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後章
魔法と懸念
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~魔法と懸念~
《――魔法?何それ?…へえ、あらかじめ決めた特定の日の深夜二時から四時に多くを催眠術を操れる一度きりの魔法?変なの!え?正確には、その時間に体から出るフェロモンみたいなものを操るから、稀に効果がでないこともあるとかないとか…わあ、あいま~い!
――でも、すごいね。
……私はかつて弓子さんに魔法を教わった。
なんでも、卯月だって知らない、一度きりの魔法らしい。しかも卯月の知る魔法と相性良くて、協力して暮らすの皆を催眠・洗脳できるって聞いて、私はすごく嬉しかった。兄と協力って、実は私好きなんだ。
…クラスの皆が嫌いな訳じゃない、むしろ好きだ。だからこそ弓子さんはクラスの皆はある魔物に取りつかれていて、それをこっそり取り除いてくれるというのだから、私は友達に一時的な洗脳をかけることを厭わなかった。後遺症も少ないって聞いたし、魔物より断然ましだ。
そしてそれを話せば卯月も弓子さんと会って協力してくれて、私はあの日の深夜になんとか皆を外へ連れ出し、一時的に拘束することに成功したんだ。
何故、私はあれほどに弓子さんを信じていたんだろう。
魔物なんて、どうして信じたんだろう。
魔法は夢の中だけだって、どうしてわかんなかったんだろう。
――私、文月は弓子さんが好きだった。
恋愛的なのじゃないよ、家族みたいなんだ。引き取ってくれたおじさんは…確か、今かよう高校の校長だっけな、その人は弓子さんには会ってほしくなさそうだったけど、それでも私は会い続けた。卯月にも勿論内緒で。
中学の頃、卯月を苦しめた元凶がこの人と知っても尚、私は恨めなかった。
思えば、そこからもう私はおかしかった。
きっと弓子さんお得意の、洗脳にかかってたんだな。
だって、そうでなければ。
私は…お母さんを、忘れてた意味がわからなくなる。
記憶にはあった。今も意識不明の母がいることも、その原因が弓子さんであることも。けれど意識できなかった。本当の意味で忘れてた。
それらが当然と思っていて、むしろどこかで、弓子さんが母のように感じていたんだ。だから本当のお母さんのことはどうだって良いって思ってた。弓子さんと出会ってから常に意識の外にあった。簡単に洗脳された。
これは言い訳にしかならないけど…
卯月はなんでも抱え込んで、一人でどっか行っちゃうような人だった。だから、背負っちゃうじゃん。お母さんを思い出せば、私は苦しくて、しんどくて溜まらなくなる。それをみて、卯月は私をただ支えてくれる。
けど卯月は同時にもっと苦しんじゃうじゃんか!って、心で気づいてたから、私はお母さんを忘れて元気な姿で卯月と一緒にいたかったんだ。
だから余計簡単に洗脳されたんだと思う。
何て、馬鹿な。
そのせいで皆苦しめて…
私は……
病院で全てを聞いた後、私は涙ながらにアリスに伝えた。
「あのね、アリス…皆を洗脳しようって言い出したの、私なの。弓子さんに卯月も心理学を校長から学んでるって話をしたのも私だし、それで私がやろうとした洗脳を卯月にも持ちかけてって言われて、卯月にも無理矢理協力させたの。だから悪いのは私なの。どうかお兄ちゃんは許してやってくれないかな…」
「…………」
やっぱり無理か。そりゃそうだ、正ちゃん達だっていなくなって、皆も入院させた私が言える立場じゃない。
「ちょっと待て、誤解を招く言い方はするな」
卯月が私を諌める。
「今回の件、確かに文月から聞いて、そっから俺は弓子と会った。けど俺は文月と違ってその時弓子に洗脳されてなかったし、何より一番お前らを傷つけたのは俺だ。文月はあくまで弓子に俺を引き込むよう利用されただけにすぎない。そしてそれを俺は洗脳されていないにも関わらず、受け入れた。」
「違う!卯月は私の事で脅されてて…!」
私も確かに、卯月を引き込んでからはたまに弓子さんに卯月を使った脅しを少し入れられることはあったけど、そんなのは軽いもので、きっと卯月は私の何倍も恐怖で支配されていたんだ。
「…………」
アリスは黙ったままだ。それでも私は必死で話続けた。
「卯月は恐怖で支配されてた!私という恐怖で!簡単に洗脳される私なんかより、よっぽど辛かった!」
「辛いとか関係ないだろ!それに俺は…お前らを心理学の実験台にした!それに…そうだ、アリス、お前だって俺が洗脳した!悠太を騙して、お前を…」
違うよ、違う!卯月は、卯月は悪くない!悪いのは全部私なのに…!!
