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王都にて2
王太子の帰還
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数日後、王太子殿下と妃殿下、そして、ゼオン侯爵、バラン伯爵が別のルートを通って王都に無事に到着された。
それに合わせて、今回のペリエ襲撃事件と王太子暗殺未遂事件が公表され、エクアへの公式訪問が延期されたことが発表された。
王都は騒然とした。王太子の暗殺などあってはならないことである。
さらに、ゲルトラン、現ケント子爵が今回の暗殺事件に関与していたことが発表され、本来王家を守るべき貴族が暗殺に関わったという前代未聞の不祥事に、貴族だけでなく平民からも怒りの声があがる。
しかし、騎士団から、それに関与していた面々の逮捕、ドルミカ国の関与の疑いについて発表された。さらに、ゲルトランが麻薬の売買にも手を染め、領地の館で麻薬を栽培していたことも判明し関係者が全て逮捕されて現在取り調べが進んでいることが公表され、多くの国民が安堵したのだった。
「ご無事に御帰還され祝着至極にございます。」
アーサーと父親の騎士団長が、片膝をつき騎士の礼をとる。
「おお、アーサー、今回は本当に世話になった。そなたがいなければどうなっていたかわからない。礼を言う。 まずは、座れ。これからのことを詰めていかなければな。」
ソファーに着座する。王太子、ゼオン侯爵が座っており、後ろにはその側近と騎士が控えている。
「先ほど、そなたたちが私たちが着くまでにどれほど頑張ってくれたかを説明を受けたところだ。本当に驚いたな。シャーロット嬢が指摘した通りだったとは。しかも、黒幕にゲルトランまで関与していたとは驚いた。前ケント子爵さえ、殺されていなければ、このようなことにはならなかったのかもしれんな。」
「おっしゃる通りです。6年前にあの男の尻尾を掴まえることができなかったのが悔やまれます。」
「まあ、今更だ。残念なのは、相手は狡猾で今回結局ドルミカ国の手先だったその商会はもぬけの殻でこれ以上は難しいと言うことだな。ただ、当国の貴族の中の膿は出せそうだと言うことか。」
「御意。おそらく、成功しようが成功しまいが、実際の行動が開始された瞬間からもう王都と当国から逃げる手はずがついていたようです。スコール国へ移動する船の乗船リストにその怪しい人物の名前がありました。もしくは、そう見せかけてナーベラに移動したのかいくつかのルートを用意していたようです」
「相手にしてみたら、ペリエで襲撃、そこでうまくいかなければ王都に入る少し前に気が緩んできたところで暗殺するという二重の計画、そしてうまく行くかは確率の問題、あとは逃げるだけで捕まるのは小物ばかりということか。忌々しいことだ」
とゼオン侯爵も苦々しげに話す。
「まあ良い。あとは、国王陛下と大臣、議会とドルミカについてどうするか話し合わなくてはな。私の方は、今回の件で、側室を作れとせっつかれそうだが・・・」
王太子がふうっとため息をつく。
ゼオン侯爵が、アーサーの方を向き、
「アーサー殿、ギルバートは、今、王都の我が家で休ませている。貴族の子息として対応している。彼は、ずっとこの数年、私が気に入って当家の侍従として働いてもらうつもりでいた。今後は、ケント子爵家がどうなるかが大きな問題となる。彼は、被害者だが、悪名高くなったケントという名前を踏襲するのが良いのか悩むところだ。まずは、貴族としての地位を復活させるとしても、もう一度貴族としては学校で学ぶべきと思う。なにせ、7歳からこの6年間彼は残念ながら平民の学校でしか過ごしていない。」
首を横に振る。
アーサーも、イーズス伯もそれがこのところの悩みの種である。
「はい、我らもケント領の屋敷を家宅捜索して呆然としました。あれほど素晴らしい領地が、麻薬の栽培地として汚され、屋敷は、もう見るも無残な状態です。」
「殿下、私は前ケント子爵であったロバートとは親友でした。ケント領はしばらく、国に没収されることとなると思います。麻薬を完全に焼いて消滅させるのか決めるにせよ、悪用されないためにもしばらく国の管理にしなければならない。ですが、ぜひ、ギルバートにケント子爵の名前を継がせることだけはお願いしたいのです。」
イーズス伯が、頭を下げる。
「ふふ、心配しなくても良い。私は、この10日以上、ギルバートとも一緒に旅をしたのだぞ。彼が、真面目で優秀な人物なことはわかっている。むしろ、学校で学ばせながら、王宮で使用人として働かせても良いと思っている。イーズス伯、お前は会っていないから驚くだろうが、私もロバートには会ったことがある。よく似ているぞ。しかし、残念ながら、あの事故で足の動きが悪くなった。なので、お前のところで軍人にするのは無理だ。
まあ、私が、王宮でと言ってもその前にアリストが手放してくれなさそうだがな。」
「ふふ、私には子供がいません、彼を養子にすることも考えているのですよ。」
とアリストが笑う。
