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アーサー3
帰還と祝勝会
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「失礼します。アーサー イーズス、ただいま帰還いたしました。」
「おお、アーサー
よく戻ってきた。しかも、ナーベラ国の山賊を一気に殲滅したとか。王都も特に北部の国民は、勝利を熱狂的に歓迎しているぞ。 明後日には祝勝パーティーが王宮で行われる」
父である騎士団長がアーサーの肩を軽く叩いて少し抱きしめたあと、椅子に座るように促す。
「大袈裟です。私は、やるべきことを全うしたまでのこと。山賊は、どうも武器だけが豊富でしたが、所詮は烏合の衆。きちんと軍隊が向き合えば問題なく鎮圧できました。ただ、気になったのは、どうも武器が豊富で、一部、ドルミカ王国で作られたものが混じっていたのではないかというのが気になります。」
足を組んで、頬杖をしながら、不快そうに確認する。
「つまり、ナーベラ国周辺の小競り合いはドルミカ王国が関与しているということか。」
「捕まえた男たちは、口を割りませんでしたが、その可能性はあると思われます。」
「ふむ、密偵を送って探らせていこう。どうもきな臭い。我が国は、気候も温暖で他国と比べて農業国として安定しているが、逆に他国から狙われやすい。」
王宮で行われた祝勝会には、主だった貴族も参加している。礼装の国王夫妻が、玉座に座っている。
騎士の礼をとっているアーサーに声をかける。
「アーサー イーズス卿、此度の活躍、誠に見事だった。褒賞として、今後第二騎士団の副団長に命ずる。この勲章を、そなたに授ける。今後も励めよ。」
「はっ。ありがたき幸せ。今後も、我が命を持ってお仕えいたします。」
アーサーが立ち上がり、勲章を授けられる。
ホールから大きな拍手で迎えられる。
続いてダンスパーティーが繰り広げられる。
「アーサー殿、こちらは当家の長女です。音楽が得意でしてな。」
「いやあ、アーサー殿、うちの娘は学院を今年優秀な成績で卒業しまして。」
などと色々な貴族が声をかけてくる。ニコリと笑いながらも、声をかけることはしないままにその場を辞する。
「アーサー、この度はおめでとう。」
「これは、デンツ公爵。ありがとうございます。」
「娘のマリアンヌだ。先ほどから娘からせがまれていてな。踊ってやってくれるか?」
「光栄でございます。では」
高位の貴族から言われて断ることはできない。貴族らしい微笑みを浮かべて踊る。
「アーサー様、噂どうりですのね。」
「…..」
「氷の騎士と呼ばれ、ほとんどダンスをされることもない。なんでも、婚約者の方がお亡くなりになったからと伺っています。ですが、ずいぶん時間が経っているとのことと。私と….」
「音楽が終わりました。ありがとうございました。失礼します。」
とその場を立ち去る。
「ははは。振られたか。」
「お父様!」と父を睨みつける。
「諦めなさい。未だ婚約者を忘れられない男と結婚しても幸せになれんぞ。お前を第一に大切にしてくれる男に嫁ぐべきだぞ。」
「本当に、氷の騎士の心を溶かすのはだれかとこの数年言われているのですが、溶けないままなのでしょうか….」
王宮の庭に出る。豪華なバラが咲き乱れ華やかな雰囲気が溢れている。ふと、ハーブや野の花が色とりどりに植えられていたシャーロットの庭を思い出し、
「ケントの庭とは大違いだ。」と呟く。
「若…」
「オスカーか。何だ。」
「いえ、そろそろお疲れになったかと思いまして。二次会ではないですが、軍の方で、兵たちが飲み会を行なっております。そちらに移動しますか?」
「そうだな。香水の匂いにもうんざりしていたところだ。抜け出そう」
「おお、アーサー
よく戻ってきた。しかも、ナーベラ国の山賊を一気に殲滅したとか。王都も特に北部の国民は、勝利を熱狂的に歓迎しているぞ。 明後日には祝勝パーティーが王宮で行われる」
父である騎士団長がアーサーの肩を軽く叩いて少し抱きしめたあと、椅子に座るように促す。
「大袈裟です。私は、やるべきことを全うしたまでのこと。山賊は、どうも武器だけが豊富でしたが、所詮は烏合の衆。きちんと軍隊が向き合えば問題なく鎮圧できました。ただ、気になったのは、どうも武器が豊富で、一部、ドルミカ王国で作られたものが混じっていたのではないかというのが気になります。」
足を組んで、頬杖をしながら、不快そうに確認する。
「つまり、ナーベラ国周辺の小競り合いはドルミカ王国が関与しているということか。」
「捕まえた男たちは、口を割りませんでしたが、その可能性はあると思われます。」
「ふむ、密偵を送って探らせていこう。どうもきな臭い。我が国は、気候も温暖で他国と比べて農業国として安定しているが、逆に他国から狙われやすい。」
王宮で行われた祝勝会には、主だった貴族も参加している。礼装の国王夫妻が、玉座に座っている。
騎士の礼をとっているアーサーに声をかける。
「アーサー イーズス卿、此度の活躍、誠に見事だった。褒賞として、今後第二騎士団の副団長に命ずる。この勲章を、そなたに授ける。今後も励めよ。」
「はっ。ありがたき幸せ。今後も、我が命を持ってお仕えいたします。」
アーサーが立ち上がり、勲章を授けられる。
ホールから大きな拍手で迎えられる。
続いてダンスパーティーが繰り広げられる。
「アーサー殿、こちらは当家の長女です。音楽が得意でしてな。」
「いやあ、アーサー殿、うちの娘は学院を今年優秀な成績で卒業しまして。」
などと色々な貴族が声をかけてくる。ニコリと笑いながらも、声をかけることはしないままにその場を辞する。
「アーサー、この度はおめでとう。」
「これは、デンツ公爵。ありがとうございます。」
「娘のマリアンヌだ。先ほどから娘からせがまれていてな。踊ってやってくれるか?」
「光栄でございます。では」
高位の貴族から言われて断ることはできない。貴族らしい微笑みを浮かべて踊る。
「アーサー様、噂どうりですのね。」
「…..」
「氷の騎士と呼ばれ、ほとんどダンスをされることもない。なんでも、婚約者の方がお亡くなりになったからと伺っています。ですが、ずいぶん時間が経っているとのことと。私と….」
「音楽が終わりました。ありがとうございました。失礼します。」
とその場を立ち去る。
「ははは。振られたか。」
「お父様!」と父を睨みつける。
「諦めなさい。未だ婚約者を忘れられない男と結婚しても幸せになれんぞ。お前を第一に大切にしてくれる男に嫁ぐべきだぞ。」
「本当に、氷の騎士の心を溶かすのはだれかとこの数年言われているのですが、溶けないままなのでしょうか….」
王宮の庭に出る。豪華なバラが咲き乱れ華やかな雰囲気が溢れている。ふと、ハーブや野の花が色とりどりに植えられていたシャーロットの庭を思い出し、
「ケントの庭とは大違いだ。」と呟く。
「若…」
「オスカーか。何だ。」
「いえ、そろそろお疲れになったかと思いまして。二次会ではないですが、軍の方で、兵たちが飲み会を行なっております。そちらに移動しますか?」
「そうだな。香水の匂いにもうんざりしていたところだ。抜け出そう」
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