「あーもう二人うるさい!」
アリスは人差し指を口に当て、静にしろポーズを取る。確かにここは、静かで白い病室だ。…少しヒートアップしてた。
「じゃあもう二人とも悪いで良いじゃん!」
「「良くない!」」
久しぶりに、声が重なる。
アリスはその様子に少し笑顔を見せてから、それから私のベッドの側の背もたれのない小さな椅子に腰かけた。
「二人とも、優しかった。互いを思った。その結果がこれなんでしょ?ならまた互いを一方的に守ろうとしなくて良いんじゃない。」
「一方…」
「的…?」
どういうことだろう。
アリスは優しく笑って諭す。
「二人が互いに互いを思ってた。なら自分を下げてまでお互いを守れば、悪循環だよってこと。自分を下げるのは、相手にとっては良い気しないもん。心配しなくても、皆は二人に罰を与える。」
「罰…?」
「私は、今部屋の外の桃花達のような、悠太を除いた入院中のクラスメイトにこの事件を隠そうと思ってる。」
「へ?」
私は驚く。てっきり、皆の前で公表して、痛め付けるのが罰だと思ってたから。
「辛いよ、二人は。だって二人は覚悟がある。謝りたいって思ってる。それを二人は、皆に永遠に隠し通さなきゃ行けない。」
「それが、罰か?」
……確かに、辛い。
友達が何も知らずにいつもの通り接してきたなら、それはとても苦しい。
だけど、そっか。
私達の洗脳で、皆記憶が曖昧だ。これが得策なんだ。
でも…
「だけど、ひとつ言っておく。けして私達皆は二人を恨まない。怒らない。」
アリスははっきりそう言った。
「え…でも…」
なんでそんな優しい言葉を掛けるの。
それじゃ、罰にならないよ。
それに、そもそも皆って、正ちゃん達が消えて…
「私にはわかる。正達は絶対帰って来る。その後正達には全て話すけどね、誰も怒らない。強いて言えば…正と光辺りはきっと、卯月には文化祭でメイド、文月には女子会デートの約束でも取りつけるんじゃない?」
「はあ…言われそうだな」
アリスは少し冗談を交え、真に受けた卯月は嫌そうな顔をする。
「そうね、あとは…罰と言われれば総は卯月に好物を要求するでしょうし、透は文月に女子の好きなものを聞くわね。無自覚に空にアピールしたくなる頃でしょうし。」
そう言ってアリスは姉御の目をする。すごいな、アリスは…
「ってそうじゃなくて、皆そんな簡単に…」
「許す。」
即答。
「どうしてっ…」
「どうしてって、もし仮に私が悠太が殺され掛けてるから皆に協力を仰いだとして、皆は命懸けで悠太を助けるでしょ?そう言う理屈とかわりないよ。」
「ええ…」
そんなものだろうか。
私が悩んでいると、アリスはしびれを切らして立ち上がった。
「で、皆に隠し通すってやつ、二人は受け入れてくれる?というかお願いします!」
アリスは頭を下げる。
なんで、なんで。
アリスも、皆に嘘をつき続けないといけなくなるのに。
それでも、良いの?
私は簡単に騙されたのに。
アリスは…
「…わかった。アリス。」
これは戻れない私の意思だ。せめて、皆が何事もなくこれから過ごせるように…
そう言うとアリスはより一層笑顔になって、それからこういった。
「早々、二人のお母さんの入院先、ここなんだってね。会いに行けるらしいから、二人で行っておいで。
二人だって頑張ったんだ、会いに行き終わったら、また私達のもとに、帰ってきてね。」
黄色というより、金色の艶やかな髪がさらさら揺れる。長いのに、毛先まで綺麗だ。すごく手入れしてるんだろうな。そんなことを考えた。
同時に、アリスの優しさに、私は涙が止まらなかった。
色々やんなけりゃいけないことはある。けど…
(今は、久しぶりに、卯月を抱き締めたい、抱き締められたい。)
もう高校生なんだけどね。
それでも私は…
全てが終わった今、昔みたいにお兄ちゃんの側にいたいんだ。》
俺、総は花火に混じった悲鳴と唸り声を聞いた。皆して上を見上げていたから、人混みから抜け出すのは大変だった。
それでも抜けて、策に囲まれた村の入り口を少し出る。辺りはすっかり深淵の森で、夜空と魔法の花火以外の光りはない。
そういえば、異世界らしく手から魔法の塊みたいなものが出せたよな、俺。
右手の指を少し曲げて力を加えると、トライアングルで赤くて、光った何かが現われる。
何かわからないけど、何となく俺にとって良い魔法な気がするんだ。
唸り声のした音の方を見据える。
「勝手に行くのは危険だが…」
耳に聞こえた声は、どちらも悲しそうな気がした。何となくだけど。
けれどその後はなんの声もしなくて、仕方がないから俺は村に戻った。
「おお、どうしたんだい?」
村長さんだ。俺は念のため声のことを話そうとすると、そこで村長さんは目を見開く。
――何だ?
