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成果発表
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~成果発表~
《皆がいなくなる前、狼クラスは野外学習として山奥の工場を訪れた。そこは狼学園の卒業生が経営している会社で、毎年見学許可を出してくれている、学園と縁の深い繊維工場だった。
左耳の上に桜の花弁の髪止めを、左耳の後ろから垂れた赤茶色の髪を先端の方でハートの髪止めで止めている女性は、頃合いを見計らって喋る、彼女は工場の社長にしては若い。
「初めまして、この会社の経営者の『赤弓 弓子』です。ちょっとややこしいけど、気軽にユミユミって呼んでください!今日はよろしくお願いしますね」
そう言って、気さくでフレンドリーに弓子は笑った。
そして続いて初対面の、若いとはいえ正珠達と二十歳は離れているだろう女性を簡単にユミユミとは呼べないクラスの代表は、少し戸惑いながらも一歩前に出る。二列横隊で並ぶ狼クラスの誰かに向けて、弓子が握手を求めたからだった。
握手の短い間、透は少し悩んでから、「よろしくお願いします、ええと、ゆ…ユミユミ、さん」とたじろぎながらも言いきった。
透は予定にはない行動を臨機応変に行いながら、ふと、視界に入った弓子の後ろの広葉樹に囲まれた小さな工場を見る。工場ではあるものの、壁の塗装が所とごろ彩られている為に目に入りやすいのだ。
透が一歩下がると、弓子は担任である暁の方を見る。
「では今から案内しますね。あ、暁先生、これで全員ですか?」
「はい、そうです」
「じゃあ行きましょうか。」
そう言うと、弓子はぞろぞろと生徒達を引率する。その間正珠はひとつ、疑問に思い、隣の従姉、『星村 桃花』に耳打ちを打った。
「ユミユミさんの左手…さっきから全然動かないね。痺れてるのかな?こう…腕枕で…」
「そ、それはないと思うけど…確かに不思議」
「義手だ。」
直後、クラスメイトの一人の夜が背後から二人に教える。
「そうなんだ、良くわかったね」
「まあな。」
それだけ言うと、青ベースの髪色に水色が混ざった髪の毛を持つ夜は、即座に顔を引っ込める。無愛想な夜をいつもの事だと特に気にもせずに離れた工場へと歩いていると、今度はその夜の隣を歩く『赤崎 誠』が苦笑いを夜に向けた。
「夜、折角答えたんならそんなそっけなくたって良いじゃないか」
「別に。いつもの事だろ。それより、お前の彼女の方が俺よりひどいと思うけど?」
冷ややかな目を向ける夜に、誠はわかりやすく赤面しながら慌て出す。
「なっ、べ、別に今光さんは関係ないだろ!」
「誠うるさい」
「そっちが先に言ってきたんじゃないか!」
後ろから耳に入る二人の仲睦まじい会話を桃花は思わず笑った。
「仲良いね、二人。従兄弟…だったっけ?」
「従兄弟とか血縁者同士ってこのクラスに多いよねぇ」
「だね…フフ」
従妹にあたる正珠がどことなく他人事のように言うので、桃花はそれがまたおかしく感じて、思わず笑みが溢れた。》
「…とりあえず落ち着こうぜ」
声が震えつつも唱えた総により、他のメンバーも幾分か冷静さを取り戻す。総自身も自分に言い聞かせるように言った為に、少しの余裕が出てくる。
「仕組まれてた…かもなんて、今更だろ。二十一年前の事故と似ていることも、そもそもその隠された事故があったこともわかったんだし、可能性がないわけなかったんだ。」
「…そうだね、総の言う通りだ。寧ろそのお陰で何か分かるかもしれないよ」
「何かって、なに。」
「ええと、それは分かんないな…」
光の端的な指摘に咄嗟に答えられなかった透の代わりに、今の状況をまとめようと正珠は口にして整理した。
「まあまあ、一旦整理しよ!せーじゅ達は今回の失踪事件において、手がかりがほとんどなにもない状況だ。だけど今、努力のお陰で二十一年前の事故と非常に関連深いってことがわかった。そんで、ついさっき総が言ったんでしょ、仕組まれてるかもってね」
「そうだな!それに、逆に言ったら、少なくともこれが神隠しだっていう可能性は減ったってことだ!…な、他に気がついたことは…トールはなんか無い?」
総は、五センチほど上の透に視線を送った。透はそれに答えるべく頭を使う。
「うーん…………あ。もしこの失踪が二十一年前と関連しているなら、事故で生き残ったのは教師含めた五人ってことになるんだ。日付は曖昧だから言及できないから考えないでおくとして…今クラスには八人残ってるから…このまま失踪事件が解決しなければ、更に四人、それとこの前の運転手さんとバスガイドさんがいなくなるかもしれない…かな。」
