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ペリエ
ベルグ治療院
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ペリエにあるベルグ治療院は、熊のようなのっそりしたベルグ治療師が院長をしているこの町唯一の治療院である。
なので朝から患者がひっきりなしにやってくるし、お手伝いをしてくれるスタッフもいていつも、賑やかである。
「やあ、エミリー先生、今日も忙しくなりそうだ」
ベルグ先生が声をかけてくれる。
「おはようございます、今日も大変そうです。先生、私妊婦さんから先に診ますね」
「ああ、その方が、患者も嬉しいだろう。こんな熊のようなおじさんに見てもらうよりね」
とベルグ先生が笑う。
喧嘩っ早い漁師が怪我したとか、お年寄りの腰痛とか、腹痛、熱、そして妊婦さんとあらゆるジャンルの病気や怪我の人がやってくる。
無論、全部が治せるわけではない、ここのレベルでは、細菌感染一つでも、命取りだ。
でも、そんな中、エミリーがいろいろ工夫して治療をする。それを受け入れてくれるベルグ院長はおおらかだなとエミリーは、感謝している。
女だてらにとも言われないし、こんな治療は聞いたことがないから受け入れられないとも言われない。
面白いな、やってみたらよいと言ってくれる。
まずエミリーが始めたのは、自分とスタッフの手洗いの徹底である。幸い、この世界でもすでに石鹸は普及していた。ざんねんながら、アルコール消毒はまだで、アルコールは蒸留酒は無く、ワインなどの発酵酒のレベルまでしかないので、使いにくい。しかし、手洗いをこまめにすることは、なんとか受け入れてくれた。
そして、色々な治療道具の煮沸消毒である。この世界でも、怪我をしたときの治療のためのメスやピンセットや鋏はあったが、水で洗って拭くだけであった。これをきちんと煮沸消毒して使うようにしたのだった。できれば、前世のようにオートクレープと言う機械で、高圧滅菌までできれば良いが、美咲も知識は持っていてもどうやって圧力をかける機械を作るかはわからない。まずは、簡単にできる煮沸消毒を目指したのだった。
最初は嫌がられたが、それだけで、傷の治療の後に熱が出る人が減ったり、出産後の子供の死亡が減ったので、すぐ受け入れられたのだった。
そして、最後が傷の縫合だった。おそらく、この世界では、縫合できる医師は多いが、治療師だと、それこそディランのように戦争に行った人は必要にかられてすることもあっただろうが、今ではできる人は少ないようだった。
美咲は将来、生まれ育った島で働こうと思っていたので、内科も外科もある一定できるようにならないとと思っていた。大学でポリクリと言われる各科での研修の時も、時間があれば糸結びの練習をしたり、鶏の胸肉を使用して、縫合の練習をする先輩の練習を見たりしていた。なので、比較的、怪我の患者さんが来ても落ち着いて縫合ができた。
ベルグ院長にはとても驚かれ、心の中で、ディランごめんなさいと言いながら、
「ディランに教えてもらったんです」
と説明すると、ディランは戦地に行ったことがあるものなと納得してくれ、逆に教えて欲しいと頼まれたのだった。今では、二人は簡単な怪我の縫合ができるようになり、怪我の多い港の人たちに感謝されていた。
この町でも、産婆さんはいたが、エミリーにも頼まれることが増えてきた。ゼオンでも、エマの二人目の赤ちゃんは、エミリーが取り上げた。エマはとても感謝してくれた。少しずつ、お産を手伝うことが増え元気な赤ちゃんをみるととても嬉しい反面、死産や流産をみることもある。
以前、侯爵家で、ノアが、
「実は、旦那様の奥様とお子様は出産時に亡くなったのです。王都での出産でしたが・・。それから新しいご家族を持とうとされないのです。そして、その後から治療師学院を更に金銭的にサポートされるようになったのですよ。」
と教えてくれた。
「エミリーが、助産師として手伝って、ゼオンで安全な出産が増えてくれれば喜ばしいことです」
と言ってくれていた。