俺は首をかしげると、村長さんはもっと驚いて声を出す。
「お前さん、それ…もしや、魔力の塊…?」
このトライアングルのことか。ずいぶんとそのままな名前で、わかりやすいんだな。
「これがどうかした…しましたか?」
「なんで形が、光があるんだ!?」
「え!?」
「おまけに魔力まで溢れている…ソウ、君は一体…」
…………?
なんの話だろう?
「……ってなことがあって、聞いたんだ。どうやら魔力の塊は、一番簡単な魔法この事らしい。基本は茶色い丸が出来るらしいんだけど、魔法の属性が特別だと色が変わって、質が良ければ形が変わって、量が多かったら光って、もっと多かったら魔力が溢れるそうなんだ」
丁度魔法花火の催しが終わったタイミングで、俺は村長さんに聞いたことを正達に話す。
それを聞いた正は無邪気な子供のように目を輝かせた。曰く、俺がよくする顔らしいのだが、俺は未だにピンと来ちゃいない。そんな自ら可愛らしい顔はしないはずだ。
「へええ!じゃあじゃあ、せーじゅはもう既に魔法が使えたってことだね!?」
「ああ!投げると属性に合った単純魔法が使えるんだって!」
因みにさっき作った魔力の塊は炎だった。俺は炎属性ってことになる。
初めて作った時の塊はいつの間にか消えていたが、それはどうやら空気中に溶けたらしい。余程魔力が空気中にない限りはモンスターは出来ないし、むしろ自然にもいいらしいから、今のところ問題は特にない!
「だからさ、ほら、トールや光も試してみてよ!」
歌った舞台のそばで、俺はトールと光を交互に見つめる。トールは自身なさげな顔をしたが、一方で光は既に右手に力を込めている。
「出来た。」
そういって掌を広げた光は、水色でハート…の下に一本線があるところ、ハート型の風船といったところか。光るそれを光はその場で破裂させた。
パラパラと夜空に僅かに反射して、幾つもの丸は落ちる。水だ。
「水属性だ!わああ、かっこいい!」
「光、すごいよ!キラキラしてる~!!」
「とても綺麗だ…!」
俺達は目を奪われながらも、口で光を褒め倒す。綺麗だった。ずっとみていられる。
「…………透は。」
俺達は放っておくと延々褒めると悟ったのか、光はトールの方へ話を写す。その手中には既に魔力の塊があった。
緑色でバッテンで淡く光っている。トールらしい、優しい色だ。
そしてトールが割った瞬間、風が吹く。それは優雅に踊るように俺達の髪を撫でると、光りと共に静かに消えていった。
それはまるで、穏やかな町に吹く、優しい夜風のようで。夏とマッチしているが、きっと冬にも似合うのだろう、この風は。
心に響いて、懐かしくて、暖かくて、心地よい…………胸が締め付けられるほどに。
思わず目に溜まりそうな涙を慌てて引っ込めると、俺はトールの方を見る。彼は至極穏やかで優しい顔で、天を仰ぎ風の行く末を見届けていた。
すごいなと、そういいかけた口は、正によって阻まれる。
「なんか、ふわってした!!!」
「すごい。」
先を越されちまった。
俺は慌ててさすがはトールというと、感極まって思わず肩を掴み左右に激しく振る。
トールはそれを拒むことなく、照れたような苦笑いを浮かべた。
「あはは…ありがとう。これで俺達、武器がなくてもなんとか生きてけそうだね。」
「ううん、でも攻撃力、あるか?」
そう言ってから自分で気がつく。
なんか、説明難しいけど…あの時は二回目だったから魔力の塊を作るのに必死で、大きさとか威力は全然本気出してない。
だからまあ、なんとかなるってことだろう。それにトールが言うんだから間違いない。
「まあなんとかなるって~」
少しお気楽だが、正もそう言ってるしな!
俺は納得すると、いよいよ本題だ。これからのことを話したいと伝える。
「と言うわけで、これらを踏まえた上でこれからの計画を立てたい!王城に向かうにしても、俺達今は特殊キャンペーンでレア装備を手に入れた初心者だからな。まずはどんなモンスターを倒せばいいのか、俺達はどういう立場なのかとか、より効率的に向かえるように計画を立てねえとな。」
「うわぁ、めずらし…」
ボソッと正が呟く。本人は思わず呟いたんだろうけど、地獄耳を持つと言われている俺にごまかしは聞かない。
ってか、珍しって言ったの、絶対俺が柄にもないことを言ったからだろ。
「何が珍しいんだよ」
ちょっとふてくされた風にいうと、正は苦笑いを見せる。
「いやあ、あはは…聞こえてた?ほ、ほら、総って基本無計画だからさ!」
グサッ!
