20 / 136
王都にて1
ケント子爵タウンハウス
しおりを挟む
「おい、ウイリアム、この手紙はなんだ!私は税金をあげるように命令したはずだ!なんだ、この嘆願書は!」
「旦那様、2年前に税率の引き上げをしたばかりで、今度は土地の使用料を追加するなど、領民はこのままではやっていけません。領民を代表してお願いに上がりました」
とウィリアムが腰を深く曲げてお願いする。
「何を言っている。もともとハーブの値段はかなり高額で取引できるんだからな。十分、やっていけるはずだ。」
「そうは言っても使用料が高すぎます。それに、この2年で、ハーブの質が下がって来たと取引先からの値段も下げられております。」
ウィリアムは訴える。
「何を言っている、庭師たちがきちんと管理しないからだ。お前たちの管理が悪いのを偉そうにいうな!」
「そう、おっしゃっても、給金が十分払っていただけないと庭師も何人もが辞めていきました。今の人数では十分ハーブを管理することすらできないのです。」
「えーい、うるさい、うるさい。そんな文句をつけるなら出ていけ!使用人ごときいくらでも雇えられるんだ!」
「全く、無能すぎてどうしようもないわね。あなた、そろそろヘンドリックを連れてパーティーにいかなくては。将来の子爵の婚約者を探さなくてはね」
「父上、母上、早く参りましょう。」
キャロラインとヘンドリックが声をかけ、玄関を出て行く。
ウィリアムは、駄目だったかとため息をつきながら3人の後ろ姿を見送る。
もう、子爵家は駄目かもしれない。
旦那様、申し訳ありません。このままではお守りできないかもしれません。シャーロット様、ギルバート様....涙が出てくる。
ふと見ると、馬車に3人が乗り込もうとしているところに、一人の男がやって来て縋ってくる。それを旦那様が足蹴にしている。
なんなんだ。
馬車がさってしまった後、フラフラしながら立ち去ろうとした男に声をかける。
「あのう、旦那様にどう言ったご用件でしたでしょうか?」
元々はきちんとしていたようだが、酒の匂いをさせ、よごれた背広を着た男は、
「あんたはここの使用人か! なあ、旦那に頼んでくれよ。俺に金をもう少し融通してくれって」
と縋ってくる。
「なんで旦那様がお前に金を?」
「俺は、封筒と便箋、そして蜜蝋印を押したものを準備するように頼まれただけなんだよ。それを渡しただけだ。あとは何に使ったかまでは知らない。」
「一体、封筒と蜜蝋印、どこのものを?」
「言えねえよ。俺はフィルっていうんだ。俺は、ガラクタ市場のジクルー爺さんの宿にいるからな。金を持って来てくれと伝えといてくれよ。」
ウィリアムは悩んだ。そもそも封筒も便箋もそれぞれの家のもので勝手に持ち出すなんてことはあり得ない。悪用できるからだ。それを旦那様が、頼んだと。
何の為に?
はっと気づく。そもそもランバート商会から手紙が。それを見て慌てた旦那様は雨の中、出ていかれた。あれさえなければ慎重な旦那様が出かけることはなかったはず。いや、しかしあれは事故だぞ。
しかし、気になる。ばかなことを。自分の仕えている旦那様を疑うのか?しかし、いぜれにせよ、お金を使ってどこかわからないが他家の封筒を手に入れたことは間違いない事実だ。
悩んだ末、ウィリアムはとある場所に向かった。
「旦那様、2年前に税率の引き上げをしたばかりで、今度は土地の使用料を追加するなど、領民はこのままではやっていけません。領民を代表してお願いに上がりました」
とウィリアムが腰を深く曲げてお願いする。
「何を言っている。もともとハーブの値段はかなり高額で取引できるんだからな。十分、やっていけるはずだ。」
「そうは言っても使用料が高すぎます。それに、この2年で、ハーブの質が下がって来たと取引先からの値段も下げられております。」
ウィリアムは訴える。
「何を言っている、庭師たちがきちんと管理しないからだ。お前たちの管理が悪いのを偉そうにいうな!」
「そう、おっしゃっても、給金が十分払っていただけないと庭師も何人もが辞めていきました。今の人数では十分ハーブを管理することすらできないのです。」
「えーい、うるさい、うるさい。そんな文句をつけるなら出ていけ!使用人ごときいくらでも雇えられるんだ!」
「全く、無能すぎてどうしようもないわね。あなた、そろそろヘンドリックを連れてパーティーにいかなくては。将来の子爵の婚約者を探さなくてはね」
「父上、母上、早く参りましょう。」
キャロラインとヘンドリックが声をかけ、玄関を出て行く。
ウィリアムは、駄目だったかとため息をつきながら3人の後ろ姿を見送る。
もう、子爵家は駄目かもしれない。
旦那様、申し訳ありません。このままではお守りできないかもしれません。シャーロット様、ギルバート様....涙が出てくる。
ふと見ると、馬車に3人が乗り込もうとしているところに、一人の男がやって来て縋ってくる。それを旦那様が足蹴にしている。
なんなんだ。
馬車がさってしまった後、フラフラしながら立ち去ろうとした男に声をかける。
「あのう、旦那様にどう言ったご用件でしたでしょうか?」
元々はきちんとしていたようだが、酒の匂いをさせ、よごれた背広を着た男は、
「あんたはここの使用人か! なあ、旦那に頼んでくれよ。俺に金をもう少し融通してくれって」
と縋ってくる。
「なんで旦那様がお前に金を?」
「俺は、封筒と便箋、そして蜜蝋印を押したものを準備するように頼まれただけなんだよ。それを渡しただけだ。あとは何に使ったかまでは知らない。」
「一体、封筒と蜜蝋印、どこのものを?」
「言えねえよ。俺はフィルっていうんだ。俺は、ガラクタ市場のジクルー爺さんの宿にいるからな。金を持って来てくれと伝えといてくれよ。」
ウィリアムは悩んだ。そもそも封筒も便箋もそれぞれの家のもので勝手に持ち出すなんてことはあり得ない。悪用できるからだ。それを旦那様が、頼んだと。
何の為に?
はっと気づく。そもそもランバート商会から手紙が。それを見て慌てた旦那様は雨の中、出ていかれた。あれさえなければ慎重な旦那様が出かけることはなかったはず。いや、しかしあれは事故だぞ。
しかし、気になる。ばかなことを。自分の仕えている旦那様を疑うのか?しかし、いぜれにせよ、お金を使ってどこかわからないが他家の封筒を手に入れたことは間違いない事実だ。
悩んだ末、ウィリアムはとある場所に向かった。
12
お気に入りに追加
3,188
あなたにおすすめの小説
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)
水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――
乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】!
★★
乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ!
★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。
チートスキルを貰って転生したけどこんな状況は望んでない
カナデ
ファンタジー
大事故に巻き込まれ、死んだな、と思った時には真っ白な空間にいた佐藤乃蒼(のあ)、普通のOL27歳は、「これから異世界へ転生して貰いますーー!」と言われた。
一つだけ能力をくれるという言葉に、せっかくだから、と流行りの小説を思い出しつつ、どんなチート能力を貰おうか、とドキドキしながら考えていた。
そう、考えていただけで能力を決定したつもりは無かったのに、気づいた時には異世界で子供に転生しており、そうして両親は襲撃されただろう荷馬車の傍で、自分を守るかのように亡くなっていた。
ーーーこんなつもりじゃなかった。なんで、どうしてこんなことに!!
その両親の死は、もしかしたら転生の時に考えていたことが原因かもしれなくてーーーー。
自分を転生させた神に何度も繰り返し問いかけても、嘆いても自分の状況は変わることはなく。
彼女が手にしたチート能力はーー中途半端な通販スキル。これからどう生きたらいいのだろう?
ちょっと最初は暗めで、ちょっとシリアス風味(はあまりなくなります)な異世界転生のお話となります。
(R15 は残酷描写です。戦闘シーンはそれ程ありませんが流血、人の死がでますので苦手な方は自己責任でお願いします)
どんどんのんびりほのぼのな感じになって行きます。(思い出したようにシリアスさんが出たり)
チート能力?はありますが、無双ものではありませんので、ご了承ください。
今回はいつもとはちょっと違った風味の話となります。
ストックがいつもより多めにありますので、毎日更新予定です。
力尽きたらのんびり更新となりますが、お付き合いいただけたらうれしいです。
5/2 HOT女性12位になってました!ありがとうございます!
5/3 HOT女性8位(午前9時)表紙入りしてました!ありがとうございます!
5/3 HOT女性4位(午後9時)まで上がりました!ありがとうございます<(_ _)>
5/4 HOT女性2位に起きたらなってました!!ありがとうございます!!頑張ります!
5/5 HOT女性1位に!(12時)寝ようと思ってみたら驚きました!ありがとうございます!!
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~
ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ
以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ
唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活
かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる