弟に執着する兄の話  ─執愛─

おーらぴんく

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自覚 4

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 週末、トラブルの片付けをした映人は、大阪のホテルでやっとひと心地ついていた。
 基本外回りの営業は他の者に任せており、彼自身は内勤が多かったのだが、今回は第一、第二営業共同の案件だった。

 前回だした指示書の追加が、現地の者達にに伝わっておらず、明らかに社内での連絡ミスがまねいたトラブルだった。
 当人達をひきつれ、取引先に出向き、挨拶がてらこちらのミスを推察させないように、うまく誘導でき取引は完了した。

 シャワーを浴び、髪をタオルで拭きながら白のローブ姿でソファに座ると、テーブルに置いてあったスマホが振動していた。
 拭いていた手をとめ、遅い時間の着信にいっしゅん悠からだと思い、あわい期待をこめて画面をみると、意外な人物からだった。

 少し残念に思いながらもスマホを取りあげる。

「どうした?」
「···········」

 長いのあと、電話の向こう側から、少し高い少年のような声がなさけない声でうったえてきた。

「·······えいとさぁ~ん──もうむりぃ~」

 相手は桃里からだった。
 最後に合ったとき、彼は映人の怒りをかってしまい、フィストファックをされ、倶楽部さえも休んでいる。

 その間の桃里の生活費は、映人が支払っており伊織をつうじて現金が渡されているはずだった。
 映人から連絡をすれば、必ずといってよいほどマンションに来るが、桃里本人はなにかの決めごとをしているのか、彼から電話をしてくることはまずない。

 情けないこわいろに、なにか切迫した事情があるのかと思い聞いてみたが、その理由が桃里らしくて納得してしまっていた。

「せっくすしたい~!」

 さすがの映人も意外すぎて、言葉に一瞬つまってしまった。
 だが、電話の相手は必死に訴えてきた。

「·······ごめんなさい、先に謝るっ。電話しちゃうのルール違反だよね········でも、映人さん連絡くれないし──怒らないで聞いて·······ひょっとして例のゆう、って子とうまくいってる?────そうしたら、えんりょするけど·········」
「───いや······」

 悠からはまだ一度も連絡がきたことはなかった。
 実際この電話が、溺愛する弟からだったらどんなに自分は嬉しいか······。

 お互いの番号は知っているが、映人がはじめてを奪った時から、溺愛する弟から電話がかかってくることは一度もなかった。

「じゃあ、明日行っていいかな? ───このボクがだよっ、二ヶ月以上もセックスなし、なんて──修行僧にでもなった気分だよ~もうホント無理······」

 倶楽部を休んでいても、自分で適当に遊ぶこともできた筈だ。
 それをしないのは、映人から現金をだしてもらってからでもあるし、桃里自身、今のところ映人以外と躰を重ねるつもりはなかった。

「だいたい、映人さんが無茶するから休むことになっちゃったし───倶楽部には来週から出演るからその前にリハビリさせてよ」

 想い人がいることは知ってはいるが、うまくいかなければ少なくともこの関係は続けられる。
 桃里はわかっていながら映人が断れないように理由づけをした。

「今は出張先だ、明日昼には戻るが·······」
「じゃあ、疲れてるとこ悪いけど、夕方行っていい?」

 訊いているていだが、拒否は許さない言い方に、映人はくすっと笑い、承諾する。
 ふだんは自分に対して遠慮しているのに、妙なところで強気になる彼を、少なくとも気に入りはしていた。

「わかった」
「やった! 今度は無茶しないなら、道具もオッケー───リハビリだしね·······ただ、久しぶりだから、最初だけは普通がいいな」

 あけすけなリクエストに、再び苦笑して映人は電話を切った。
 桃里の良いところは、欲望に忠実で素直なところだ。

 きっかけは知らないが、言わないだけで桃里だけではなく、倶楽部の少年達は性的に対して、精神的にさまざまな問題があった。
 うしろ暗い過去がある少年達がおおく、さまざまな経過をえて倶楽部までたどりついた者がいるのも知ってはいる。

 経営者である伊織はその経緯を映人にさえ、洩らしたことはなかったがおおよその想像はできた。
 桃里だとて、きっかけはそんなに幸せなものでもなかっただろうが、彼はそれを受け入れ、開き直っているふしさえある。

「·······おもしろいやつだな」

 無茶をした自分に、本人から連絡があるとおもわなかった。
 それに最近、悠をいじるだけで自分の欲望というものを発散していなかったので、映人としても都合がよいこと、このうえない。

 潤んだ瞳。
 しなやかな肢体。

 最近は快感に素直になりつつあったが、悠の媚態を間近でみていてさすがに我慢の限界がきていた。
 桃里には悪いが、このさい代用品でもかまわないだろう。

 お互いの欲望を発散するだけの行為。
 
 それは、人間の基本的な愛の確認をする為の行為、だということを映人自身、忘れかけていた。


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