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CASE2 同調-シンクロ-
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――――――――――
――――――――――
ニャンさんは“時の魔法使い”だった。
ユートピアで数少ない魔法らしく、光の魔法同様に人を移動する事も可能。
一応ルール的なのはあるらしいけど……ニャンさんは別の地下の居住区に全員を移動させた。
アゲハを治療したのもニャンさんとルーラのおかげ。
ニャンさんがアゲハが助かる可能性がある時までルーラとアゲハの時間を戻して、ルーラが小刀を抜いてから治癒の水で傷を塞いだんだって。
時を戻す魔法はかなり高度な技らしく、数年間は使えないだろうって話してた。
「傷は塞いだだけ。私はそんなすごい魔法は使えないからこれが限界。あとは本人次第だけど大丈夫じゃない?新人類なんだから」
ルーラは心底やりたくなかったって様子だったけど助けてくれた。
だけど、もちろん他のみんなの目は厳しくて。
私はアゲハが寝てる部屋から一歩も動かないしアゲハが起きるまで寝ないって決めた。
何が起きるか分からない。そんな空気でピリピリしていたから。
「井黒くん、起きないね…」
桃華と辛島くんも私に付き合って同じ部屋でアゲハが起きるまで待機状態。
たまにうなされて苦しそうにしてるからアゲハの事を放っておけなくて傍にずっとついていた。
「マジで色々言いたいことも聞きたいこともあるけど…それ、本当に井黒?別人みたいだけど……」
「どう見たって井黒くんでしょ!」
馬鹿なの?って言いたげな態度で桃華が聞くから辛島くんが舌打ちをした。
「見た目じゃねーよ!虹野と空から落ちてきた時に魔法で衝撃をなくそうとしたり、でっかい声あげて指示したり……そんなヤツじゃなかった気がする ……」
辛島くんはアゲハをよく知らないから。
だからそう思うのかな?
「私からしたら、アゲハらしい行動だよ。優しい人だから」
「優しい人は私を刺したり両親を殺したりしない」
ルーラにそう言われると返す言葉がなくなる。
どうしてなのか、本人に聞くしかないよね。
アゲハの傍で、手を握りながら起きるのを待っていたら少し、手が動いた。
「アゲハ……?」
顔を覗きこんだらゆっくりと目が開いて、視線は私に移った。
「おはよう、そら」
そう言って私の頭をポンって撫でた。
小さい頃、アゲハが起きるといつもそうだった一連の流れ。
ただ寝てるだけでも、もう起きないんじゃないかって怖くて……だから起きたら必ず挨拶をしてから頭を撫でて慰めてくれた。
だって毎回、私が泣いてるんだもん。
一人で勝手に不安になって、勝手に泣いてるだけなのに。いつもアゲハは謝って慰めてくれる。
「ごめんね。もう泣くなって……大丈夫だから」
「私がっ!大丈夫じゃないのっ!!」
「こんなに泣く姿見たの、久しぶりだなぁ……最近はかっこいい空しか記憶にないのに」
かっこいい私ってなんなんだよっ!?
って普段なら言えるんだけど、今は無理。
だって普通に話してるんだよ?
生きてるんだよ?
私が、殺そうとしたのに。
「色々話そうか、お互いに」
私が泣き止んで落ち着いた頃、アゲハが静かにそう言って身体を起こした。
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ニャンさんは“時の魔法使い”だった。
ユートピアで数少ない魔法らしく、光の魔法同様に人を移動する事も可能。
一応ルール的なのはあるらしいけど……ニャンさんは別の地下の居住区に全員を移動させた。
アゲハを治療したのもニャンさんとルーラのおかげ。
ニャンさんがアゲハが助かる可能性がある時までルーラとアゲハの時間を戻して、ルーラが小刀を抜いてから治癒の水で傷を塞いだんだって。
時を戻す魔法はかなり高度な技らしく、数年間は使えないだろうって話してた。
「傷は塞いだだけ。私はそんなすごい魔法は使えないからこれが限界。あとは本人次第だけど大丈夫じゃない?新人類なんだから」
ルーラは心底やりたくなかったって様子だったけど助けてくれた。
だけど、もちろん他のみんなの目は厳しくて。
私はアゲハが寝てる部屋から一歩も動かないしアゲハが起きるまで寝ないって決めた。
何が起きるか分からない。そんな空気でピリピリしていたから。
「井黒くん、起きないね…」
桃華と辛島くんも私に付き合って同じ部屋でアゲハが起きるまで待機状態。
たまにうなされて苦しそうにしてるからアゲハの事を放っておけなくて傍にずっとついていた。
「マジで色々言いたいことも聞きたいこともあるけど…それ、本当に井黒?別人みたいだけど……」
「どう見たって井黒くんでしょ!」
馬鹿なの?って言いたげな態度で桃華が聞くから辛島くんが舌打ちをした。
「見た目じゃねーよ!虹野と空から落ちてきた時に魔法で衝撃をなくそうとしたり、でっかい声あげて指示したり……そんなヤツじゃなかった気がする ……」
辛島くんはアゲハをよく知らないから。
だからそう思うのかな?
「私からしたら、アゲハらしい行動だよ。優しい人だから」
「優しい人は私を刺したり両親を殺したりしない」
ルーラにそう言われると返す言葉がなくなる。
どうしてなのか、本人に聞くしかないよね。
アゲハの傍で、手を握りながら起きるのを待っていたら少し、手が動いた。
「アゲハ……?」
顔を覗きこんだらゆっくりと目が開いて、視線は私に移った。
「おはよう、そら」
そう言って私の頭をポンって撫でた。
小さい頃、アゲハが起きるといつもそうだった一連の流れ。
ただ寝てるだけでも、もう起きないんじゃないかって怖くて……だから起きたら必ず挨拶をしてから頭を撫でて慰めてくれた。
だって毎回、私が泣いてるんだもん。
一人で勝手に不安になって、勝手に泣いてるだけなのに。いつもアゲハは謝って慰めてくれる。
「ごめんね。もう泣くなって……大丈夫だから」
「私がっ!大丈夫じゃないのっ!!」
「こんなに泣く姿見たの、久しぶりだなぁ……最近はかっこいい空しか記憶にないのに」
かっこいい私ってなんなんだよっ!?
って普段なら言えるんだけど、今は無理。
だって普通に話してるんだよ?
生きてるんだよ?
私が、殺そうとしたのに。
「色々話そうか、お互いに」
私が泣き止んで落ち着いた頃、アゲハが静かにそう言って身体を起こした。
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