上 下
40 / 136
アーサー3

麻薬の取り締まり

しおりを挟む
1年が経ち、アーサーは19歳となった。最年少で副団長となったアーサーだったが、評価は高い。兵士の指導やドルミカ国の動向を探るなど仕事は増える一方となっている。

シャーロットの情報は、もうほとんど得ることができなくなっていた。オスカーたちは、ゲルトランの悪事について探すが、なかなか尻尾をつかむことができない。

ただ、ウィリアムが、ケント領から解雇され、騎士団で、使用人として自分の世話を担当するようになったのはありがたかった。

「アーサー様、オスカー様、お茶をお持ちしました。」

「ウィリアムか。今日は、ミントティーか。」

「はい、市場で高質なミントのハーブを見つけたので買ってまいりました。ただ、ゼオンの品だそうで、乾燥したものにはなります。」

「ふふ、昔はよくシャーロットの摘んできたミントティーを冷たくして訓練の後に飲んだな。」

「はい、懐かしゅうございます。」
お茶を飲んでいると、ドアをノックされる。ウィリアムが確認して戻ってくると、

「第四騎士団団長のアスコット様がおいでです。」

アスコット殿がと不思議に思いながら
「お通ししてくれ」と返事をする。


「いよお、アーサー、元気そうだな」
30代のアスコットは、自分が子供の頃に剣を指導してもらった相手でもある。

「ご無沙汰しております。アスコット殿」

挨拶するが、
「俺とお前の仲で堅苦しい挨拶は抜きだ。今日は、相談があって来たんだ。しかし、いい香りだな。俺にも頼む。」

どかっとソファーに座るとウィリアムに向けて注文する。

頭を下げて嬉しそうにウィリアムが退席する。

「で、相談とは?」

「このところ、どうも、街に怪しい薬が出回っている。麻薬のようだ。しかも、どうもたちが悪いのが、貴族院のお子ちゃまがそれに関わっているという噂がある。」

「そんな。麻薬は禁止されており、医学部でのみ慎重に扱われているものですよ。貴族院のお子ちゃまが関われるようなもので無いはずです。」

「あくまでも噂だ。てっきり、医学部で横流ししているやつでもいるのかと思って探ったのだがそれらしいものは見つからない。」

「しかし、確かにその取り締まりは、第3、第4騎士団の仕事でしょう。私になんの関与が可能なんですか?」

「気になるのは、外国、ドルミカ国が関与しているのではないかということだ。この間、売買の現場を抑えようとして残念ながら逃げられたんだが、どうも、取引の時にいたやつの一人が外国語を喋りながら逃げたらしい。」

「ドルミカ国ですと!」

第二騎士団は、外国との紛争や外交が中心となる騎士団である。

「わかりました。お手伝いしましょう。ドルミカ国に派遣している内偵にも麻薬の取り扱いが増えてないか確認しましょう。」

「頼む。あとは、貴族学院でどうなっているのかだが。」

「失礼ですが、よろしければ私の弟に探らせましょう。貴族院の剣の訓練を今でも時折手伝っているようです。内偵のようなこともできると思います」

オスカーが提案する。
「それは助かるな。」

「とりあえずこの話は当然極秘で頼む。」

ドアがノックされ、ウィリアムの声が聞こえる。

「新しいミントティーをお持ちしました。」

そこでこの話は終了となったのだった。
しおりを挟む
感想 107

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜

トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦 ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが 突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして 子供の身代わりに車にはねられてしまう

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!

神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話! 『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください! 投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!

この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~

氷雨そら
恋愛
「ルシェ……。申し訳ないが、この結婚は、君から断ってもらえないか」 大好きな人に伝えられたのは、2度目の結婚お断り。この結婚は、資金援助を名目に爵位を持つディル様との結婚をお金で買った契約結婚だ。周囲にはそう思われている。 でも、人生をやり直している私は知っている。 ディル様は、この半年後、呪いで命を失ってしまう。そして私もそのあとすぐに……。 呪いを解除出来ればいい。 出来ないとしても、受けた呪いを私に移す方法を探すのだ。 やり直すことが許されたのなら、全ての時間を大好きなディル様のために使いたい。 この結婚は、半年だけの期間限定なのだから。 小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。

誕生日に捨てられた記憶喪失の伯爵令嬢は、辺境を守る騎士に拾われて最高の幸せを手に入れる

八重
恋愛
記憶を失ったことで令嬢としての生き方を忘れたリーズは17歳の誕生日に哀れにも父親に捨てられる。 獣も住む危険な辺境の地で、彼女はある騎士二コラに拾われた。 「では、私の妻になりませんか?」 突然の求婚に戸惑いつつも、頼る人がいなかったリーズは彼を頼ることにする。 そして、二コラと一緒に暮らすことになったリーズは彼の優しく誠実な人柄にどんどん惹かれていく。 一方、辺境を守る騎士を務める二コラにも実は秘密があって……! ※小説家になろう先行公開で他サイトにも公開中です ※序盤は一話一話が短めになっております

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

処理中です...