「なんと、侯爵家の養子にですか。そうなれば、ケントの名前はなくなってもロバートも喜ぶことでしょう。お二人のご厚情に感謝いたします。」
イーズス伯とアーサーは再度頭を下げる。
それに合わせて、今回のペリエ襲撃事件と王太子暗殺未遂事件が公表され、エクアへの公式訪問が延期されたことが発表された。
王都は騒然とした。王太子の暗殺などあってはならないことである。
さらに、ゲルトラン、現ケント子爵が今回の暗殺事件に関与していたことが発表され、本来王家を守るべき貴族が暗殺に関わったという前代未聞の不祥事に、貴族だけでなく平民からも怒りの声があがる。
しかし、騎士団から、それに関与していた面々の逮捕、ドルミカ国の関与の疑いについて発表された。さらに、ゲルトランが麻薬の売買にも手を染め、領地の館で麻薬を栽培していたことも判明し関係者が全て逮捕されて現在取り調べが進んでいることが公表され、多くの国民が安堵したのだった。
「ご無事に御帰還され祝着至極にございます。」
アーサーと父親の騎士団長が、片膝をつき騎士の礼をとる。
「おお、アーサー、今回は本当に世話になった。そなたがいなければどうなっていたかわからない。礼を言う。 まずは、座れ。これからのことを詰めていかなければな。」
ソファーに着座する。王太子、ゼオン侯爵が座っており、後ろにはその側近と騎士が控えている。
「先ほど、そなたたちが私たちが着くまでにどれほど頑張ってくれたかを説明を受けたところだ。本当に驚いたな。シャーロット嬢が指摘した通りだったとは。しかも、黒幕にゲルトランまで関与していたとは驚いた。前ケント子爵さえ、殺されていなければ、このようなことにはならなかったのかもしれんな。」
「おっしゃる通りです。6年前にあの男の尻尾を掴まえることができなかったのが悔やまれます。」
「まあ、今更だ。残念なのは、相手は狡猾で今回結局ドルミカ国の手先だったその商会はもぬけの殻でこれ以上は難しいと言うことだな。ただ、当国の貴族の中の膿は出せそうだと言うことか。」
「御意。おそらく、成功しようが成功しまいが、実際の行動が開始された瞬間からもう王都と当国から逃げる手はずがついていたようです。スコール国へ移動する船の乗船リストにその怪しい人物の名前がありました。もしくは、そう見せかけてナーベラに移動したのかいくつかのルートを用意していたようです」
「相手にしてみたら、ペリエで襲撃、そこでうまくいかなければ王都に入る少し前に気が緩んできたところで暗殺するという二重の計画、そしてうまく行くかは確率の問題、あとは逃げるだけで捕まるのは小物ばかりということか。忌々しいことだ」
とゼオン侯爵も苦々しげに話す。
「まあ良い。あとは、国王陛下と大臣、議会とドルミカについてどうするか話し合わなくてはな。私の方は、今回の件で、側室を作れとせっつかれそうだが・・・」
王太子がふうっとため息をつく。
ゼオン侯爵が、アーサーの方を向き、
「アーサー殿、ギルバートは、今、王都の我が家で休ませている。貴族の子息として対応している。彼は、ずっとこの数年、私が気に入って当家の侍従として働いてもらうつもりでいた。今後は、ケント子爵家がどうなるかが大きな問題となる。彼は、被害者だが、悪名高くなったケントという名前を踏襲するのが良いのか悩むところだ。まずは、貴族としての地位を復活させるとしても、もう一度貴族としては学校で学ぶべきと思う。なにせ、7歳からこの6年間彼は残念ながら平民の学校でしか過ごしていない。」
首を横に振る。
アーサーも、イーズス伯もそれがこのところの悩みの種である。
「はい、我らもケント領の屋敷を家宅捜索して呆然としました。あれほど素晴らしい領地が、麻薬の栽培地として汚され、屋敷は、もう見るも無残な状態です。」
「殿下、私は前ケント子爵であったロバートとは親友でした。ケント領はしばらく、国に没収されることとなると思います。麻薬を完全に焼いて消滅させるのか決めるにせよ、悪用されないためにもしばらく国の管理にしなければならない。ですが、ぜひ、ギルバートにケント子爵の名前を継がせることだけはお願いしたいのです。」
イーズス伯が、頭を下げる。
「ふふ、心配しなくても良い。私は、この10日以上、ギルバートとも一緒に旅をしたのだぞ。彼が、真面目で優秀な人物なことはわかっている。むしろ、学校で学ばせながら、王宮で使用人として働かせても良いと思っている。イーズス伯、お前は会っていないから驚くだろうが、私もロバートには会ったことがある。よく似ているぞ。しかし、残念ながら、あの事故で足の動きが悪くなった。なので、お前のところで軍人にするのは無理だ。
まあ、私が、王宮でと言ってもその前にアリストが手放してくれなさそうだがな。」
「ふふ、私には子供がいません、彼を養子にすることも考えているのですよ。」
とアリストが笑う。
「なんと、侯爵家の養子にですか。そうなれば、ケントの名前はなくなってもロバートも喜ぶことでしょう。お二人のご厚情に感謝いたします。」
イーズス伯とアーサーは再度頭を下げる。
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