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王都へ

ギルバートと王都に向かう

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ジルが急ぎやってきた。

「失礼します。お呼びと伺いました。」

部屋に入るとアーサーが立っており驚く。
「アーサー兄、イーズス卿」と言いかえると、

アーサーが、
「ギルバート、生きてくれていたんだな。本当に嬉しいよ。」
とギルバートを力強く抱きしめる。

「アーサー兄上・・・」

「ペリエでシャーロットから聞いたのだ。今は、あまり時間がない。だが、ギルバート、私と王都まできて欲しい。ゲルトランを逮捕しなければ。」



「よかった。姉と会えたのですね。でも姉はどうなるのですか?」


 「シャーロットには、王都には行かないと言われた。自分は、もう平民の治療師で、伯爵夫人にはなれない、ここには治療を必要とする患者さんがいるんだと言って。」

と苦渋の顔をして話す。

「だが、私はそんなことは受け入れられない。まずは、ギルバート、君の名誉回復を優先する。その上で、改めてペリエまで彼女を迎えに行くつもりだ。ペリエには多数の護衛兵を配置した。襲撃しようなんて相手も愚かなことは考えないだろう。」

「姉上、姉上は、どうしてそんな・・」

涙が出てくるのをぐっとこらえる。

「わかりました。まずは、ゲルトランからケント子爵の地位を取り返すことを優先いたします。アーサー兄上、よろしくお願いします。旦那様、今まで身分を隠していたことをお許しください。見習い期間が終了したらお話ししようと思っておりました。
今から、エマたちに王都に出立することを伝えてきてもよろしいでしょうか?」

「ふむ、急ぎなさい。私も途中まで同行するからな。細かい話は後で聞こう。」

急ぎ、エマの店に行く。
3番目の子供を産んでまだ2ヶ月ほどのエマは、急展開に驚きながら、喜んでくれた。

「やはり、アーサー様がお二人のことをお忘れになるわけがないと思っていたのです。ギルバート様、おめでとうございます。ぜひ、王都で旦那様の仇をうってください。トーマスにペリエにいってもらい、お嬢様にゼオンに戻っていただくようにお願いします。」

「ありがとう。エマ、トーマス。二人のいうことなら頑固な姉さんも耳を傾けてくれるかもしれない。ぜひ、頼むよ。」

屋敷に戻り、出立の準備をアーサーとオスカーとともにする。ギルバートは、貴族の子弟として、ゼオン侯爵の馬車に同乗し、アーサーをはじめとする第二騎士団が護衛として王太子夫妻の馬車とともに警護する。




「さて、ギルバート君、ここからは君をケント子爵の嫡男として対応するよ。私のことも旦那様と呼ぶのはやめなさい。そして今までのことを話してくれないか?」

頷きながら、ギルバートは、今までのことを話す。

ゲルトランの策略で土砂崩れが起こったこと、逃げた後に追い詰められて河に落ちたこと、なぜか、シャーロットが泳げたこと、河岸にたどり着いた後、偶然エマに会ったこと、ゲルトランといた男たちが兵士かもしれないと思い、トーマスに頼んで藁の中に隠れて領地を出たこと、その後、シャーロットは髪をきり平民の男の子の格好となり4人でゼオンまで到着したこと、自分は、足を怪我をして歩くのが少し不自由になったが少しずつ良くなってきたこと、ゼオンでは、シャーロットは、平民の女の子として、刺繍や代書屋の仕事をしながらお金を稼いだことを説明した。

「そのあとのことは、侯爵もご存知の通りです。私は、学校に通った後、見習いとして働かせていただけることになりました。」

「なるほど、貴族として生まれた君たちがそんな目にあったとは。大変だったのだな。ギルバート、もっと早くに私に言ってくれれば、私が二人を保護して助けてやれたものを。」

「申し訳ありません。このようなことをお願いするのが正しいのかわからなかったのです。あまりに侯爵家のご恩情にすがるのは如何なものかと姉にも諭されました。」

「なんと、まあ、エミリーらしいといえばエミリーらしいな。彼女は、なんでも自分でなんとかしようとする気持ちが強いからな。」

「はい、姉はなんでも一人で頑張ろうとするのです」

「まあ、アーサー卿が付いている。私は、領地を出るところまでご同行した後、館に戻って、逆に海賊が再度こないように、近隣の領とともに海岸線を守らなければならない。しっかり、父上の仇を取るべく頑張りなさい。」


「ありがとうございます。侯爵閣下、ペリエにいる姉のこともよろしくお願いします。」


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