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ケント領領主の館
ケント領 領主の館
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領主が交代してから領主が領地にくることはほとんどなくなっていた。そうなると余分な人をおいておくことはできず、最低限の人員だけとなり、ますます屋敷全体が寂れてくる。庭師もたった一人になってしまっている。
ウイリアムは、領主代々の墓に花をそなえていた。
「ロバート様、申し訳ございません。もうあの事故から3年になるのですね。もう、私がこの屋敷を守ることは難しい状態です。お許しください。」
遠くから馬車の音が聞こえる。何も連絡はなかったが、旦那様がお戻りか。急ぎ玄関に向かう。
裏庭を経由して屋敷に入り、玄関を開けるとちょうど子爵が馬車から降りてくるところだった。
「旦那様、こちらにいらっしゃるとは存じ上げず。申し訳ございません。」
「おお、ウイリアムか、何、きにすることはない。今日は、お前に申し伝えることがありやってきたのだ。」
「私目にでございますか。」
「そうだ。お前はクビだ。ちゃんと領地の運営もできない役たたずは不要だからな。今日から、ここにいる者たちが働くことになる。今までの給金は払わんぞ。お前たちのせいでわしの収入が下がったのだからな」
10名ほどのマントを被った者たちが立っている。
どうも、雰囲気が良くない。ゴロツキのようにも見える。万が一にも襲われば殺されるのではという恐怖があった。
「わかりました。では、今から残った使用人7名とともに出て行くようにいたします。」
「いや、ただし、庭師だけ置いていけ。あいつはこれからも必要だからな。」
「ハンス爺をですが。しかし。」
ギロリと睨まれて何も言えない。
「承りました。」
使用人たちにすぐに荷物を持って出て行くように伝える。
「ウィリアムさん、そんなことを言って給金ももらえないまま出ていけと言われても納得できませんよ。」
「しっ!命が大事ならここは黙って出て行くんだ。どうも旦那様が連れてきた人たちはまともに見えない。」
震えながら、ハンス爺が
「それなら、わしも連れてってくだされ。」
「ハンス爺、すまないが旦那様が残れとおっしゃたんだ。ここで言うことを聞かなければかえって危ない。」
「なんてこった。シャーロット様が亡くなられた時にわしもやめておけばよかった。」
とグズグズ泣いている。
「では、旦那様、失礼いたします。」
最小限の荷物を持って7人全員で出て行く。当然、歩いて行くことになるので、次の街まで急がなければ夜になってしまう。
「ああ、息災でな。」
とニヤリと笑った子爵にゾッとしながら屋敷をあとにしたのだった。
「おい、旦那様よー。あいつら殺さなくて良いのかよ。」
「ふん、下手に殺して親戚が連絡がないと言ってどこかに届けを出したりすると厄介だからな。特に、あの執事はイーズス家とも仲がよかったからな。下手に連絡が取れなくなるとイーズス家が騒ぎ立ててくるかもしれん。」
「チエッ!あの騎士団とあの小僧か。あん時偉そうに俺に命令しやがって。そのうち、ぶっ殺してやる。」
マントを取ったのは、兵士のジョンであった。
「そいつは、お前の好きにすると良い。さて、屋敷の全員を追い出したのは、この庭に麻薬を植えるためだ。ここを隠れた麻薬の産地にしてがっぽり
儲けるのだからな。わははは。」
まずは、ハンス爺にいうことを聞かせなくてはな。
男たちの高笑いが谷に響くのであった。
ウイリアムは、領主代々の墓に花をそなえていた。
「ロバート様、申し訳ございません。もうあの事故から3年になるのですね。もう、私がこの屋敷を守ることは難しい状態です。お許しください。」
遠くから馬車の音が聞こえる。何も連絡はなかったが、旦那様がお戻りか。急ぎ玄関に向かう。
裏庭を経由して屋敷に入り、玄関を開けるとちょうど子爵が馬車から降りてくるところだった。
「旦那様、こちらにいらっしゃるとは存じ上げず。申し訳ございません。」
「おお、ウイリアムか、何、きにすることはない。今日は、お前に申し伝えることがありやってきたのだ。」
「私目にでございますか。」
「そうだ。お前はクビだ。ちゃんと領地の運営もできない役たたずは不要だからな。今日から、ここにいる者たちが働くことになる。今までの給金は払わんぞ。お前たちのせいでわしの収入が下がったのだからな」
10名ほどのマントを被った者たちが立っている。
どうも、雰囲気が良くない。ゴロツキのようにも見える。万が一にも襲われば殺されるのではという恐怖があった。
「わかりました。では、今から残った使用人7名とともに出て行くようにいたします。」
「いや、ただし、庭師だけ置いていけ。あいつはこれからも必要だからな。」
「ハンス爺をですが。しかし。」
ギロリと睨まれて何も言えない。
「承りました。」
使用人たちにすぐに荷物を持って出て行くように伝える。
「ウィリアムさん、そんなことを言って給金ももらえないまま出ていけと言われても納得できませんよ。」
「しっ!命が大事ならここは黙って出て行くんだ。どうも旦那様が連れてきた人たちはまともに見えない。」
震えながら、ハンス爺が
「それなら、わしも連れてってくだされ。」
「ハンス爺、すまないが旦那様が残れとおっしゃたんだ。ここで言うことを聞かなければかえって危ない。」
「なんてこった。シャーロット様が亡くなられた時にわしもやめておけばよかった。」
とグズグズ泣いている。
「では、旦那様、失礼いたします。」
最小限の荷物を持って7人全員で出て行く。当然、歩いて行くことになるので、次の街まで急がなければ夜になってしまう。
「ああ、息災でな。」
とニヤリと笑った子爵にゾッとしながら屋敷をあとにしたのだった。
「おい、旦那様よー。あいつら殺さなくて良いのかよ。」
「ふん、下手に殺して親戚が連絡がないと言ってどこかに届けを出したりすると厄介だからな。特に、あの執事はイーズス家とも仲がよかったからな。下手に連絡が取れなくなるとイーズス家が騒ぎ立ててくるかもしれん。」
「チエッ!あの騎士団とあの小僧か。あん時偉そうに俺に命令しやがって。そのうち、ぶっ殺してやる。」
マントを取ったのは、兵士のジョンであった。
「そいつは、お前の好きにすると良い。さて、屋敷の全員を追い出したのは、この庭に麻薬を植えるためだ。ここを隠れた麻薬の産地にしてがっぽり
儲けるのだからな。わははは。」
まずは、ハンス爺にいうことを聞かせなくてはな。
男たちの高笑いが谷に響くのであった。
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