Don't be afraid

コウ

30

母さんは下を向いたけど、表情が俺が知ってる母さんになった


隣にいるユウジさんも目を見開いている



「やっぱり………

コウは……嘘をついたのね……」


この言葉から、今の母さんは父さんたちの死を理解してる母さんだって分かった

いつもみたいに「生きてる」とは言わなかったから


今なら本当の親子の会話が、できるかもしれない



「信じてもらえないと思うけど、忘れていた

自分が被っているから自分のだって……信じて疑わなかった

あの時、思い出せなくてごめん、、


母さんは嘘なんて言っていなかった


それなのに、親戚や近所の人から悪く言われて辛かったよね、、


本当に、ごめんなさい」



そう言って頭を下げた


罵倒されたり暴れたりするかな？


って思ったけど母さんは何も言わないまま



顔をあげたら下を向いたまま、固まっていた



「母さん？大丈夫？」


「今更………今更………」



ようやく聞こえたのは『今更』という言葉


呟くようにブツブツと言っている



その通りだよね


もう、遅いかもしれない



「これから、母さんがあの事件の事で誰かから悪く言われたら俺が『違う』って言うから

『母さんは嘘なんて言っていなかった』って、言い続ける


今の俺にはそれくらいしかできなくて、、ごめんなさい」



母さんは何も答えてくれなかった


ブツブツと『今更』という言葉も言わなくなって


全員が無言のまま、ただ時間だけが流れた