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番外編3
秋の庭
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別室でそわそわしているアーサーを見て、アリストは、20年ほど前の自分を思う。まだ子供だったが、同い年の婚約者のドレスを姉と一緒に注文して気に入ってくれるかそわそわしたもんだ。
「ふふふ」
と笑う。
アーサーがはたと気がつき、
「無様な姿をお見せしてお恥ずかしいです」
と話す。
「いやいや、微笑ましいと思っただけです。そして、もしかしたら私も近日中に同じ立場になるのかもしれませんので」
「え?それはご婚約されるということですか?」
「ふふふ、まだ、決定までには至っていないのですよ。まだまだこれからです。」
シャーロット関係にはなんでも嫉妬しやすいアーサーは少しホッとした顔をして
「それはそれは。無事に決定されることをお祈りしております」
と返答する。
「ふふふ、ありがとう。応援いただけると嬉しいですよ」
と返事しつつ、まあ大丈夫だろうなと思いつつ、一番の山は、あなたの父上ですけどねと心で呟いたのだった。
「アーサー」
シャーロットが戻ってきた。
「とても、素晴らしいドレスだったの。ありがとう。婚約式で見るのを楽しみにしていてね」
と微笑む。
「無論だ。とても楽しみにしているよ。できるだけ早く婚約式を行いたいと思っているんだ。父上にも母上にも頼んである。ゼオン公爵殿、ぜひお嬢様となられたシャーロットさまとの婚約をお願いします」
「無論だ。そして、つまりそれはアーサー殿が我が娘となったシャーロットを家に閉じ込めることなく、自由に治療師や医師、研究者として動いて良いと考えているということで良いかね?」
「はい。ちゃんと話し合って決定しています。父上にも了解をとっています。おまかせください」
「それを聞いて安心したよ。シャーロット、早速だが、来年医学部に入学するための勉強をしないといけないだろうと思っている。ギルバートとともに家庭教師を手配しているからね。勉強しなさい。治療師としての仕事は一旦おやすみして、頼まれている教科書づくりに専念しなさい。良いね?」
「ありがとうございます。頑張ります。」
あの、私との婚約式は・・と心で思っていると
「アーサー殿、流石に貴殿の休み中に婚約式の手配をすることは難しかったが、1ヶ月後で手配を始めている。お母上がほとんど全てを仕切ってくださっているから安心なさい。流石に内輪だけというわけにはいかない。王太子殿下と妃殿下も参加をするとおっしゃってくださっている。ご両親に家に戻られた後に詳細を確認してもらいたい。」
顔がパッと一気に明るくなったアーサーである。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
と挨拶する。
「ふふふ、ずっと馬車で座りっぱなしで大変だっただろう。二人で庭でも散策すると良い。」
と提案してくれる。なんて理解のある養父様だと心の中で感動しつつ、
「ありがとうございます。では、シャーロット、少し歩こうか?」
とシャーロットをエスコートする。
ゼオン侯爵家の庭もやはり王都の中とは思えないほど広い。
ゼオンは、まだ夏だが、王都はかなり北のほうにあるのですでに秋らしい花も咲き始めている。
「まあ、やはり王都はゼオンよりずっと秋のおとずれが早いのね」
ダリアやコスモス、マリーゴールドが咲き乱れる中を散策すると四阿がある。
そこにシャーロットと二人で座る
「無事に王都にもついた。婚約も全ての人が認めてくれている。あとは何か心配事とかはないかい?気になることがあればなんでも言ってくれ」と尋ねる。
「これだけ良くしていただいているのだもの。幸せだわ」
はにかんだようにと微笑んでくれる。
「シャーロット・・」
つないでいたシャーロットの手にキスを贈る。
「これからもずっと幸せにするよ。」
シャーロットの頬と目元にもキスをする。シャーロットの白かった頬が赤く染まる。
「愛しているよ」と鶯からやや深い緑がかった瞳を見つめて自分の気持ちを伝える。
「私も愛しています、アーサー」自分の名前が呼ばれ終わる前に唇を重ねたのだった。
次回が最終回となります。今までありがとうございました。
「ふふふ」
と笑う。
アーサーがはたと気がつき、
「無様な姿をお見せしてお恥ずかしいです」
と話す。
「いやいや、微笑ましいと思っただけです。そして、もしかしたら私も近日中に同じ立場になるのかもしれませんので」
「え?それはご婚約されるということですか?」
「ふふふ、まだ、決定までには至っていないのですよ。まだまだこれからです。」
シャーロット関係にはなんでも嫉妬しやすいアーサーは少しホッとした顔をして
「それはそれは。無事に決定されることをお祈りしております」
と返答する。
「ふふふ、ありがとう。応援いただけると嬉しいですよ」
と返事しつつ、まあ大丈夫だろうなと思いつつ、一番の山は、あなたの父上ですけどねと心で呟いたのだった。
「アーサー」
シャーロットが戻ってきた。
「とても、素晴らしいドレスだったの。ありがとう。婚約式で見るのを楽しみにしていてね」
と微笑む。
「無論だ。とても楽しみにしているよ。できるだけ早く婚約式を行いたいと思っているんだ。父上にも母上にも頼んである。ゼオン公爵殿、ぜひお嬢様となられたシャーロットさまとの婚約をお願いします」
「無論だ。そして、つまりそれはアーサー殿が我が娘となったシャーロットを家に閉じ込めることなく、自由に治療師や医師、研究者として動いて良いと考えているということで良いかね?」
「はい。ちゃんと話し合って決定しています。父上にも了解をとっています。おまかせください」
「それを聞いて安心したよ。シャーロット、早速だが、来年医学部に入学するための勉強をしないといけないだろうと思っている。ギルバートとともに家庭教師を手配しているからね。勉強しなさい。治療師としての仕事は一旦おやすみして、頼まれている教科書づくりに専念しなさい。良いね?」
「ありがとうございます。頑張ります。」
あの、私との婚約式は・・と心で思っていると
「アーサー殿、流石に貴殿の休み中に婚約式の手配をすることは難しかったが、1ヶ月後で手配を始めている。お母上がほとんど全てを仕切ってくださっているから安心なさい。流石に内輪だけというわけにはいかない。王太子殿下と妃殿下も参加をするとおっしゃってくださっている。ご両親に家に戻られた後に詳細を確認してもらいたい。」
顔がパッと一気に明るくなったアーサーである。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
と挨拶する。
「ふふふ、ずっと馬車で座りっぱなしで大変だっただろう。二人で庭でも散策すると良い。」
と提案してくれる。なんて理解のある養父様だと心の中で感動しつつ、
「ありがとうございます。では、シャーロット、少し歩こうか?」
とシャーロットをエスコートする。
ゼオン侯爵家の庭もやはり王都の中とは思えないほど広い。
ゼオンは、まだ夏だが、王都はかなり北のほうにあるのですでに秋らしい花も咲き始めている。
「まあ、やはり王都はゼオンよりずっと秋のおとずれが早いのね」
ダリアやコスモス、マリーゴールドが咲き乱れる中を散策すると四阿がある。
そこにシャーロットと二人で座る
「無事に王都にもついた。婚約も全ての人が認めてくれている。あとは何か心配事とかはないかい?気になることがあればなんでも言ってくれ」と尋ねる。
「これだけ良くしていただいているのだもの。幸せだわ」
はにかんだようにと微笑んでくれる。
「シャーロット・・」
つないでいたシャーロットの手にキスを贈る。
「これからもずっと幸せにするよ。」
シャーロットの頬と目元にもキスをする。シャーロットの白かった頬が赤く染まる。
「愛しているよ」と鶯からやや深い緑がかった瞳を見つめて自分の気持ちを伝える。
「私も愛しています、アーサー」自分の名前が呼ばれ終わる前に唇を重ねたのだった。
次回が最終回となります。今までありがとうございました。
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