は、図書館のお姉さんに言ってから
行くこと。分かった?」
毎日、そう言って仕事に戻って行った。
泣きたいくらい寂しかったが
泣けば母が困ることを五歳でも
理解していたマヤだった。
本当なら子どもを放置していかれるのは
図書館の職員も困るのだろうが、
この母子の事情を分かってくれてるのか
何も咎められることはなかった。
寧ろ、司書の女性は、絵本を読み聞かせて
くれることもあった。
マヤは、小学校に上がっても
学校が終わると
友達とも遊ばずここで勉強した。
宿題が解らず悩んでると
顔馴染みの司書のお姉さんが
こっそりやってきて教えてくれたのだ。
だらだらと時間を無駄にせず
学校の課題を、静かで空調設備も整っている
自宅アパートの裏のこの図書館で
集中して出来るのは、マヤにとっても
母にとっても有り難いことだった。
いつものように、お気に入りの席に
着く。閉館時間まであと1時間だ。
7時には閉まってしまう。
急いで数学だけでも終わらせよう。
大急ぎでチャート本を出して
ノ-トを広げると、司書の山中さんが
たくさん本をワゴンに乗せてやってきた。
返却された本を元の棚に並べる為にだった。
「山中さん、お手伝いしましょうか?」
「いいの。いいの。マヤちゃんは
早く宿題やっちゃいなさい。」
「でも、こんなに沢山あるし、二人で
やればすぐに終わりますよ」
山中さんがいいと言っても、マヤは
席を立って手伝った。
五歳の頃から世話になってる人だ。
素直にただ山中さんの役に立ちたかったのだ。
勝手知ったる図書館は、マヤには
自宅の本棚同然なので(本棚など自宅には
なかったが)すぐに元の場所に本達を
戻した。
「あれ?これはどこだっけ?
こんな本、見たことないわ。タイトルも
ないし、誰かの忘れ物かな?」
「山中さん、どうしたの?」
「マヤちゃん、この本知ってる?」
「知らないけど、あ、ここに図書館の
ハンコが押してあるから、ここの本じゃ
ないのかな?」
「ああ、本当だね。」
山中さんは、本をパラパラと捲った。
「マヤちゃん、この本、誰かの
日記みたい。日付けで書いてあるわ」
マヤは、山中さんが差し出した
茶色く楠んでるその本を受け取った。
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