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王太子夫妻のゼオン訪問

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王宮から届いた公式な手紙を読んだゼオンは、ノアに

「なんと、王太子ご夫妻がこちらにお泊りになられるようだ。エクアへの公式訪問の途中にお立ち寄りくださるとのことだ。」


「おお、なんとそれは名誉なことでございますな。侯爵家の総力をあげてお出迎えせねば。」


「うむ、その上、万が一の粗相があってはいけない。警備体制もしっかりしなければならん。庭をきっとご覧になることを考えると・・・まあ、庭は現状大丈夫そうではあるな。」


「はい、時折エミリーにアドバイスをもらいながらレッドがきちんと対応しておりますので。この3年でラベンダーをはじめとした花のカーペットは2倍に広がり、それ以外の庭も今までの庭と全く違う田園のイメージを取り込んだ庭となり、王宮や王都の華美な庭と違って癒されるとお客様の評判も高いです。 

では、準備を進めてまいります。領地の各まちにも兵を派遣しなくては。領内はご同行されますか?」


「無論だ。ペリエまでは我が領土だからな。その後は、隣のベジエ伯爵がご案内するだろう。」






ノアが、使用人を集めて王太子ご夫妻が、エクア王国への視察の途中にゼオンに立ち寄られお泊まりになることになったこと、歓迎の晩餐会が行われること、少しでも粗相の無いようにしないといけないことを説明する。

「すげえことだぞ。俺らの料理を殿下に召し上がっていただくってことだからな。名誉なことだ。逆にちょっとでも間違いがあったら大変なことだ」

と興奮する。


ギルバートは、王太子殿下ご夫妻がいらっしゃるなんてすごいことだ。いっそ、ゲルトランのことを直訴。いや、だめだ。ゼオン侯爵に少しでもご迷惑をおかけするわけにはいかない。今回は、あくまで使用人として対応しなければと考え直す。

アーサー兄上が随行したりしていないだろうか。せめて、兄上にお声かけしてはダメだろうか。

「今回、同行される方々は、高位の貴族ばかりである。選ばれたメイドと侍従だけが直接対応する形となるから他のものは裏方に徹底するように。」

とノアから注意がある。

まだ侍従見習いの子供の自分が表に出るわけにはいかない。今回は、大恩ある旦那様にご迷惑にならないように裏方に徹していこうとギルバートは決心するのであった。



アーサーは、第二騎士団の一部を引き連れ、先だって宿泊予定の領主の館を一つひとつ訪れ、警護の体制やいざとう言うときに医療体制、衛生面について確認していく。

その上で少しでも護衛兵の規律が緩んでいるところに対しては、厳しく注文をつけて行く。万が一にも、襲撃などがあってはならないからである。医師の配置や襲撃の時のための治療についても確認していく。

そうして、ゼオンの街に到着した。

「オスカー、そういえば、ゼオンといえばエマの出身地がゼオンじゃなかったか?」


「若、そんなこと今だに覚えているんですか。そうでしたね。」


「時間があるときに、エマという娘のいるパン屋があるか聞いて見てくれ。できれば、会いたい。」


「このゼオンに幾つのパン屋があると思って・・・
まあ、わかりました。調べて見ますよ。」




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