一斉に、表情が暗くなる。
いたって真顔の透の語尾の弱くなった発言は的確である。
つまるところ、結局、進展こそしたが皆が失踪した手がかりになるようなものは見つかっていないのだ。
いや、寧ろこれは…
「いや、駄目じゃねえか!?」「駄目じゃんか!」「駄目じゃない!?」「…駄目」
落胆した心を持ち直したところで、更なる絶望が垣間見えた。
今でも失踪した理由が分からないというのに、更に打つ手もなく人が減るとなると、これはもう、どうすれば良いかも分からない。
実際、呟くように言った透本人の額にも、一筋の汗が流れ落ちた。
――それから十秒も満たずに、時計が丁度一時を指した時。
「あ、お前ら何してるんだ?」
ガラリ、と鳴るドアの音と同時に太い声が響き、一気に教室内の注目を集める。
「暁先生!」
青ベースの髪色に水色が混ざった、背の高い教師は教卓に集まる五人をいぶかしげに見つめる。今年で教師二十二年目の彼は、正珠達が一年の頃からの担任だ。教師担った時からずっとどこかしらの担任だという暁は、ある事情から他教師から苦労人と呼ばれている…と、正珠は最近知ったばかりだ。
「今は自習中だぞ。自分の席に戻れ。学級委員も一緒になって何してるんだ、全く…」
いつもは明るい暁も、疲労が多く溜まっているのか大きくため息をつく。そこにはいつもとかわらない毎日が見えているかのように。もう何日もかわらない、揺るぎない態度だ。
そんな暁に、正珠は我慢ならずに詰めよった。
「先生、教室見ておかしいって思わない!?」
「ん?お前らが席に座ってないことか?」
「違うよ!人数が少なすぎるでしょ!?せーじゅ達、二十九人クラスだったじゃん!」
「あ?…何言ってるんだ、狼クラスは元から八人だろ。特別クラスなんだからな。」
正珠達と同じように目に隈を作った暁は、まっすぐに睨む正珠から視線を外すと教室を見渡す。
「あ…?」
そう、その教室には何人かが足りていないのだ。何十人も足りていない時の動揺では詰め寄ることが出来なかった。
そして今、その次の動揺を見過ごさなかった空は、正珠の援護として畳み掛けようとする。
「先生、そもそも一日中自習だなんておかしいです!授業は!?」
「大人の事情だ」
「それ、説明できない、ってこと。」
「先生、教えてください!」
そう言って全員で詰め寄るが、そんな必死な思いは届かず、暁はうざそうに一喝する。その瞳孔の奥には激怒の念が、炎となって荒ぶり燃えていた。
「良いから自習しとけ!」
ぐっ、と総は一瞬口を閉じる。しかし今回、暁が怒りを露にしたのは初めてだった。そんな隙を逃すことはしなかった。怒るということは、なにか裏を知っている証明にもなる。
「先生、いい加減俺達に協力してくださいよ!前の警察も追っ払っちゃったし!」
「ああ、警察は総が連絡したのか。ふざけるのは止めろ。警察もただじゃねえんだぞ。後で反省文な」
「ええ!?」
そう、クラスメイトが失踪して初めに手詰まりとなった時、当初から総は提案していた通報を実行した。
が、怪しみながらも学校に来た少数の警察はあっさりと言いくるめられて去っていったのだった。以来、電話をかけても対応はしてくれなかった。
しかし結果としてイタズラ電話として片付けられてしまった以上、否定することも出来ず、総は必死に脳内の引き出しから言葉を引き出そうとするが、スピードが極度に遅い。
そんな総を庇うため、透は慌てて弁明する。
「ちょっ、待ってください!確かに実行したのは総ですけど、それなら同意した俺にも責任はあります!それに俺は通報が間違っていたとは思っていない!」
咄嗟に声を荒あげた透はあからさまに総を庇うと、暁はつまらなさそうに透を睨む。
「そうか…がっかりだな。俺、透のことは信用していたんだぞ。俺を裏切ったな」
「なっ…う、裏切るだなんてそんな…!」
暁の煽ろうとしているともとれる口許は、素早く饒舌に語る。
「お前は聡明だから、総のような奴を諌めてくれると思っていたんだがな。親友だろ、そんなことも出来ないのか」
「ちょっと、そんな言い方…!」
「なんだ、総を庇うために透が反論して、透を庇うために空が反応して…お前ら本当に仲が良いな?次空を庇うのはどっちだ、正珠か?光か?」
「鬱陶しい」
我慢ならなくなって、感情のこもっていないようなトーンで光は良い放った。ただその眼光はギラついており、ギューピックジルコニアのように強過ぎる光が反射する。
それにはさすがの暁にも煽りの笑みが消え、再び不機嫌そうに光を見下ろした。
同時に、チャイムがなった。
光の側で何か言おうとしている正珠をよそに、暁は踵を返す。
「んじゃあ俺、職員室に戻るわ。六時間目も自習だ。やる気無いなら寮に戻っても良いぞ。どうせこのクラスは八人しかいないんだからな。」
扉が閉められる。
正珠は一瞬暴力によって無理矢理問いつめようと拳を上げたが、総の『ある言葉』を思い出して、思い止まる。
結果として正珠達は嵐のような暁に、ただ呆然と立ち尽くすだけだった。
総は追いかけようとしたが、そこで踏みとどまる。今はこれ以上問いつめてはいけないと、暁を信頼するゆえに思ったからだった。
まだ外では雨が降り、六時間目を告げるチャイムも鳴っていないお昼時、五人は僅かに体を少し濡らしながらも寮の玄関へと帰ってきた。
紫色の傘を閉じた正珠は靴を脱いでスリッパに履き替える。
「反省文とか何書けってんだよ…」
とがっくりと肩を落とした総を含めた五人は既に疲労困憊していた。
そんな五人をタイミング良く迎え入れたのは、誠だった。
「あ、お帰り皆!」
そしてその後から、二人の影もゆらりと出てくる。
「お帰り!ねえねえ、凄い進歩があったんだよ!ね、ユータ!」
「ああ!とりあえず食堂に集まろうぜ!」
嬉々として五人を呼んだのは、『楠木 アリス』と『楠木 悠太』だ。髪や目がそっくりで、まるで双子…いや、ドッペルゲンガーのような二人は、高校よりも前に出会ってはいるが、決して血が繋がっているわけではなかった。尤も、今後婚姻関係が結ばれる可能性は高いが。
アリスと悠太は疲れきった五人を見て、揃って同じような反応を見せる。おずおずとアリスは五人を順に見つめる。
「…元気無いのはわかるけど…決めたじゃん、皆見つけるまでは立ち止まらないって、ね?」
「アリスの言う通りだ。特に…」
悠太は五人を見終えたあと、オーラが滲み出ている総の方へと歩み寄る。
「いつもの幼稚なくらい元気なお前はどこ行ったんだよ、正もさ、笑えとはいわねえが俺がいる限りは何とかするからな、安心しろよ!」
そう言うと、悠太は親指を自らに立て、笑顔を見せる。便乗するように隣に並び、アリスも優しく微笑んだ。
「空も透君も!ほらほら光だって、ダブル楠木がいるんだから、なんとかなる!」
その途端、悠太は変顔を披露した。たまらず総と正は大笑いをし、空と透は口許を抑え笑い、いつもは無表情な光も僅かに笑みをこぼした。
少し遅れて隣にいたアリスや誠すらも巻き込んで、寮は一時的に笑顔が生まれる。
「プッ、な、なんだそれ!!アハハハ!!」
「いっ、いきなり変なことしないでよ!!アハハ!」
バシンとアリスは悠太の背中を笑いながら叩き、呼吸困難になってしまいそうなほど息は乱れる様は更に笑いを呼び起こした。
「あー、笑った笑った!」
「そうか、それは良かった!」
暫く笑った後、正珠達は食堂の隅で失踪した内の一人である大の画面を眺めていた。
悠太は充電器のささったパソコンの黒のノートパソコンに向かい合ったまま口を開く。ロックは既に解除されて、ホーム画面が写っていた。しかしそのパソコンは、悠太のものではない。
「何で悠太が大のパソコンを持ってるんだ?」
「この際だから、俺とアリスと誠はマスターキーを使って消えた連中全員の部屋を調ベる手筈だろ?」
「何人かのパソコンは見つけたんだけど、基本的にはロックがかかっててさ。でも、大のパスワードは前に一回か二回聞いててな。しかもあるサイトのパスワードも、パソコンの裏に書かれてたんだ」
「不用心だよねー!」
成果のあまりない五人を気遣ってか、アリスはわざと明るい声で話す。それにいち早く感づいた総は、同じように反応を返す。
「なるほど~!で、何がわかったんだ?」
「注目すべきは、履歴だ。」
カタカタと素早くパソコンのキーを操作する悠太は、パソコンを立ち上げた時のパスワードだけでなく、何らかのサイトのパスワードを打ち込んでいることに空は驚く。
「悠太くん、履歴って、何の履歴?」
「なにって、ちょっと厳重にロックがかかってる、アレなサイト」
特に気にすることもなく言い放った悠太に対して、意味を理解した空は少し赤面になり、透は顔をしかめ、既に知っているアリスと誠は呆れ顔と苦笑いを決める。
ただ、全くわかっていない総は首をかしげた。
「え、アレって何だ?」
「アレはアレだよ、わかるだろ」
「アレ…痛々しい日記か?」
「それはそれでアレだな…お、一瞬サイトのホームページに飛ぶから、見たくないやつは目え閉じとけ。特に女子。…いや、総もだな」
「えっ、まさかグロいやつなのか!?」
「あーそうそう、だから見んな」
その微妙な反応に、しかし嘘をついているとは思わなかった正は推測があっていたと頷き、総はそれを聞いた途端、すぐさま男子たる透を心配する。
「じゃあトールも駄目だよな。というか、誠と悠太は…」
「心配すんな、俺らは良い!正、総の目ぇ塞いでくれ!」
総があまりにも質問で攻めるために痺れを切らした悠太は半ば強引にエンターキーを押せるように話を進める。
「はーい!」
と言う声と共に、正は目を閉じ隣の総の目蓋を押さえた。数秒後、合図と共に目を開けた一同は右手の指の隙間からパソコンを見ていた誠と共に、真っ黒い画面に白い文字を追う。
「これがあいつがこのサイトに出入りしてた時間だ。」
マウスで悠太は多くの文字を上へ上へと送ると、最も最新、利用した時間帯が写し出される。数字は今日を指していた。それは悠太達が初めて見つけた時に開いた時に書き込まれた、ほんの一時間前の時間のことだ。そしてその上は、丁度クラスのほとんどが失踪した日の深夜二時頃で、利用時間は二時から四時である。
「二時から四時、だから…じゃあ少なくともこの時間はまだパソコンと向かい合ってたってことになるよね。だから少なくとも四時から透が起きる大体六時までの間に失踪したってことだ!」
そう結論付けた誠に、透は異論を唱えた。
「待って」
「え、なんだ?」
「パソコンを閉じずに失踪し、電源切れで自動的にパソコンが切れたとすれば…事が起きたのは二時から四時って可能性もあるよ。充電器ささってるし、もしかすると…このパソコン、初め電源切れてなかった?」
「あ…」
「そういや、パソコン見っけた時電源切れてたな…盲点だった。ま、上出来だろ?」
悠太はパソコンを閉じると、気を取り直して視線を集まっている七人に向ける。
「と、まあこれが収穫の一つ」
「ひとつ?」
「そ、私も見つけたんだよ、女子寮の階でね!」
そうバチンとウインクしたアリスは自信に満ち溢れていた。今日、アリスが明るいのは核心的な収穫があるからかもしれないと、正珠は何となく感じた。
「ほら、これ」
アリスは短いワンピースとも、長いトップスとも取れる緑の洋服の、その中の短いズボンのポケットから、四つ織りにされたチラシを取り出した。
「それは…?」
「文月の部屋の入り口に落ちてたの。文月には悪いけど勝手に中身を見たんだ。ところで空」
アリスは空が持ったままの、手提げのスクールバッグを指差した。
「昨日の夜、噂について教えてくれたよね?」
「うん。確か事故現場の後に建った建物で噂されてる…」
そう言いながら空はノートを取り出し、五頁目をパッと開いてチェックのテーブルクロスへ置いた。
「事故から一年後、事故の起きた山である建物が建てられたの。今までその建物は建てる、建てないで地主と酷くもめてたらしいけど、何故か時間的に事故の後…地主は幽霊とかを信じるタイプの人らしくてね、いきなりその土地を売ったらしいんだ。だからなにかその場所の近くで事件か事故があったんじゃないのかって一部でささやかれてるって。タイミングと場所的に、二十一年前のバス事故で間違いないよ。」
「そう!それで建物の目的が、年に一度国内の富豪が集まって仮面パーティーっていうパーティーを行うの!その山の建物と建物の近くは地主さんが土地を売ってからは立ち入り禁止になって、ますます事故のことが調べにくくなってるんだ。それでそれで!四つ折りのこれがその会場の設計書って書かれてたの。どう、無関係じゃなさそうでしょ?」
つまりは、二十一年前の事故の後、恐らくその事故が起きた場所を含めた山の土地が売られ、建物が建った。そしてその場所辺りは立ち入り禁止になっていて、調べにくい状況にある。そこに偶然、建物に関連したパーティーの資料が文月の部屋に無造作に落ちていたということだ。
――事故には何か裏があるかもしれない。そしてその裏は、失踪者の手がかりに繋がるかもしれない。
憶測ではあるが、しかしそれは信用できる憶測であった。
「ふうむ、確かに偶然にしちゃあ出来すぎてるね。凄い成果だよ、アリス!」
自信満々に胸を張るアリスに正珠は思わず抱きついた。身長差が十五センチある二人では、こういう甘えも容易い。アリスもこういうのは慣れっこなので、軽く抱きしめ返してやると、正珠は満足そうに明後日の方向へ指を向ける。
「さあ行こう!仮面パーティーに皆で突撃だぁ!!きっと大丈夫!」
「おー!」「おー」
総は大きく、光は軽く右腕をあげ、ノリに乗ってテンションをあげていく。こういう時、光は案外ノリが良いのだ。総は透を見ると、無理矢理に右手を上へとかざさせる。光の冷ややかな視線で、誠は慌てて天井に右手を突き上げる。
