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シャーロット2
ゼオンでの生活 3年後 シャーロット13歳
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1年が経とうとし春を迎える。王国の南に位置するゼオンは春になると色とりどりのオレンジやアーモンドの花が咲き始める。執務室で仕事をしていると、ノックののち、ドアが開き
「失礼します。旦那様、お茶をお持ちしました。」
と声をかけられる。
「エミリーか。きていたのだな。」
「はい、ノア様からお茶をお持ちするように言付かりましたので。」
「それは本来のお前の仕事ではなかろうに。ノアのやつ、なんでも押しつてくるな。」
クスッと笑いながら、
「ちょうど、私が旦那様とお話ししたいとお願いしたからでございます。」
とお茶をサーブしてくれる。
このお茶のサーブの仕方も貴婦人のようだと心で思いながら、口をつける。
「ふむ、うまいな。で、話とは?」
「はい、よろしければハーブガーデンにおいでいただければと思いまして。」
「ほお、完成したのか?」
「まだ、完成とは言いにくいのです。ハーブガーデンは四季の移ろいで変わりますので。ですが、この春から秋までが一番美しく収穫するものも多い時期となりますので。」
「よかろう。案内しろ。」
エミリーは、比較的緩やかな斜面一帯をハーブガーデンとするように命じられていた。
観賞だけでなく、収穫としても可能なスペースだ。
エミリーはケント子爵の時のハーブガーデンの2倍の広さに増やして庭を作ったのだった。
「なんと、これは....」
侯爵が驚く。
驚いたのは、斜面が五色の巨大なカーペットが敷かれているように見えるのだ。やや紫色に近いピンクのカーペット、グリーンのカーペット、白いカーペット、黄色いカーペット、そしてまだはっきりしないが青みを帯びた緑のカーペットである。
「うふふ、見た目が楽しいようにと色目で分けました。紫に近いピンクはチューリップとサフラン、そしてゼラニウムにオレガノ、グリーンはミントなどのハーブで本来私たちが葉を使うもの、そして白いカーペットはカモミールとマーガレット、黄色いカーペットは、マリーゴールド、咲いているものは黄色いタイプのカモミールやセントジョーンズワート、そしてまだ青みを帯びた緑がこれから徐々に紫になるラベンダーです。」
「これはすごい。驚いた。」
「今はここのスペースだけですが、ゼオンの領地の畑でこのように色とりどりのハーブ園を作ると、近隣からもきっと見物にくる人たちがくるのではないでしょうか?そうすると、ハーブの販売だけでなく、観光資源としても活かせますわ。」
この娘はたった13歳でこれを思いついたというのか。
エミリーは前世の北海道をイメージしながらこのハーブ園を作り出したのだがそんなことはとても言えない。
「よくやった。エミリー。お前に任せて正解だった。」
「とんでもございません。私は肥料やハーブの育て方のアドバイスをしただけで、ほとんどは、庭師のレッドさんとその部下の方々が動いてくださったのです。私だけではとてもこの広大な敷地を耕すことも植えることもできませんでしたから。」
「レッド!」
控えていた庭師たちに声をかける。
「よくやった。こんなに感動したのは久しぶりだ。褒美をノアから渡すようにしよう。これからも励めよ。」
普段、侯爵様からお声をかけてもらうなんてことは過去一度もなかった庭師は
感動で震えている。
「あ、ありがとうごぜえます。これからもエミリー様のいうことに従って精進しますで。」
「ノア」
「はい、旦那様。」
「せっかくの素晴らしい風景だ。近隣の貴族を招いてここで久しぶりにパーティーをしよう。良い宣伝になるぞ。」
「畏まりました。」
「エミリー、よくやった。」
「ありがとうございます。では、御前を失礼いたします。」
見事なカーテシーをしてエミリーはその場を退いたのだった。
その夜。
寝室で、寝る準備をしている時、
「ノア、エミリーは何者だ。あれは、どう見ても貴族のカーテシーだぞ。」
「はい、私もそう思いました。一度もう少し調べても良いかもしれません。」
「ふむ、今年の秋、王都に出向く時に少し調べるか。そうは言っても情報は少ないがな。ケントの出身、13歳、弟は10歳、髪の毛は茶色。父親がロバートか。」
「御意。」
「失礼します。旦那様、お茶をお持ちしました。」
と声をかけられる。
「エミリーか。きていたのだな。」
「はい、ノア様からお茶をお持ちするように言付かりましたので。」
「それは本来のお前の仕事ではなかろうに。ノアのやつ、なんでも押しつてくるな。」
クスッと笑いながら、
「ちょうど、私が旦那様とお話ししたいとお願いしたからでございます。」
とお茶をサーブしてくれる。
このお茶のサーブの仕方も貴婦人のようだと心で思いながら、口をつける。
「ふむ、うまいな。で、話とは?」
「はい、よろしければハーブガーデンにおいでいただければと思いまして。」
「ほお、完成したのか?」
「まだ、完成とは言いにくいのです。ハーブガーデンは四季の移ろいで変わりますので。ですが、この春から秋までが一番美しく収穫するものも多い時期となりますので。」
「よかろう。案内しろ。」
エミリーは、比較的緩やかな斜面一帯をハーブガーデンとするように命じられていた。
観賞だけでなく、収穫としても可能なスペースだ。
エミリーはケント子爵の時のハーブガーデンの2倍の広さに増やして庭を作ったのだった。
「なんと、これは....」
侯爵が驚く。
驚いたのは、斜面が五色の巨大なカーペットが敷かれているように見えるのだ。やや紫色に近いピンクのカーペット、グリーンのカーペット、白いカーペット、黄色いカーペット、そしてまだはっきりしないが青みを帯びた緑のカーペットである。
「うふふ、見た目が楽しいようにと色目で分けました。紫に近いピンクはチューリップとサフラン、そしてゼラニウムにオレガノ、グリーンはミントなどのハーブで本来私たちが葉を使うもの、そして白いカーペットはカモミールとマーガレット、黄色いカーペットは、マリーゴールド、咲いているものは黄色いタイプのカモミールやセントジョーンズワート、そしてまだ青みを帯びた緑がこれから徐々に紫になるラベンダーです。」
「これはすごい。驚いた。」
「今はここのスペースだけですが、ゼオンの領地の畑でこのように色とりどりのハーブ園を作ると、近隣からもきっと見物にくる人たちがくるのではないでしょうか?そうすると、ハーブの販売だけでなく、観光資源としても活かせますわ。」
この娘はたった13歳でこれを思いついたというのか。
エミリーは前世の北海道をイメージしながらこのハーブ園を作り出したのだがそんなことはとても言えない。
「よくやった。エミリー。お前に任せて正解だった。」
「とんでもございません。私は肥料やハーブの育て方のアドバイスをしただけで、ほとんどは、庭師のレッドさんとその部下の方々が動いてくださったのです。私だけではとてもこの広大な敷地を耕すことも植えることもできませんでしたから。」
「レッド!」
控えていた庭師たちに声をかける。
「よくやった。こんなに感動したのは久しぶりだ。褒美をノアから渡すようにしよう。これからも励めよ。」
普段、侯爵様からお声をかけてもらうなんてことは過去一度もなかった庭師は
感動で震えている。
「あ、ありがとうごぜえます。これからもエミリー様のいうことに従って精進しますで。」
「ノア」
「はい、旦那様。」
「せっかくの素晴らしい風景だ。近隣の貴族を招いてここで久しぶりにパーティーをしよう。良い宣伝になるぞ。」
「畏まりました。」
「エミリー、よくやった。」
「ありがとうございます。では、御前を失礼いたします。」
見事なカーテシーをしてエミリーはその場を退いたのだった。
その夜。
寝室で、寝る準備をしている時、
「ノア、エミリーは何者だ。あれは、どう見ても貴族のカーテシーだぞ。」
「はい、私もそう思いました。一度もう少し調べても良いかもしれません。」
「ふむ、今年の秋、王都に出向く時に少し調べるか。そうは言っても情報は少ないがな。ケントの出身、13歳、弟は10歳、髪の毛は茶色。父親がロバートか。」
「御意。」
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