ズバリものを言われて、少し傷つく。一方、トールは俺に無自覚に攻撃を与えた正をみて、慌ててフォローをいれてくれる。
「でっ、でもでも、総のいつもの、なんでも感情だけで動く判断も大事だと思うよ!ヒーロー気質ってやつだよ!」
「ヒーロー?」
「うん!」
ヒーローか。ヒーローか。
良いな。
単純に、良いな。
トールにこう言われるのは、昔あわせて多分二回目だけど、良いな。ヒーローか…
「まっまあ、それはさておいといて、だ。こっからどうするか!考えようぜ!!な!」
「テンション上がってるねえ」
「単純」
「あはは、それが総の良いところだよ」
「俺は単純じゃない!その、あだ、ちょっと嬉しかっただけだ!」
本当はすんごく嬉しかったけど、多分今の嘘は隠し通せたと思う。そして今の嘘は仕方ないよな、な!
……というわけで大分話が逸れてしまったものの、それから先はとんとん拍子だ。
正が先にある程度アニエさん達から情報を聞き出していたんだ。
――つまり、モンスターは倒して魂の塊を手に入れながら、隣の隣町の冒険者昇格試験を受ければこの町に溶け込める!
特権がなにかは聞きそびれたけど、多分初級、いや中流冒険者にでもなれば特権もあるだろうから、とりあえず隣の隣町へ行こう!
って感じだった。わかりやすくて助かった。それに俺としては、モンスターを全部倒していいということは安心した。これで危害を加えられた時、俺達も攻撃が出来る。
ただ、なるべくそういうのはしたくないけど…
「魔法花火はもう終わりだよ。夏とはいえ、夜は寒いだろう、用意しておいた宿に帰りなさい」
魔法花火が終わった後もそとで立ち話していたから、いつの間にか現れた村長が声をかけてくれた。
「「はい!」」
「うん。」
「すいません、こんなに世話して貰っていて…」
トールが申し訳なさそうにすると、村長さんは朗らかに笑う。
「ええんよ、ええんよ。王様はモンスターやあの世界のことで手一杯な世の中じゃ。せめて人間や亜人同士、モンスター以外の生き物は協力していかなけりゃならんだろ。」
「村長さん…」
何ていい人なんだ。
どこぞの、名前が旧暦の友人に聞かせてやりたいな。もしも俺達に協力を仰いでくれれば、俺らだけじゃない、彼ら自身も傷つかずに済んだのに。
……いや、それはなにも気づけなかった俺にも責任はある、卯月一人を責めるのは駄目だ。
「まあ、恩返しがしたいならお前さん達、魔法花火を作ってくれねえか?魔法花火だけは祭り関係なく毎夜わしが行うんだが、お前さん達のような茶色以外の魔力を魔法玉に込めると、より色鮮やかで綺麗になるはずだ。そこの赤いの以外も、綺麗な魔力の塊を作れるのだろ?」
「なんで、そう、思うの。」
「髪色だよ!カラフルな髪の奴は多いが、なんとなくな。あ、それじゃあ勘になってしまったなぁ。」
村長さんはそう優しく笑った。
誰かに少し、似ている気がした。
「おーい、そーう!」
「…………」
「そーうさーん!」
「……あっ、悪い、なんか言ったか?」
俺を女の子と勘違いしてた村長さん達をなんとか(トールが)言いくるめて、正と同じ寝室になるのを防いだ俺は、どうやら睡魔と懸念でトールの話が耳に入っていなかったようだ。正確には、花火がどうとか言ってた村長さんの話も少し曖昧だ。
「どうしたの、お疲れ?」
「んいや、疲れてはいるが、ちょっと考え事してて…」
「…元の世界のこと?」
「ああ…」
やっぱり、トールには隠せないか。いや、俺がわかりやすいのか…そんなわけないか!
「皆大丈夫かなって」
「……心配になるよね。でも、大丈夫だよ。」
「そうかな…」
「だって向こうには、誠も悠太もアリスさんも、卯月もいる。信じよう、皆を。」
まっすぐにトールはそう言った。
信じる、か…そうだな、確かにそうだ。
「ああ!いつまでも悩んだって仕方ねえ!俺らは空を早く助け出そうぜ!」
「その通りだよ、総!」
俺はトールの前に右手を差し出す。トールはなにかすぐに気がついて、トールの色白の右手を出してきた。
俺達はぎゅっと固く握手する。
「これから頼むぞ、親友よ!」
「勿論だよ、総!」
こうして俺達は異世界に来てから数えて一日目を終えようとしていた。
だけど俺はあの唸り声が忘れられなくて、しばらく寝付けなかった。…いや、それでもトールよりは早く寝たんだけどな。
《――魔法?何それ?…へえ、あらかじめ決めた特定の日の深夜二時から四時に多くを催眠術を操れる一度きりの魔法?変なの!え?正確には、その時間に体から出るフェロモンみたいなものを操るから、稀に効果がでないこともあるとかないとか…わあ、あいま~い!
――でも、すごいね。
……私はかつて弓子さんに魔法を教わった。
なんでも、卯月だって知らない、一度きりの魔法らしい。しかも卯月の知る魔法と相性良くて、協力して暮らすの皆を催眠・洗脳できるって聞いて、私はすごく嬉しかった。兄と協力って、実は私好きなんだ。
…クラスの皆が嫌いな訳じゃない、むしろ好きだ。だからこそ弓子さんはクラスの皆はある魔物に取りつかれていて、それをこっそり取り除いてくれるというのだから、私は友達に一時的な洗脳をかけることを厭わなかった。後遺症も少ないって聞いたし、魔物より断然ましだ。
そしてそれを話せば卯月も弓子さんと会って協力してくれて、私はあの日の深夜になんとか皆を外へ連れ出し、一時的に拘束することに成功したんだ。
何故、私はあれほどに弓子さんを信じていたんだろう。
魔物なんて、どうして信じたんだろう。
魔法は夢の中だけだって、どうしてわかんなかったんだろう。
――私、文月は弓子さんが好きだった。
恋愛的なのじゃないよ、家族みたいなんだ。引き取ってくれたおじさんは…確か、今かよう高校の校長だっけな、その人は弓子さんには会ってほしくなさそうだったけど、それでも私は会い続けた。卯月にも勿論内緒で。
中学の頃、卯月を苦しめた元凶がこの人と知っても尚、私は恨めなかった。
思えば、そこからもう私はおかしかった。
きっと弓子さんお得意の、洗脳にかかってたんだな。
だって、そうでなければ。
私は…お母さんを、忘れてた意味がわからなくなる。
記憶にはあった。今も意識不明の母がいることも、その原因が弓子さんであることも。けれど意識できなかった。本当の意味で忘れてた。
それらが当然と思っていて、むしろどこかで、弓子さんが母のように感じていたんだ。だから本当のお母さんのことはどうだって良いって思ってた。弓子さんと出会ってから常に意識の外にあった。簡単に洗脳された。
これは言い訳にしかならないけど…
卯月はなんでも抱え込んで、一人でどっか行っちゃうような人だった。だから、背負っちゃうじゃん。お母さんを思い出せば、私は苦しくて、しんどくて溜まらなくなる。それをみて、卯月は私をただ支えてくれる。
けど卯月は同時にもっと苦しんじゃうじゃんか!って、心で気づいてたから、私はお母さんを忘れて元気な姿で卯月と一緒にいたかったんだ。
だから余計簡単に洗脳されたんだと思う。
何て、馬鹿な。
そのせいで皆苦しめて…
私は……
病院で全てを聞いた後、私は涙ながらにアリスに伝えた。
「あのね、アリス…皆を洗脳しようって言い出したの、私なの。弓子さんに卯月も心理学を校長から学んでるって話をしたのも私だし、それで私がやろうとした洗脳を卯月にも持ちかけてって言われて、卯月にも無理矢理協力させたの。だから悪いのは私なの。どうかお兄ちゃんは許してやってくれないかな…」
「…………」
やっぱり無理か。そりゃそうだ、正ちゃん達だっていなくなって、皆も入院させた私が言える立場じゃない。
「ちょっと待て、誤解を招く言い方はするな」
卯月が私を諌める。
「今回の件、確かに文月から聞いて、そっから俺は弓子と会った。けど俺は文月と違ってその時弓子に洗脳されてなかったし、何より一番お前らを傷つけたのは俺だ。文月はあくまで弓子に俺を引き込むよう利用されただけにすぎない。そしてそれを俺は洗脳されていないにも関わらず、受け入れた。」
「違う!卯月は私の事で脅されてて…!」
私も確かに、卯月を引き込んでからはたまに弓子さんに卯月を使った脅しを少し入れられることはあったけど、そんなのは軽いもので、きっと卯月は私の何倍も恐怖で支配されていたんだ。
「…………」
アリスは黙ったままだ。それでも私は必死で話続けた。
「卯月は恐怖で支配されてた!私という恐怖で!簡単に洗脳される私なんかより、よっぽど辛かった!」
「辛いとか関係ないだろ!それに俺は…お前らを心理学の実験台にした!それに…そうだ、アリス、お前だって俺が洗脳した!悠太を騙して、お前を…」
違うよ、違う!卯月は、卯月は悪くない!悪いのは全部私なのに…!!
「あーもう二人うるさい!」
アリスは人差し指を口に当て、静にしろポーズを取る。確かにここは、静かで白い病室だ。…少しヒートアップしてた。
「じゃあもう二人とも悪いで良いじゃん!」
「「良くない!」」
久しぶりに、声が重なる。
アリスはその様子に少し笑顔を見せてから、それから私のベッドの側の背もたれのない小さな椅子に腰かけた。
「二人とも、優しかった。互いを思った。その結果がこれなんでしょ?ならまた互いを一方的に守ろうとしなくて良いんじゃない。」
「一方…」
「的…?」
どういうことだろう。
アリスは優しく笑って諭す。
「二人が互いに互いを思ってた。なら自分を下げてまでお互いを守れば、悪循環だよってこと。自分を下げるのは、相手にとっては良い気しないもん。心配しなくても、皆は二人に罰を与える。」
「罰…?」
「私は、今部屋の外の桃花達のような、悠太を除いた入院中のクラスメイトにこの事件を隠そうと思ってる。」
「へ?」
私は驚く。てっきり、皆の前で公表して、痛め付けるのが罰だと思ってたから。
「辛いよ、二人は。だって二人は覚悟がある。謝りたいって思ってる。それを二人は、皆に永遠に隠し通さなきゃ行けない。」
「それが、罰か?」
……確かに、辛い。
友達が何も知らずにいつもの通り接してきたなら、それはとても苦しい。
だけど、そっか。
私達の洗脳で、皆記憶が曖昧だ。これが得策なんだ。
でも…
「だけど、ひとつ言っておく。けして私達皆は二人を恨まない。怒らない。」
アリスははっきりそう言った。
「え…でも…」
なんでそんな優しい言葉を掛けるの。
それじゃ、罰にならないよ。
それに、そもそも皆って、正ちゃん達が消えて…
「私にはわかる。正達は絶対帰って来る。その後正達には全て話すけどね、誰も怒らない。強いて言えば…正と光辺りはきっと、卯月には文化祭でメイド、文月には女子会デートの約束でも取りつけるんじゃない?」
「はあ…言われそうだな」
アリスは少し冗談を交え、真に受けた卯月は嫌そうな顔をする。
「そうね、あとは…罰と言われれば総は卯月に好物を要求するでしょうし、透は文月に女子の好きなものを聞くわね。無自覚に空にアピールしたくなる頃でしょうし。」
そう言ってアリスは姉御の目をする。すごいな、アリスは…
「ってそうじゃなくて、皆そんな簡単に…」
「許す。」
即答。
「どうしてっ…」
「どうしてって、もし仮に私が悠太が殺され掛けてるから皆に協力を仰いだとして、皆は命懸けで悠太を助けるでしょ?そう言う理屈とかわりないよ。」
「ええ…」
そんなものだろうか。
私が悩んでいると、アリスはしびれを切らして立ち上がった。
「で、皆に隠し通すってやつ、二人は受け入れてくれる?というかお願いします!」
アリスは頭を下げる。
なんで、なんで。
アリスも、皆に嘘をつき続けないといけなくなるのに。
それでも、良いの?
私は簡単に騙されたのに。
アリスは…
「…わかった。アリス。」
これは戻れない私の意思だ。せめて、皆が何事もなくこれから過ごせるように…
そう言うとアリスはより一層笑顔になって、それからこういった。
「早々、二人のお母さんの入院先、ここなんだってね。会いに行けるらしいから、二人で行っておいで。
二人だって頑張ったんだ、会いに行き終わったら、また私達のもとに、帰ってきてね。」
黄色というより、金色の艶やかな髪がさらさら揺れる。長いのに、毛先まで綺麗だ。すごく手入れしてるんだろうな。そんなことを考えた。
同時に、アリスの優しさに、私は涙が止まらなかった。
色々やんなけりゃいけないことはある。けど…
(今は、久しぶりに、卯月を抱き締めたい、抱き締められたい。)
もう高校生なんだけどね。
それでも私は…
全てが終わった今、昔みたいにお兄ちゃんの側にいたいんだ。》
俺、総は花火に混じった悲鳴と唸り声を聞いた。皆して上を見上げていたから、人混みから抜け出すのは大変だった。
それでも抜けて、策に囲まれた村の入り口を少し出る。辺りはすっかり深淵の森で、夜空と魔法の花火以外の光りはない。
そういえば、異世界らしく手から魔法の塊みたいなものが出せたよな、俺。
右手の指を少し曲げて力を加えると、トライアングルで赤くて、光った何かが現われる。
何かわからないけど、何となく俺にとって良い魔法な気がするんだ。
唸り声のした音の方を見据える。
「勝手に行くのは危険だが…」
耳に聞こえた声は、どちらも悲しそうな気がした。何となくだけど。
けれどその後はなんの声もしなくて、仕方がないから俺は村に戻った。
「おお、どうしたんだい?」
村長さんだ。俺は念のため声のことを話そうとすると、そこで村長さんは目を見開く。
――何だ?
俺は首をかしげると、村長さんはもっと驚いて声を出す。
「お前さん、それ…もしや、魔力の塊…?」
このトライアングルのことか。ずいぶんとそのままな名前で、わかりやすいんだな。
「これがどうかした…しましたか?」
「なんで形が、光があるんだ!?」
「え!?」
「おまけに魔力まで溢れている…ソウ、君は一体…」
…………?
なんの話だろう?
「……ってなことがあって、聞いたんだ。どうやら魔力の塊は、一番簡単な魔法この事らしい。基本は茶色い丸が出来るらしいんだけど、魔法の属性が特別だと色が変わって、質が良ければ形が変わって、量が多かったら光って、もっと多かったら魔力が溢れるそうなんだ」
丁度魔法花火の催しが終わったタイミングで、俺は村長さんに聞いたことを正達に話す。
それを聞いた正は無邪気な子供のように目を輝かせた。曰く、俺がよくする顔らしいのだが、俺は未だにピンと来ちゃいない。そんな自ら可愛らしい顔はしないはずだ。
「へええ!じゃあじゃあ、せーじゅはもう既に魔法が使えたってことだね!?」
「ああ!投げると属性に合った単純魔法が使えるんだって!」
因みにさっき作った魔力の塊は炎だった。俺は炎属性ってことになる。
初めて作った時の塊はいつの間にか消えていたが、それはどうやら空気中に溶けたらしい。余程魔力が空気中にない限りはモンスターは出来ないし、むしろ自然にもいいらしいから、今のところ問題は特にない!
「だからさ、ほら、トールや光も試してみてよ!」
歌った舞台のそばで、俺はトールと光を交互に見つめる。トールは自身なさげな顔をしたが、一方で光は既に右手に力を込めている。
「出来た。」
そういって掌を広げた光は、水色でハート…の下に一本線があるところ、ハート型の風船といったところか。光るそれを光はその場で破裂させた。
パラパラと夜空に僅かに反射して、幾つもの丸は落ちる。水だ。
「水属性だ!わああ、かっこいい!」
「光、すごいよ!キラキラしてる~!!」
「とても綺麗だ…!」
俺達は目を奪われながらも、口で光を褒め倒す。綺麗だった。ずっとみていられる。
「…………透は。」
俺達は放っておくと延々褒めると悟ったのか、光はトールの方へ話を写す。その手中には既に魔力の塊があった。
緑色でバッテンで淡く光っている。トールらしい、優しい色だ。
そしてトールが割った瞬間、風が吹く。それは優雅に踊るように俺達の髪を撫でると、光りと共に静かに消えていった。
それはまるで、穏やかな町に吹く、優しい夜風のようで。夏とマッチしているが、きっと冬にも似合うのだろう、この風は。
心に響いて、懐かしくて、暖かくて、心地よい…………胸が締め付けられるほどに。
思わず目に溜まりそうな涙を慌てて引っ込めると、俺はトールの方を見る。彼は至極穏やかで優しい顔で、天を仰ぎ風の行く末を見届けていた。
すごいなと、そういいかけた口は、正によって阻まれる。
「なんか、ふわってした!!!」
「すごい。」
先を越されちまった。
俺は慌ててさすがはトールというと、感極まって思わず肩を掴み左右に激しく振る。
トールはそれを拒むことなく、照れたような苦笑いを浮かべた。
「あはは…ありがとう。これで俺達、武器がなくてもなんとか生きてけそうだね。」
「ううん、でも攻撃力、あるか?」
そう言ってから自分で気がつく。
なんか、説明難しいけど…あの時は二回目だったから魔力の塊を作るのに必死で、大きさとか威力は全然本気出してない。
だからまあ、なんとかなるってことだろう。それにトールが言うんだから間違いない。
「まあなんとかなるって~」
少しお気楽だが、正もそう言ってるしな!
俺は納得すると、いよいよ本題だ。これからのことを話したいと伝える。
「と言うわけで、これらを踏まえた上でこれからの計画を立てたい!王城に向かうにしても、俺達今は特殊キャンペーンでレア装備を手に入れた初心者だからな。まずはどんなモンスターを倒せばいいのか、俺達はどういう立場なのかとか、より効率的に向かえるように計画を立てねえとな。」
「うわぁ、めずらし…」
ボソッと正が呟く。本人は思わず呟いたんだろうけど、地獄耳を持つと言われている俺にごまかしは聞かない。
ってか、珍しって言ったの、絶対俺が柄にもないことを言ったからだろ。
「何が珍しいんだよ」
ちょっとふてくされた風にいうと、正は苦笑いを見せる。
「いやあ、あはは…聞こえてた?ほ、ほら、総って基本無計画だからさ!」
グサッ!
