92 / 136
番外編2
騎士団長室
しおりを挟む
アーサーが、休暇を取って飛び出してしまったので、報告書やら手配など、いろいろな第二騎士団の書類が溜め込まれており、それを事情を知っている自分が手伝う。
そもそも自分は、すべての騎士団長の総括としての仕事をするはずなのに、この事件のまとめを受ける立場の自分がまとめを書いているのである。本当にいただけないとイライラする。しかし、あの、氷のように冷静沈着な騎士団最強と言われるアーサーの唯一のポンコツ部分といえばシャーロットである。
親としては、シャーロットにプロポーズする間くらいの仕事のサポートは仕方あるまいと思っている。
そこに
「お待ちください」
と慌てている秘書官の声とガヤガヤとする音が聞こえたと思ったら、バーンとドアが開き、驚いて顔をあげると、妻が微笑みながら立っていた。
「せ、セーラ、どうして王都に・・」
「旦那様、お話があって参りましたの」
その声を聞いただけで、しまった、すでに情報が届いてしまったかと気がつく。
あとで手紙を書こうと思っていたのだが、なかなかかけなかったのだ。
「お、落ち着いてくれ、セーラ。いつも君は美しいな。今日は、さらに美しい。
シャーロットの件はきちんと私から手紙を書く予定でいたんだ。間違った情報が伝わってもよくないと思ったんだ」
「あら、そうですの?まあ、良いですわ。旦那様にお話ししたいことは山ほどありますが、それよりも、重要なのはシャーロットちゃんとアーサーのことですもの。さあ、包み隠さず全てをお話しなさって?」
アーサーが氷の騎士と言われる時の微笑みに似た冷たい微笑を浮かべながらフリードを見つめたセーラを見て、これは後が長いなと覚悟した騎士団団長だった。
「つまり、シャーロットちゃんは、悪党のゲルトランからギルバートと逃げて、メイドのエマに偶然助けられてエマの実家のあるゼオンに移動したと。そして、そこで、平民となって、治療師の資格をとって働き、ギルバートもその才能で、ゼオン侯爵様のところで働くようになった。今年王太子殿下がゼオンに行かれた時に、偶然会ってアーサーはシャーロットだと気がついてプロポーズしたけど、自分はもうふさわしくないからといって断られた。
でも、諦めきれないアーサーは、ゲルトランの罪を明らかにして、
再度プロポーズに昨日出発した。 これでオーケー?」
コクコクと頷きながら、
「私もアーサーに懇願されて許可を出した。シャーロットは、一度は我が嫡男の嫁と定めた娘、しかも我が親友ロバートの娘でもある。平民として過ごしていた時期があろうと、治療師という仕事をこれからもしたいと言われようとも、医者になりたいと言われようとも、我が領地には、セーラ、当代一の賢夫人と言われるきみがいる、エリザベスも手伝うだろう。なので、シャーロットを嫁として受け入れ・」
「まああ・・素晴らしいわ・・愛ね。身分のために引き裂かれそうになる二人、でもその困難を二人で乗り越えようとするの、そしてそれを支える義理の母の深い愛、すごいわ、完璧よ、感動的よ」
と口に手を当てて震えながら感動している。
「セーラ?」
「フリード、素晴らしいわ。さすが我が夫!遠縁の娘と結婚させると言い始めたときは離婚しようかと思ったけど、よく決断しました。ああ、シャーロットちゃんとまた会えるなんて、感動だわ」
「いや、まだ、プロポーズが受け入れてもらえるとは限らな」
「何を言っているの?あのシャーロットちゃんについてだけ呆れるほどしつこいアーサーからシャーロットちゃんが逃げられるわけがないでしょう。すぐに婚約式だわ。あの、ポンコツがゆっくり待つなんて出来るわけがないわ。急がなくては」
「何を急ぐんだ?」
「まったく、これだから男親は!婚約式の準備に決まってます。一番大切なのは、シャーロットちゃんのドレスですもの。どうせ、アーサーは軍の礼服を着るに決まっているのだから。そうだわ、ギルバート君にも会いにいかなくては。シャーロットちゃんの身長を確認しなくてはね。フリード、私、王都のタウンハウスに今日から泊まりますからね。あなたもちゃんと毎日帰ってきますよね?」
「はい」(仕事があるんだが・・・はあ、持って帰るか・・・)
フリードは、学生時代に公爵令嬢だったセーラに一目惚れして身分が下の伯爵家である自分と結婚してもらったという弱みがある。正直ベタ惚れなのだ。
普段は、自分が多忙で領地の運営が重要なので、妻は領地にいることが多い。しかし、タウンハウスにくると元公爵令嬢の立場を利用して精力的に動き社交界でもある一定の地位を占めている。
きっと、王都きってのデザイナーに急ぎドレスを発注するに違いない。
「さあ、急がなくては。エリザベスや私のドレスも新調したいけど、シャーロットちゃんが最優先だわ。婚約式の会場も考えないとね、招待リストも必要ね、じゃあ、フリード、とりあえず忙しいから、あとのお話はタウンハウスでゆっくりお聞きするわ」
と、頬にキスしてくれたと思ったら嵐のように去っていったのだった。
帰った後が、恐ろしいな、隠していたことをずっと責められそうだ・・・
深いため息をつく騎士団団長であった。
そもそも自分は、すべての騎士団長の総括としての仕事をするはずなのに、この事件のまとめを受ける立場の自分がまとめを書いているのである。本当にいただけないとイライラする。しかし、あの、氷のように冷静沈着な騎士団最強と言われるアーサーの唯一のポンコツ部分といえばシャーロットである。
