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CASE11 心の中

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「情けない話だけど……」


ってアゲハが話始めようとしたけど…ランさんが部屋に入ってこない。


だから、もういいやって思ってアゲハの話を黙って聞くことにした。


「自分から言い出したのに……みんなの役に少しでも立てたらって思ったから。。。でも、頭はぐちゃぐちゃな感じで……嫌なことばかり思い出して……みんなに、、みんなの迷惑にだけは……なりたくないから、、」


アゲハの言葉は結構まとまっていないから

きっと何も考えないで今の思いを口にしているんだろうね。


そういうのはいつものアゲハらしくはないけどさ

言って楽になるなら…って思ったから私はただ、黙って手を重ねたまま。



「少し昔を……みんなに出会った頃を………あの時の感情とかね、思い出した」


「私を…日本に帰してすぐくらい?」


「そう……精神的に一番辛い時期だったなぁって、、、だって、自分を取り戻した翌日に、空たちと別れた………けど、、俺の中では核を埋められてすぐって感覚で……本当は自分自身の存在が怖い、世界は知らない、ひとりぼっちで……本当に、辛かった……」



あの時のアゲハは本人の体感的には核を埋められた翌日に私と別れたんだ……。


知らない世界にひとりぼっちって……どれだけ孤独だったんだろう、、、


「この町でさ、最初……殺されそうになった時、、、自分がこの町の人を殺したから仕方ないって気持ちと、、、今の自分は危険じゃないのにって気持ちと……人から向けられる憎悪が、怖かった………殺したいほど誰かに憎まれるなんて、向こうの世界じゃありえない……」


ここまで話して、私から目を反らした。


「……だからね、この時、、生きることを、諦めた。俺が死んで喜ぶ人はいても悲しむ人はいないって……そう思ったから、、」


アゲハの言葉に、、私は何も言えなかった。


アゲハの心の中に入ったせいで、アゲハにはその時の気持ちとか…強く思い出させて苦しめたんだって、分かったから……。


「みんなと出会って、みんなが俺にとって信頼できる大切な人たちになってからは……みんなの役に立ちたくて、、みんなの為になれるのが嬉しくて……でも、親友が、エドガーの息子が俺のせいで死んだ時………もういいかな?って、また生きるのを諦めた。今死んだら悲しむ人はいるし、シブキと同じ世界に行けるかもしれないから……だけど、、」


だけど?


続きを待っていたら、再びアゲハが私を見て

それから、優しい笑顔を向けてくれた。



「空たちがまた来ちゃうから……この世界に。だから、生きなきゃって、、空をまた帰すまでは死ねないって、思い直した」


「私……たちの、おかげ?」


「そんな感じ。だから、今、俺は生きているんだと思う………空がいなかったらこの世界で、俺は生きてはいけなかったよ……」



大袈裟だよ。


きっと、私がいなくてもみんながアゲハを支えたと思うよ?



「だから、、ありがとう。いつもそばにいてくれて……本当に感謝してる………」


改めて言われるとこう……むず痒いね。


「私も感謝してるよ?今日も、私にも全部教えてくれたし…アゲハがいたからレジスタンスのみんなとうまくやれてるんだと思う」


「別に俺がいなくても…レジスタンスのみんなはいい人しかいないから、大丈夫だったはずだよ」



アゲハは本気で全幅の信頼をレジスタンスに寄せているから

だから当たり前のようにそう言えるんだろうね。



その時

開けっぱなしにしたままのドアの先で


鼻を啜る音が聞こえた……―――――



「……誰か、いるの?」


アゲハはちょっと身構えたけど、私は分かるよ。


廊下にいるのは、ランさんだよ。
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