そんないつもの通りの光景は、しかし他のメンバーにとっては心なごむ瞬間となったのであった。
《皆がいなくなる前、狼クラスは野外学習として山奥の工場を訪れた。そこは狼学園の卒業生が経営している会社で、毎年見学許可を出してくれている、学園と縁の深い繊維工場だった。
左耳の上に桜の花弁の髪止めを、左耳の後ろから垂れた赤茶色の髪を先端の方でハートの髪止めで止めている女性は、頃合いを見計らって喋る、彼女は工場の社長にしては若い。
「初めまして、この会社の経営者の『赤弓 弓子』です。ちょっとややこしいけど、気軽にユミユミって呼んでください!今日はよろしくお願いしますね」
そう言って、気さくでフレンドリーに弓子は笑った。
そして続いて初対面の、若いとはいえ正珠達と二十歳は離れているだろう女性を簡単にユミユミとは呼べないクラスの代表は、少し戸惑いながらも一歩前に出る。二列横隊で並ぶ狼クラスの誰かに向けて、弓子が握手を求めたからだった。
握手の短い間、透は少し悩んでから、「よろしくお願いします、ええと、ゆ…ユミユミ、さん」とたじろぎながらも言いきった。
透は予定にはない行動を臨機応変に行いながら、ふと、視界に入った弓子の後ろの広葉樹に囲まれた小さな工場を見る。工場ではあるものの、壁の塗装が所とごろ彩られている為に目に入りやすいのだ。
透が一歩下がると、弓子は担任である暁の方を見る。
「では今から案内しますね。あ、暁先生、これで全員ですか?」
「はい、そうです」
「じゃあ行きましょうか。」
そう言うと、弓子はぞろぞろと生徒達を引率する。その間正珠はひとつ、疑問に思い、隣の従姉、『星村 桃花』に耳打ちを打った。
「ユミユミさんの左手…さっきから全然動かないね。痺れてるのかな?こう…腕枕で…」
「そ、それはないと思うけど…確かに不思議」
「義手だ。」
直後、クラスメイトの一人の夜が背後から二人に教える。
「そうなんだ、良くわかったね」
「まあな。」
それだけ言うと、青ベースの髪色に水色が混ざった髪の毛を持つ夜は、即座に顔を引っ込める。無愛想な夜をいつもの事だと特に気にもせずに離れた工場へと歩いていると、今度はその夜の隣を歩く『赤崎 誠』が苦笑いを夜に向けた。
「夜、折角答えたんならそんなそっけなくたって良いじゃないか」
「別に。いつもの事だろ。それより、お前の彼女の方が俺よりひどいと思うけど?」
冷ややかな目を向ける夜に、誠はわかりやすく赤面しながら慌て出す。
「なっ、べ、別に今光さんは関係ないだろ!」
「誠うるさい」
「そっちが先に言ってきたんじゃないか!」
後ろから耳に入る二人の仲睦まじい会話を桃花は思わず笑った。
「仲良いね、二人。従兄弟…だったっけ?」
「従兄弟とか血縁者同士ってこのクラスに多いよねぇ」
「だね…フフ」
従妹にあたる正珠がどことなく他人事のように言うので、桃花はそれがまたおかしく感じて、思わず笑みが溢れた。》
「…とりあえず落ち着こうぜ」
声が震えつつも唱えた総により、他のメンバーも幾分か冷静さを取り戻す。総自身も自分に言い聞かせるように言った為に、少しの余裕が出てくる。
「仕組まれてた…かもなんて、今更だろ。二十一年前の事故と似ていることも、そもそもその隠された事故があったこともわかったんだし、可能性がないわけなかったんだ。」
「…そうだね、総の言う通りだ。寧ろそのお陰で何か分かるかもしれないよ」
「何かって、なに。」
「ええと、それは分かんないな…」
光の端的な指摘に咄嗟に答えられなかった透の代わりに、今の状況をまとめようと正珠は口にして整理した。
「まあまあ、一旦整理しよ!せーじゅ達は今回の失踪事件において、手がかりがほとんどなにもない状況だ。だけど今、努力のお陰で二十一年前の事故と非常に関連深いってことがわかった。そんで、ついさっき総が言ったんでしょ、仕組まれてるかもってね」
「そうだな!それに、逆に言ったら、少なくともこれが神隠しだっていう可能性は減ったってことだ!…な、他に気がついたことは…トールはなんか無い?」
総は、五センチほど上の透に視線を送った。透はそれに答えるべく頭を使う。
「うーん…………あ。もしこの失踪が二十一年前と関連しているなら、事故で生き残ったのは教師含めた五人ってことになるんだ。日付は曖昧だから言及できないから考えないでおくとして…今クラスには八人残ってるから…このまま失踪事件が解決しなければ、更に四人、それとこの前の運転手さんとバスガイドさんがいなくなるかもしれない…かな。」
一斉に、表情が暗くなる。
いたって真顔の透の語尾の弱くなった発言は的確である。
つまるところ、結局、進展こそしたが皆が失踪した手がかりになるようなものは見つかっていないのだ。
いや、寧ろこれは…
「いや、駄目じゃねえか!?」「駄目じゃんか!」「駄目じゃない!?」「…駄目」
落胆した心を持ち直したところで、更なる絶望が垣間見えた。
今でも失踪した理由が分からないというのに、更に打つ手もなく人が減るとなると、これはもう、どうすれば良いかも分からない。
実際、呟くように言った透本人の額にも、一筋の汗が流れ落ちた。
――それから十秒も満たずに、時計が丁度一時を指した時。
「あ、お前ら何してるんだ?」
ガラリ、と鳴るドアの音と同時に太い声が響き、一気に教室内の注目を集める。
「暁先生!」
青ベースの髪色に水色が混ざった、背の高い教師は教卓に集まる五人をいぶかしげに見つめる。今年で教師二十二年目の彼は、正珠達が一年の頃からの担任だ。教師担った時からずっとどこかしらの担任だという暁は、ある事情から他教師から苦労人と呼ばれている…と、正珠は最近知ったばかりだ。
「今は自習中だぞ。自分の席に戻れ。学級委員も一緒になって何してるんだ、全く…」
いつもは明るい暁も、疲労が多く溜まっているのか大きくため息をつく。そこにはいつもとかわらない毎日が見えているかのように。もう何日もかわらない、揺るぎない態度だ。
そんな暁に、正珠は我慢ならずに詰めよった。
「先生、教室見ておかしいって思わない!?」
「ん?お前らが席に座ってないことか?」
「違うよ!人数が少なすぎるでしょ!?せーじゅ達、二十九人クラスだったじゃん!」
「あ?…何言ってるんだ、狼クラスは元から八人だろ。特別クラスなんだからな。」
正珠達と同じように目に隈を作った暁は、まっすぐに睨む正珠から視線を外すと教室を見渡す。
「あ…?」
そう、その教室には何人かが足りていないのだ。何十人も足りていない時の動揺では詰め寄ることが出来なかった。
そして今、その次の動揺を見過ごさなかった空は、正珠の援護として畳み掛けようとする。
「先生、そもそも一日中自習だなんておかしいです!授業は!?」
「大人の事情だ」
「それ、説明できない、ってこと。」
「先生、教えてください!」
そう言って全員で詰め寄るが、そんな必死な思いは届かず、暁はうざそうに一喝する。その瞳孔の奥には激怒の念が、炎となって荒ぶり燃えていた。
「良いから自習しとけ!」
ぐっ、と総は一瞬口を閉じる。しかし今回、暁が怒りを露にしたのは初めてだった。そんな隙を逃すことはしなかった。怒るということは、なにか裏を知っている証明にもなる。
「先生、いい加減俺達に協力してくださいよ!前の警察も追っ払っちゃったし!」
「ああ、警察は総が連絡したのか。ふざけるのは止めろ。警察もただじゃねえんだぞ。後で反省文な」
「ええ!?」
そう、クラスメイトが失踪して初めに手詰まりとなった時、当初から総は提案していた通報を実行した。
が、怪しみながらも学校に来た少数の警察はあっさりと言いくるめられて去っていったのだった。以来、電話をかけても対応はしてくれなかった。
しかし結果としてイタズラ電話として片付けられてしまった以上、否定することも出来ず、総は必死に脳内の引き出しから言葉を引き出そうとするが、スピードが極度に遅い。
そんな総を庇うため、透は慌てて弁明する。
「ちょっ、待ってください!確かに実行したのは総ですけど、それなら同意した俺にも責任はあります!それに俺は通報が間違っていたとは思っていない!」
咄嗟に声を荒あげた透はあからさまに総を庇うと、暁はつまらなさそうに透を睨む。
「そうか…がっかりだな。俺、透のことは信用していたんだぞ。俺を裏切ったな」
「なっ…う、裏切るだなんてそんな…!」
暁の煽ろうとしているともとれる口許は、素早く饒舌に語る。
「お前は聡明だから、総のような奴を諌めてくれると思っていたんだがな。親友だろ、そんなことも出来ないのか」
「ちょっと、そんな言い方…!」
「なんだ、総を庇うために透が反論して、透を庇うために空が反応して…お前ら本当に仲が良いな?次空を庇うのはどっちだ、正珠か?光か?」
「鬱陶しい」
我慢ならなくなって、感情のこもっていないようなトーンで光は良い放った。ただその眼光はギラついており、ギューピックジルコニアのように強過ぎる光が反射する。
それにはさすがの暁にも煽りの笑みが消え、再び不機嫌そうに光を見下ろした。
同時に、チャイムがなった。
光の側で何か言おうとしている正珠をよそに、暁は踵を返す。
「んじゃあ俺、職員室に戻るわ。六時間目も自習だ。やる気無いなら寮に戻っても良いぞ。どうせこのクラスは八人しかいないんだからな。」
扉が閉められる。
正珠は一瞬暴力によって無理矢理問いつめようと拳を上げたが、総の『ある言葉』を思い出して、思い止まる。
結果として正珠達は嵐のような暁に、ただ呆然と立ち尽くすだけだった。
総は追いかけようとしたが、そこで踏みとどまる。今はこれ以上問いつめてはいけないと、暁を信頼するゆえに思ったからだった。
まだ外では雨が降り、六時間目を告げるチャイムも鳴っていないお昼時、五人は僅かに体を少し濡らしながらも寮の玄関へと帰ってきた。
紫色の傘を閉じた正珠は靴を脱いでスリッパに履き替える。
「反省文とか何書けってんだよ…」
とがっくりと肩を落とした総を含めた五人は既に疲労困憊していた。
そんな五人をタイミング良く迎え入れたのは、誠だった。
「あ、お帰り皆!」
そしてその後から、二人の影もゆらりと出てくる。
「お帰り!ねえねえ、凄い進歩があったんだよ!ね、ユータ!」
「ああ!とりあえず食堂に集まろうぜ!」
嬉々として五人を呼んだのは、『楠木 アリス』と『楠木 悠太』だ。髪や目がそっくりで、まるで双子…いや、ドッペルゲンガーのような二人は、高校よりも前に出会ってはいるが、決して血が繋がっているわけではなかった。尤も、今後婚姻関係が結ばれる可能性は高いが。
アリスと悠太は疲れきった五人を見て、揃って同じような反応を見せる。おずおずとアリスは五人を順に見つめる。
「…元気無いのはわかるけど…決めたじゃん、皆見つけるまでは立ち止まらないって、ね?」
「アリスの言う通りだ。特に…」
悠太は五人を見終えたあと、オーラが滲み出ている総の方へと歩み寄る。
「いつもの幼稚なくらい元気なお前はどこ行ったんだよ、正もさ、笑えとはいわねえが俺がいる限りは何とかするからな、安心しろよ!」
そう言うと、悠太は親指を自らに立て、笑顔を見せる。便乗するように隣に並び、アリスも優しく微笑んだ。
「空も透君も!ほらほら光だって、ダブル楠木がいるんだから、なんとかなる!」
その途端、悠太は変顔を披露した。たまらず総と正は大笑いをし、空と透は口許を抑え笑い、いつもは無表情な光も僅かに笑みをこぼした。
少し遅れて隣にいたアリスや誠すらも巻き込んで、寮は一時的に笑顔が生まれる。
「プッ、な、なんだそれ!!アハハハ!!」
「いっ、いきなり変なことしないでよ!!アハハ!」
バシンとアリスは悠太の背中を笑いながら叩き、呼吸困難になってしまいそうなほど息は乱れる様は更に笑いを呼び起こした。
「あー、笑った笑った!」
「そうか、それは良かった!」
暫く笑った後、正珠達は食堂の隅で失踪した内の一人である大の画面を眺めていた。
悠太は充電器のささったパソコンの黒のノートパソコンに向かい合ったまま口を開く。ロックは既に解除されて、ホーム画面が写っていた。しかしそのパソコンは、悠太のものではない。
「何で悠太が大のパソコンを持ってるんだ?」
「この際だから、俺とアリスと誠はマスターキーを使って消えた連中全員の部屋を調ベる手筈だろ?」
「何人かのパソコンは見つけたんだけど、基本的にはロックがかかっててさ。でも、大のパスワードは前に一回か二回聞いててな。しかもあるサイトのパスワードも、パソコンの裏に書かれてたんだ」
「不用心だよねー!」
成果のあまりない五人を気遣ってか、アリスはわざと明るい声で話す。それにいち早く感づいた総は、同じように反応を返す。
「なるほど~!で、何がわかったんだ?」
「注目すべきは、履歴だ。」
カタカタと素早くパソコンのキーを操作する悠太は、パソコンを立ち上げた時のパスワードだけでなく、何らかのサイトのパスワードを打ち込んでいることに空は驚く。
「悠太くん、履歴って、何の履歴?」
「なにって、ちょっと厳重にロックがかかってる、アレなサイト」
特に気にすることもなく言い放った悠太に対して、意味を理解した空は少し赤面になり、透は顔をしかめ、既に知っているアリスと誠は呆れ顔と苦笑いを決める。
ただ、全くわかっていない総は首をかしげた。
「え、アレって何だ?」
「アレはアレだよ、わかるだろ」
「アレ…痛々しい日記か?」
「それはそれでアレだな…お、一瞬サイトのホームページに飛ぶから、見たくないやつは目え閉じとけ。特に女子。…いや、総もだな」
「えっ、まさかグロいやつなのか!?」
「あーそうそう、だから見んな」
その微妙な反応に、しかし嘘をついているとは思わなかった正は推測があっていたと頷き、総はそれを聞いた途端、すぐさま男子たる透を心配する。
「じゃあトールも駄目だよな。というか、誠と悠太は…」
「心配すんな、俺らは良い!正、総の目ぇ塞いでくれ!」
総があまりにも質問で攻めるために痺れを切らした悠太は半ば強引にエンターキーを押せるように話を進める。
「はーい!」
と言う声と共に、正は目を閉じ隣の総の目蓋を押さえた。数秒後、合図と共に目を開けた一同は右手の指の隙間からパソコンを見ていた誠と共に、真っ黒い画面に白い文字を追う。
「これがあいつがこのサイトに出入りしてた時間だ。」
マウスで悠太は多くの文字を上へ上へと送ると、最も最新、利用した時間帯が写し出される。数字は今日を指していた。それは悠太達が初めて見つけた時に開いた時に書き込まれた、ほんの一時間前の時間のことだ。そしてその上は、丁度クラスのほとんどが失踪した日の深夜二時頃で、利用時間は二時から四時である。
「二時から四時、だから…じゃあ少なくともこの時間はまだパソコンと向かい合ってたってことになるよね。だから少なくとも四時から透が起きる大体六時までの間に失踪したってことだ!」
そう結論付けた誠に、透は異論を唱えた。
「待って」
「え、なんだ?」
「パソコンを閉じずに失踪し、電源切れで自動的にパソコンが切れたとすれば…事が起きたのは二時から四時って可能性もあるよ。充電器ささってるし、もしかすると…このパソコン、初め電源切れてなかった?」
「あ…」
「そういや、パソコン見っけた時電源切れてたな…盲点だった。ま、上出来だろ?」
悠太はパソコンを閉じると、気を取り直して視線を集まっている七人に向ける。
「と、まあこれが収穫の一つ」
「ひとつ?」
「そ、私も見つけたんだよ、女子寮の階でね!」
そうバチンとウインクしたアリスは自信に満ち溢れていた。今日、アリスが明るいのは核心的な収穫があるからかもしれないと、正珠は何となく感じた。
「ほら、これ」
アリスは短いワンピースとも、長いトップスとも取れる緑の洋服の、その中の短いズボンのポケットから、四つ織りにされたチラシを取り出した。
「それは…?」
「文月の部屋の入り口に落ちてたの。文月には悪いけど勝手に中身を見たんだ。ところで空」
アリスは空が持ったままの、手提げのスクールバッグを指差した。
「昨日の夜、噂について教えてくれたよね?」
「うん。確か事故現場の後に建った建物で噂されてる…」
そう言いながら空はノートを取り出し、五頁目をパッと開いてチェックのテーブルクロスへ置いた。
「事故から一年後、事故の起きた山である建物が建てられたの。今までその建物は建てる、建てないで地主と酷くもめてたらしいけど、何故か時間的に事故の後…地主は幽霊とかを信じるタイプの人らしくてね、いきなりその土地を売ったらしいんだ。だからなにかその場所の近くで事件か事故があったんじゃないのかって一部でささやかれてるって。タイミングと場所的に、二十一年前のバス事故で間違いないよ。」
「そう!それで建物の目的が、年に一度国内の富豪が集まって仮面パーティーっていうパーティーを行うの!その山の建物と建物の近くは地主さんが土地を売ってからは立ち入り禁止になって、ますます事故のことが調べにくくなってるんだ。それでそれで!四つ折りのこれがその会場の設計書って書かれてたの。どう、無関係じゃなさそうでしょ?」
つまりは、二十一年前の事故の後、恐らくその事故が起きた場所を含めた山の土地が売られ、建物が建った。そしてその場所辺りは立ち入り禁止になっていて、調べにくい状況にある。そこに偶然、建物に関連したパーティーの資料が文月の部屋に無造作に落ちていたということだ。
――事故には何か裏があるかもしれない。そしてその裏は、失踪者の手がかりに繋がるかもしれない。
憶測ではあるが、しかしそれは信用できる憶測であった。
「ふうむ、確かに偶然にしちゃあ出来すぎてるね。凄い成果だよ、アリス!」
自信満々に胸を張るアリスに正珠は思わず抱きついた。身長差が十五センチある二人では、こういう甘えも容易い。アリスもこういうのは慣れっこなので、軽く抱きしめ返してやると、正珠は満足そうに明後日の方向へ指を向ける。
「さあ行こう!仮面パーティーに皆で突撃だぁ!!きっと大丈夫!」
「おー!」「おー」
総は大きく、光は軽く右腕をあげ、ノリに乗ってテンションをあげていく。こういう時、光は案外ノリが良いのだ。総は透を見ると、無理矢理に右手を上へとかざさせる。光の冷ややかな視線で、誠は慌てて天井に右手を突き上げる。
そんないつもの通りの光景は、しかし他のメンバーにとっては心なごむ瞬間となったのであった。
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