親としては、シャーロットにプロポーズする間くらいの仕事のサポートは仕方あるまいと思っている。
そこに
「お待ちください」
と慌てている秘書官の声とガヤガヤとする音が聞こえたと思ったら、バーンとドアが開き、驚いて顔をあげると、妻が微笑みながら立っていた。
「せ、セーラ、どうして王都に・・」
「旦那様、お話があって参りましたの」
その声を聞いただけで、しまった、すでに情報が届いてしまったかと気がつく。
あとで手紙を書こうと思っていたのだが、なかなかかけなかったのだ。
「お、落ち着いてくれ、セーラ。いつも君は美しいな。今日は、さらに美しい。
シャーロットの件はきちんと私から手紙を書く予定でいたんだ。間違った情報が伝わってもよくないと思ったんだ」
「あら、そうですの?まあ、良いですわ。旦那様にお話ししたいことは山ほどありますが、それよりも、重要なのはシャーロットちゃんとアーサーのことですもの。さあ、包み隠さず全てをお話しなさって?」
アーサーが氷の騎士と言われる時の微笑みに似た冷たい微笑を浮かべながらフリードを見つめたセーラを見て、これは後が長いなと覚悟した騎士団団長だった。
「つまり、シャーロットちゃんは、悪党のゲルトランからギルバートと逃げて、メイドのエマに偶然助けられてエマの実家のあるゼオンに移動したと。そして、そこで、平民となって、治療師の資格をとって働き、ギルバートもその才能で、ゼオン侯爵様のところで働くようになった。今年王太子殿下がゼオンに行かれた時に、偶然会ってアーサーはシャーロットだと気がついてプロポーズしたけど、自分はもうふさわしくないからといって断られた。
でも、諦めきれないアーサーは、ゲルトランの罪を明らかにして、
再度プロポーズに昨日出発した。 これでオーケー?」
コクコクと頷きながら、
「私もアーサーに懇願されて許可を出した。シャーロットは、一度は我が嫡男の嫁と定めた娘、しかも我が親友ロバートの娘でもある。平民として過ごしていた時期があろうと、治療師という仕事をこれからもしたいと言われようとも、医者になりたいと言われようとも、我が領地には、セーラ、当代一の賢夫人と言われるきみがいる、エリザベスも手伝うだろう。なので、シャーロットを嫁として受け入れ・」
「まああ・・素晴らしいわ・・愛ね。身分のために引き裂かれそうになる二人、でもその困難を二人で乗り越えようとするの、そしてそれを支える義理の母の深い愛、すごいわ、完璧よ、感動的よ」
と口に手を当てて震えながら感動している。
「セーラ?」
「フリード、素晴らしいわ。さすが我が夫!遠縁の娘と結婚させると言い始めたときは離婚しようかと思ったけど、よく決断しました。ああ、シャーロットちゃんとまた会えるなんて、感動だわ」
「いや、まだ、プロポーズが受け入れてもらえるとは限らな」
「何を言っているの?あのシャーロットちゃんについてだけ呆れるほどしつこいアーサーからシャーロットちゃんが逃げられるわけがないでしょう。すぐに婚約式だわ。あの、ポンコツがゆっくり待つなんて出来るわけがないわ。急がなくては」
「何を急ぐんだ?」
「まったく、これだから男親は!婚約式の準備に決まってます。一番大切なのは、シャーロットちゃんのドレスですもの。どうせ、アーサーは軍の礼服を着るに決まっているのだから。そうだわ、ギルバート君にも会いにいかなくては。シャーロットちゃんの身長を確認しなくてはね。フリード、私、王都のタウンハウスに今日から泊まりますからね。あなたもちゃんと毎日帰ってきますよね?」
「はい」(仕事があるんだが・・・はあ、持って帰るか・・・)
フリードは、学生時代に公爵令嬢だったセーラに一目惚れして身分が下の伯爵家である自分と結婚してもらったという弱みがある。正直ベタ惚れなのだ。
普段は、自分が多忙で領地の運営が重要なので、妻は領地にいることが多い。しかし、タウンハウスにくると元公爵令嬢の立場を利用して精力的に動き社交界でもある一定の地位を占めている。
きっと、王都きってのデザイナーに急ぎドレスを発注するに違いない。
「さあ、急がなくては。エリザベスや私のドレスも新調したいけど、シャーロットちゃんが最優先だわ。婚約式の会場も考えないとね、招待リストも必要ね、じゃあ、フリード、とりあえず忙しいから、あとのお話はタウンハウスでゆっくりお聞きするわ」
と、頬にキスしてくれたと思ったら嵐のように去っていったのだった。
帰った後が、恐ろしいな、隠していたことをずっと責められそうだ・・・
深いため息をつく騎士団団長であった。
12
お気に入りに追加
3,188
あなたにおすすめの小説
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
前世で医学生だった私が転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります 2
mica
ファンタジー
続編となりますので、前作をお手数ですがお読みください。
アーサーと再会し、王都バースで侯爵令嬢として生活を始めたシャーロット。幸せな婚約生活が始まるはずだったが、ドルミカ王国との外交問題は解決しておらず、悪化の一途をたどる。
