21 / 42
3章
21 幻の魔法
しおりを挟む長い悪夢を見ていた。
ヴァイザーがグレンツェに剣を向け言い放つ。
「無魔力など価値がない、二度と私の前に現れるな」
「っ、!!」
目を覚ませばそこはグレンツェの寝室だ。
(私、建国祭の式典に出てたはずなのに、、)
「っ、いたっ、」
起き上がれば激しい頭痛とめまいが襲う。
(何をしていたんだっけ、、貴族の方に挨拶をして、、、そうだエティーナさんにっ、!)
そこでだんだんと建国祭のことを思い出してきた。
(旦那様はなんて思ってるんだろう?やっぱりエティーナさんと結婚するのかしら、、)
グレンツェはヴァイザーと今後どうなるのかが心配でそのことだけがぐるぐると頭の中を回っていた。しばらくベットの上でぼーっと考えていれば扉が開いた。
「奥様!!目が覚めたのですね!!」
「レイ、、」
レイは目に涙を溜めながらグレンツェの方へ駆け寄ってくる。
「本当に心配してたのですよ、、!3日も目を覚まさないんですもの!」
「3日!?」
どうやらグレンツェは相当寝てしまっていたらしい。
「はい、魔力に当てられすぎてしまったようで中々目を覚まさなかったのです、、。あっ!そうだ!当主様にお伝えしなければ!!少々お待ちください!」
慌ただしく部屋を出ていったレイの背中を見守りつつこれから来るであろうヴァイザーになんと言われるのか不安でグレンツェの目には涙が浮かぶ。
(どうして、、今すぐ追い出される訳じゃない、)
そう頭の中では考えるのに涙は止まらなかった。心の奥底でヴァイザーを取られたくないと叫んでいる。本物の愛はいらないから捨てないで欲しいと。
ぽたぽたとこぼれる涙は握りしめたこぶしに落ちては滲んでいった。
(早く泣き止まなきゃ、旦那様に迷惑だわ、、)
「何をそんなに泣いている?どこか痛いのか?」
「っ!」
声をする方を見ればヴァイザーが心配そうにグレンツェを見ていた。
「だん、、ヴァイザー様、なんでもないのです」
グレンツェはヴァイザーに笑いかける。
「無理に笑うな。呼び方についてもエティーナになにか言われたか?」
「っ、いえ、何もありません、」
本当はここで言ってしまいたかった。エティーナに言われたこと、そしてエティーナの元に行かないで欲しいこと。でもそんなことを言えば確実にヴァイザーを困らせてしまうとグレンツェは分かっていた。
(旦那様は優しいもの、、)
「何も無くてなぜこんなにも泣いているのだ?」
ヴァイザーはグレンツェの頬に手を添えると涙を拭うように優しくまぶたにキスした。
「っ、!旦那様っ!?あっ、、」
「そう呼べと言ったはずだ」
ヴァイザーはまたまぶたにキスをし赤くなったグレンツェを見つめる。
「すまなかった。私の隣にいれば安全だと言いながらグレンツェから目を離した、私の失態だ」
「いえっ、そんなことはありません」
「エティーナがしたことは許せない、だが他にもいろいろ問題があってな、、エティーナはシュバルツ家で一応協力関係でもある。むやみに罰することも出来なければ利用されていた可能性もある。まぁグレンツェを利用しようとしたのはエティーナだが、」
「だ、旦那様は、、エティーナさんがす、好きなのではないですか?」
「エティーナがそう言ったのか?」
「いえっ!ですがとてもエティーナさんを信頼していたように思いましたし、、」
「確かにエティーナは小さい頃から一緒だったが私が好きなのは、、、っそんなことよりもグレンツェに想い人がいるというのは本当か?」
ヴァイザーは急に真剣な顔になるとぐっとグレンツェに迫ってくる。
「え、あっ、いや、いません」
(旦那様のことは自分でも好きかどうか分からない、そもそも誰かを好きになったことなんてないもの。旦那様はなんというか、特別?な気持ちだ)
ヴァイザーははぁーと深いため息をつくと言った。
「まぁ、誰にも渡すつもりはないが」
「え、?」
「私の妻はグレンツェしかいないということだ」
「え?でもエティーナさんが『運命』として、、表向きのつ、妻となるのではないですか?」
「そんなことあるわけないだろう、全てまともに受けるな。信じるのは私の言葉だけでいい。」
「っ、はい、、!」
(旦那様の隣にいられるってことよね?うれしい、、)
グレンツェは安心のあまりまた涙が溢れた。
「泣くほど私の妻になれることが嬉しいか?」
「はいっ!!」
からかうように言ったヴァイザーに対し真剣な返事をしたグレンツェは嬉しさと安心でヴァイザーが顔を赤くし俯いていることに気づかなかった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる