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番外編2

ゼオン侯爵家 執事 2

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手紙を領地に早馬で送らせ、王都にいるビクトリア様にも手紙を急ぎ使用人に持たせた。

何と、3時間後に、ビクトリア様からの前触れがあり、今からそちらに行くからと連絡がきたのだった。

「アダム、お前だな?」
とこちらを睨んだ旦那様の視線を何食わぬ顔で受け止め、
「御養子様となられたギルバート様にお会いに来られるのでは?」
としれっとした顔で訪問があるであろう時間の10分前に旦那様にお伝えしたのだった。

ビクトリアは、他の侯爵家に嫁ぎ、1人の男子と2人の女子がいる。無論、いざとなったら、ゼオンに一人養女に出しても良いとは思っていたが、一番良いのは、アリストが再婚して子供を持つことだと思っていた。ところが、13年経っても再婚せず、その上、養子縁組をすると聞いてとうとうかと諦めていたのだ。
その矢先の、前向きに検討する発言である。

鼻息荒くやってきたビクトリアが貴族らしい挨拶をしないままに
「アリスト、本当に結婚するのね?」
と開口一番言ってしまったのは仕方ないことであろう。

それに対して、
「何か誤解があるようですな。結婚について考えるようにしようとは言ったが、結婚するとまではいっていませんよ」
とアリストが不快そうに話す。

「何をいうのです、それは同じ事です。それよりも、とりあえず、来週お茶会を開くことにしました。必ずそれにいらっしゃい。安心なさい、別にご令嬢をよりどりみどり揃えたりしません。せっかくですから、エリザベス様とお話しする時間をとってあげようと思っているだけです。あなたのことを好きになってくださった貴重な令嬢です。まずは、あなた自身がエリザベス様をどう思うのか、一目惚れでもしない限り話さないと何もわかりませんよ」

「こんなに歳が離れたやもめになんてすぐ熱が覚めますよ」

「だまらっしゃい!それを決めるのはあなたではありません。一目ぼれでも何でもきっかけは良いのですから。アダム!必ずお茶会に連れてくるのですよ!」

「御意」

「さて本題はここまでです。あとはギルバートに会わなければね。甥になるのですもの」

ビクトリアはウキウキしている。
そこにギルバートがやってきた。
「初めまして。ファミーユ侯爵夫人、ギルバート ゼオンでございます。此度、ご縁がありゼオン侯爵家の養子となりました。まだまだ若輩者でございます。今後ご指導のほどお願い申し上げます。」

「まあ、何て立派な挨拶でしょう!こちらこそ、よろしくね。アリストとゼオン領をぜひ支えてくださいね」

「はい、ゼオン領は、いまや我が姉弟にとって、第二の故郷です。大恩ある父上とゼオン領を生涯支えていきたいと存じます」

ビクトリアも感動しているし、後ろでは何度聞いても感動ものだと、アダムも感動している。
ビクトリアは、気分良く、帰宅の途についたのだった。
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