ちょうど、科学が進み、戦い方も変わっていく時代、自分がそれに関わるには抵抗があるシャーロット、しかし時代は動いていく。
そして、ドルミカとの諍いには、実はシャーロットとギルバートの両親の時代から続く怨恨も影響していた。
そして、シャーロットとギルバートの母親アデリーナには実は秘密があった。
ローヌ王国だけでなく、ドルミカ王国、そしてスコール王国、周囲の国も巻き込み、逆に巻き込まれながら、シャーロットは自分の信じる道を進んでいくが…..
主人公の恋愛要素がちょっと少ないかもしれません。色んな人の恋愛模様が描かれます。
また、ギルバートの青春も描けたらと思っています。
チートスキルを貰って転生したけどこんな状況は望んでない
カナデ
ファンタジー
大事故に巻き込まれ、死んだな、と思った時には真っ白な空間にいた佐藤乃蒼(のあ)、普通のOL27歳は、「これから異世界へ転生して貰いますーー!」と言われた。
一つだけ能力をくれるという言葉に、せっかくだから、と流行りの小説を思い出しつつ、どんなチート能力を貰おうか、とドキドキしながら考えていた。
そう、考えていただけで能力を決定したつもりは無かったのに、気づいた時には異世界で子供に転生しており、そうして両親は襲撃されただろう荷馬車の傍で、自分を守るかのように亡くなっていた。
ーーーこんなつもりじゃなかった。なんで、どうしてこんなことに!!
その両親の死は、もしかしたら転生の時に考えていたことが原因かもしれなくてーーーー。
自分を転生させた神に何度も繰り返し問いかけても、嘆いても自分の状況は変わることはなく。
彼女が手にしたチート能力はーー中途半端な通販スキル。これからどう生きたらいいのだろう?
ちょっと最初は暗めで、ちょっとシリアス風味(はあまりなくなります)な異世界転生のお話となります。
(R15 は残酷描写です。戦闘シーンはそれ程ありませんが流血、人の死がでますので苦手な方は自己責任でお願いします)
どんどんのんびりほのぼのな感じになって行きます。(思い出したようにシリアスさんが出たり)
チート能力?はありますが、無双ものではありませんので、ご了承ください。
今回はいつもとはちょっと違った風味の話となります。
ストックがいつもより多めにありますので、毎日更新予定です。
力尽きたらのんびり更新となりますが、お付き合いいただけたらうれしいです。
5/2 HOT女性12位になってました!ありがとうございます!
5/3 HOT女性8位(午前9時)表紙入りしてました!ありがとうございます!
5/3 HOT女性4位(午後9時)まで上がりました!ありがとうございます<(_ _)>
5/4 HOT女性2位に起きたらなってました!!ありがとうございます!!頑張ります!
5/5 HOT女性1位に!(12時)寝ようと思ってみたら驚きました!ありがとうございます!!
婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな
朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
婚約破棄されて国外追放の公爵令嬢、しかし地獄に落ちたのは彼女ではなかった。
!逆転チートな婚約破棄劇場!
!王宮、そして誰も居なくなった!
!国が滅んだ?私のせい?しらんがな!
18話で完結
どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)
水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――
乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】!
★★
乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ!
★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。
乙女ゲームの世界に転生したと思ったらモブですらないちみっこですが、何故か攻略対象や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています
真理亜
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら...モブですらないちみっこでした。
なのに何故か攻略対象者達や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています。
更に更に変態銀髪美女メイドや変態数学女教師まで現れてもう大変!
変態が大変だ! いや大変な変態だ!
お前ら全員ロ○か!? ロ○なんか!? ロ○やろぉ~!
しかも精霊の愛し子なんて言われちゃって精霊が沢山飛んでる~!
身長130cmにも満たないちみっこヒロイン? が巻き込まれる騒動をお楽しみ下さい。
操作ミスで間違って消してしまった為、再掲しております。ブックマークをして下さっていた方々、大変申し訳ございません。
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる