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CASE4 レジスタンス

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「ところでさ、俺は別に井黒はどーだっていいんだけど……アンタ達…いや、レオン達はこの世界にいる弱い奴らを守るために戦ってるんだろ?」


アゲハについてどーだっていい!?

私が辛島くんを睨んだら、隣にいた桃華も口をあんぐり開けていた。

さっきまでの話の流れで、どーだっていいって……。


「イグロ……?」

「アゲハの事です」


すかさず答えたらレオンさんは納得したみたい。

そういえば、名字の概念、ないんだっけ?


「弱い奴らを守る…とは少し違うかもしれないな。俺たちのためでもあるからな。誰だって死にたくないし、奴隷になりたくもない。救済者の世界になれば平和に生きられるって勘違いしてるヤツ多いんだよ。救済者に貢ぎさえすれば変わらぬ生活ができると思い込むヤツ。そうじゃないって知ってる俺たちだから、戦う事を選んだだけだ」


「へぇ」って言った辛島くんは何か楽しいことを思い付いたのか、結構悪い顔をして身を乗り出した。


「じゃあさ、俺も入れてよ、レジスタンスに」


「お!自ら志願するとは予想外だねぇ」


辛島くんの発言にレオンは嬉しそうだけど!

待って!

辛島くん、どうしたの急に!


「さっき変な犬に襲われた時、井黒はあっさり倒したじゃん?ムカついた。俺にできない事を簡単にできるアイツに。レジスタンスにいれば強くなれそうだし」

「辛島くんいきなりどーしたの!?強くなるとか、ゲームじゃないんだよ!?」


さすがに桃華も口出しをしたけど、桃華の言う通り。

戦うって……。しかもレジスタンスで、相手は破壊者と救済者の両方って……。

命がいくつあっても、足りないよ。


「だって、どーせ元の世界には簡単に戻れないだろうし……。虹野だって井黒が帰れなきゃ帰らないだろ?なら、井黒と行動するしかねーじゃん。それに俺、魔法とか剣とかで戦うってやっぱ憧れた時期あったから、それが体験できるってスゲー楽しそうじゃん」


……辛島くんの目的はたぶん最後に語ったヤツが本音なんだと思う。

ずいぶん楽しそうなんだもん。


「あ、前のゲートはもうないよ。アゲハも予想してたけど…花将軍が壊したの」


ルーラの話だと、アゲハがレジスタンスに加わってから一度だけ花将軍と戦ったらしい。

で、アゲハに対して猛烈な戻ってこいアピールをして、アゲハはもちろん拒否。

花将軍は万が一アゲハがカードを取り戻した場合、アゲハが元の世界に戻るのを恐れてゲートを破壊したんだって。


話は分かったけど……猛烈な戻ってこいアピール??


「アゲハ…かなり花将軍のお気にいりみたいでな………。ヤバかったぜ?アゲハへの愛を語る姿が。花将軍と言えば救済者一の美女って噂なのに、、、完全にアゲハに片想いの女状態!」

「やめなよ、レオン。アゲハだってドン引きしてたんだから。あんまり言うのは可哀想だよ」


レオントルーラノ会話から、前に見た花将軍を思い返した。

ベタベタベタベタ、アゲハ触りまくってたっけ。

ベタベタ、ベタベタ、ベタベタとね。


とりあえず、嫌い。花将軍が。



「と、まぁゲートはアゲハへの愛で壊れちまったから残るはそれぞれの皇帝が持つと言われる二つだけ。他にもあるかも知れねーが見つかったという噂も聞かねぇからな」

「つまり、アゲハを抜きにしても私たちが帰るためには破壊者か救済者のゲートが必要……」

「そういう事だ!」


元の世界に帰るには、かなりハードル高いんだね。

まぁ、仕方ない。

分かっててこっちに来たっていうのもあるし。


「じゃあ私も、レジスタンスに入るかな?」


私が言った直後


桃華の絶叫が、中に響いた。


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