少しでも、悲しい思いをする人が減れば良いのにと思いながら、同時にいつかこの世界でも医師になりたいと思うようになってきたのだった。
なので朝から患者がひっきりなしにやってくるし、お手伝いをしてくれるスタッフもいていつも、賑やかである。
「やあ、エミリー先生、今日も忙しくなりそうだ」
ベルグ先生が声をかけてくれる。
「おはようございます、今日も大変そうです。先生、私妊婦さんから先に診ますね」
「ああ、その方が、患者も嬉しいだろう。こんな熊のようなおじさんに見てもらうよりね」
とベルグ先生が笑う。
喧嘩っ早い漁師が怪我したとか、お年寄りの腰痛とか、腹痛、熱、そして妊婦さんとあらゆるジャンルの病気や怪我の人がやってくる。
無論、全部が治せるわけではない、ここのレベルでは、細菌感染一つでも、命取りだ。
でも、そんな中、エミリーがいろいろ工夫して治療をする。それを受け入れてくれるベルグ院長はおおらかだなとエミリーは、感謝している。
女だてらにとも言われないし、こんな治療は聞いたことがないから受け入れられないとも言われない。
面白いな、やってみたらよいと言ってくれる。
まずエミリーが始めたのは、自分とスタッフの手洗いの徹底である。幸い、この世界でもすでに石鹸は普及していた。ざんねんながら、アルコール消毒はまだで、アルコールは蒸留酒は無く、ワインなどの発酵酒のレベルまでしかないので、使いにくい。しかし、手洗いをこまめにすることは、なんとか受け入れてくれた。
そして、色々な治療道具の煮沸消毒である。この世界でも、怪我をしたときの治療のためのメスやピンセットや鋏はあったが、水で洗って拭くだけであった。これをきちんと煮沸消毒して使うようにしたのだった。できれば、前世のようにオートクレープと言う機械で、高圧滅菌までできれば良いが、美咲も知識は持っていてもどうやって圧力をかける機械を作るかはわからない。まずは、簡単にできる煮沸消毒を目指したのだった。
最初は嫌がられたが、それだけで、傷の治療の後に熱が出る人が減ったり、出産後の子供の死亡が減ったので、すぐ受け入れられたのだった。
そして、最後が傷の縫合だった。おそらく、この世界では、縫合できる医師は多いが、治療師だと、それこそディランのように戦争に行った人は必要にかられてすることもあっただろうが、今ではできる人は少ないようだった。
美咲は将来、生まれ育った島で働こうと思っていたので、内科も外科もある一定できるようにならないとと思っていた。大学でポリクリと言われる各科での研修の時も、時間があれば糸結びの練習をしたり、鶏の胸肉を使用して、縫合の練習をする先輩の練習を見たりしていた。なので、比較的、怪我の患者さんが来ても落ち着いて縫合ができた。
ベルグ院長にはとても驚かれ、心の中で、ディランごめんなさいと言いながら、
「ディランに教えてもらったんです」
と説明すると、ディランは戦地に行ったことがあるものなと納得してくれ、逆に教えて欲しいと頼まれたのだった。今では、二人は簡単な怪我の縫合ができるようになり、怪我の多い港の人たちに感謝されていた。
この町でも、産婆さんはいたが、エミリーにも頼まれることが増えてきた。ゼオンでも、エマの二人目の赤ちゃんは、エミリーが取り上げた。エマはとても感謝してくれた。少しずつ、お産を手伝うことが増え元気な赤ちゃんをみるととても嬉しい反面、死産や流産をみることもある。
以前、侯爵家で、ノアが、
「実は、旦那様の奥様とお子様は出産時に亡くなったのです。王都での出産でしたが・・。それから新しいご家族を持とうとされないのです。そして、その後から治療師学院を更に金銭的にサポートされるようになったのですよ。」
と教えてくれた。
「エミリーが、助産師として手伝って、ゼオンで安全な出産が増えてくれれば喜ばしいことです」
と言ってくれていた。
少しでも、悲しい思いをする人が減れば良いのにと思いながら、同時にいつかこの世界でも医師になりたいと思うようになってきたのだった。
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