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CASE10 傷痕

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「起こし方が雑!」


ドア側が私が使っているベッド。

つまり、必然的に蹴られたのは私のベッド。


だけど、アゲハも目は覚めているっぽい。

ぼんやりとしてるっていうか……目の焦点があってない……?



「だから、医者がもう来る。支度しろ………」


………私の言葉、シカトされた。

まぁいいけどさ。


ゼロさんの視線はアゲハ。

やっぱり、、ちょっと変……かも。



「……治療は、、しない、」


ポツリと静かにそう言って、両手で顔を覆った。


「もう嫌だ………絶対に、何もされたくない、、」


……今日の話の、せいかな?

鮮明に思い出しちゃって辛いとか?


最後の方は声が震えていたから、ゼロさんも何も言わなかった。




アゲハがどんなに嫌がっても、放っておいていい状態ではない。

だから、半ば強制で怪我の治療、しているんだけど、、、


右手は私の手を握りながら左腕で顔を隠してて

ずっと涙声で「もうやめて」って言い続けている状態。


今日は調子が悪いからって、仰向けの状態で治療しているから、先生もちょっとやりにくそうで

だからこそ、治療に時間がかかる悪循環。


どうにかしてあげたくても、私にはどうもできない。

それがすごく、もどかしい。


先生の手がアゲハの胸に触れた時、

身体が震えて、それから起き上がろうとしたから、エドガーが肩を押してベッドに沈めた。



「もう終わるから……もう少しだけ、我慢だ」


「いやだっ……もう、、いいから……」


「すぐ終わる。怖がる事はないから、、」



アゲハは本当に嫌みたいで、私の手を痛いくらいに握ってる。

たぶん、無意識。




「もう、やめて……おとうさん、」



涙声で呼んだのは……エドガーなのか、本当のお父さんなのか。


エドガーが一番驚いていたけど、それからエドガーが泣きそうな顔に変わった。


「すまない、アゲハ……あと少しで、終わるから」



治療が終わってもアゲハは服を着ることすらできなくて

泣きはらした焦点が合わない目で、ずっと天井を見ていた。


私と繋いでいた手も離れて、全身から力が抜けたみたいになっている。



「では、私はこれで。明日も今日くらいの時間に来ます」


先生はアゲハがどんなに治療を嫌がっても、必ずまた来てくれる。

先生が患者にあんな嫌がられて、治療するのが嫌にならないのかな?って思うけど、そんな素振りもないんだよね。


「………いつも、ごめんなさい、」


上を向いたまま、独り言みたいにアゲハが呟いて、それは先生の耳にも届いていた。

ニコッと笑って「お大事に」ってだけ言って部屋を出ていった。



部屋に残ったのは、私とゼロさんとアゲハの三人。


今更だけど、ゼロさん今日来るの早くない?


「朝メシ、どーする?」


「……いらない、たべたくない、」


アゲハの場合、今は食べれる状態でもないと思うけど……。

アゲハの答えにゼロさんはチッて思いっきり舌打ちしたけど、今は許してあげてよ、マジで。


「ソラは食えるだろ?俺が色々持ってきたから適当に食べろ」


「色々?ゼロさんの手作り……?」


「なワケねーだろうが。コイツは俺が見てるからさっさと食ってさっさと戻ってこい」


ゼロさんに半ば強制的に朝ご飯の名目で部屋から出されたけど

一階に行けばテーブルの上には大量のタッパー。


エドガーとレオンが一個ずつ開けて中を見てるけど、タッパーだけで10個はあるよ。


「すごい量だね……誰からなの?」


「妻からのようだが……すごいな、全部アゲハが好きな物だ」


アイリーンさんからの料理の差し入れの中には、1つだけお弁当箱があった。

中身は10個のタッパーの中身の詰合せだったんだけど

お弁当箱は確実にアゲハ用。

スープまで、別の容器で用意されていた。

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