ズバリものを言われて、少し傷つく。一方、トールは俺に無自覚に攻撃を与えた正をみて、慌ててフォローをいれてくれる。
「でっ、でもでも、総のいつもの、なんでも感情だけで動く判断も大事だと思うよ!ヒーロー気質ってやつだよ!」
「ヒーロー?」
「うん!」
ヒーローか。ヒーローか。
良いな。
単純に、良いな。
トールにこう言われるのは、昔あわせて多分二回目だけど、良いな。ヒーローか…
「まっまあ、それはさておいといて、だ。こっからどうするか!考えようぜ!!な!」
「テンション上がってるねえ」
「単純」
「あはは、それが総の良いところだよ」
「俺は単純じゃない!その、あだ、ちょっと嬉しかっただけだ!」
本当はすんごく嬉しかったけど、多分今の嘘は隠し通せたと思う。そして今の嘘は仕方ないよな、な!
……というわけで大分話が逸れてしまったものの、それから先はとんとん拍子だ。
正が先にある程度アニエさん達から情報を聞き出していたんだ。
――つまり、モンスターは倒して魂の塊を手に入れながら、隣の隣町の冒険者昇格試験を受ければこの町に溶け込める!
特権がなにかは聞きそびれたけど、多分初級、いや中流冒険者にでもなれば特権もあるだろうから、とりあえず隣の隣町へ行こう!
って感じだった。わかりやすくて助かった。それに俺としては、モンスターを全部倒していいということは安心した。これで危害を加えられた時、俺達も攻撃が出来る。
ただ、なるべくそういうのはしたくないけど…
「魔法花火はもう終わりだよ。夏とはいえ、夜は寒いだろう、用意しておいた宿に帰りなさい」
魔法花火が終わった後もそとで立ち話していたから、いつの間にか現れた村長が声をかけてくれた。
「「はい!」」
「うん。」
「すいません、こんなに世話して貰っていて…」
トールが申し訳なさそうにすると、村長さんは朗らかに笑う。
「ええんよ、ええんよ。王様はモンスターやあの世界のことで手一杯な世の中じゃ。せめて人間や亜人同士、モンスター以外の生き物は協力していかなけりゃならんだろ。」
「村長さん…」
何ていい人なんだ。
どこぞの、名前が旧暦の友人に聞かせてやりたいな。もしも俺達に協力を仰いでくれれば、俺らだけじゃない、彼ら自身も傷つかずに済んだのに。
……いや、それはなにも気づけなかった俺にも責任はある、卯月一人を責めるのは駄目だ。
「まあ、恩返しがしたいならお前さん達、魔法花火を作ってくれねえか?魔法花火だけは祭り関係なく毎夜わしが行うんだが、お前さん達のような茶色以外の魔力を魔法玉に込めると、より色鮮やかで綺麗になるはずだ。そこの赤いの以外も、綺麗な魔力の塊を作れるのだろ?」
「なんで、そう、思うの。」
「髪色だよ!カラフルな髪の奴は多いが、なんとなくな。あ、それじゃあ勘になってしまったなぁ。」
村長さんはそう優しく笑った。
誰かに少し、似ている気がした。
「おーい、そーう!」
「…………」
「そーうさーん!」
「……あっ、悪い、なんか言ったか?」
俺を女の子と勘違いしてた村長さん達をなんとか(トールが)言いくるめて、正と同じ寝室になるのを防いだ俺は、どうやら睡魔と懸念でトールの話が耳に入っていなかったようだ。正確には、花火がどうとか言ってた村長さんの話も少し曖昧だ。
「どうしたの、お疲れ?」
「んいや、疲れてはいるが、ちょっと考え事してて…」
「…元の世界のこと?」
「ああ…」
やっぱり、トールには隠せないか。いや、俺がわかりやすいのか…そんなわけないか!
「皆大丈夫かなって」
「……心配になるよね。でも、大丈夫だよ。」
「そうかな…」
「だって向こうには、誠も悠太もアリスさんも、卯月もいる。信じよう、皆を。」
まっすぐにトールはそう言った。
信じる、か…そうだな、確かにそうだ。
「ああ!いつまでも悩んだって仕方ねえ!俺らは空を早く助け出そうぜ!」
「その通りだよ、総!」
俺はトールの前に右手を差し出す。トールはなにかすぐに気がついて、トールの色白の右手を出してきた。
俺達はぎゅっと固く握手する。
「これから頼むぞ、親友よ!」
「勿論だよ、総!」
こうして俺達は異世界に来てから数えて一日目を終えようとしていた。
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