2 / 8
金なしなので護衛任務を受ける
しおりを挟む
リーゼとの一夜を、いや。
ひと時を過ごした後、俺は直ぐに荷物を整えて馬車の停留所に向かった。
この街からプレイテスまではざっと20キロはある。その為、プレイテス行きの馬車は早朝から出発する事が良くある。
そして運良く今日がその日だ。
お陰で、気不味い気持ちでまた1日、この街で過ごさずに済む。
停留所に着き、目的地行きの馬車を見つけた。
「すまない、この馬車はプレイテス行きの馬車であっているか?」
馬に繋いだ縄を眠そうに掴んでいる運転手に聞いてみる。一応確認は必要だ。これで違う馬車だと何かと辛い。
唯でさえ、昨夜の出来事で気が滅入っているのだ。
「そうだよ。…にいちゃん、あんた冒険者かい?」
「そうだけど」
俺は腰に剣を携えていた事に気付いた。
おそらくこれを見て、俺が冒険者なのだと思ったのだろう。
「なら丁度いい。あんたこの馬車に乗るんだろ?だったらついでにこの馬車の護衛をしてくれないか?」
「護衛…か?」
「そうさ、護衛だ。最近プレイテスまでの道中で賊やら魔獣の目撃証言があってね。冒険者ギルドに依頼しようと思ったが、何せ今は金がなくてね。勿論其れ相応の報酬は出すつもりだ?どうかな?」
そうゆう事か。確かに最近は、魔獣の出現頻度が増えていると、耳にした事がある。
プレイテスまでの道のりは、もろにその魔獣出現区域だ。
まぁついでみたいなものだし、お金もあって損する訳じゃなし。
「プレイテスまでなら、引き受けよう」
「そりゃ良かった。助かるよ」
◾️◾️◾️
護衛を引き受けて馬車が出発してから約1時間。
今は颯爽と生い茂る草原を走行中である。
世界の主導権が完全に太陽へと移り終える現在。
景色を遮る遮蔽物が少なく、遥か遠方に広がり続ける地平線を一望できる。
素朴だが、人の視線を惹きつけるには十分な絶景と言えた。
「いい景色でしょ、お客さん?」
「ああ、いい景色だ。とても心地良い」
「はっはっはっは。お客さんは見る目があるねぇ。この辺りは何の味気が無いからって、他の馬車はそんなに使わない道なんですよ。今時の若者でこの景色がわかるとは、兄ちゃんは将来大物になるねぇ」
「いやいや。そんなに大層な人間じゃ無いよ。俺はただのしがない冒険者さ」
この馬車を選んだのは正解だった。
馬車の運転手も気の良い人で話しやすいし、馬車の設備も整っている。
ここは草原で魔獣出現地帯。
遮蔽物がないこの一帯だと、身を隠す事ができない為、魔獣に見つかったら逃げられない。
そんな危険なルートを選んだのは、この景色を俺に見せたかったのかもしれない。
別にそうじゃ無くても、とても嬉しい。
心の傷が徐々に癒えていくのを感じる。
それからしばらく進んだ所で遠くから地響きが聞こえてきた。
音の大きさから、恐らくは魔獣だ。
運転手のおっさんは気付いていないようだったので、衝突する前に教える。
「遠くから魔獣が近づいてきますよ?」
「本当かい?どんな魔獣だい?」
「気配の大きさと、この一帯の魔獣出現分布からして、多分ディノサイドンだと思う」
「ディノサイドンか、遭遇すると厄介だな。どうする、兄ちゃん?このまま迂回すると、プレイテスの町に着くには少し時間がかかるが?」
「いや、このままで問題ない、通常通りのスピードとルートで頼む。ディノサイドン程度なら、余裕だ」
「ほほう、それはそれは頼もしい限りだ。信じてるぜ兄ちゃん!」
「任せといてくれ」
そして案の定、この馬車はディノサイドンの、それも群れに遭遇した。
完全に包囲された状態で、ディノサイドン達は縄張りが荒らされると勘違いし激情している様子。
「兄ちゃん?さっきは信用してるぜと言ったが、本当に大丈夫だよな?」
馬車のおっさんもその激情したディノサイドンの形相を見て不安感を煽られたらしくそんな言葉を掛けてくる。
「大丈夫だ、問題ない!大船に乗ったつもりでいて良いぞ!」
その不安の要素を取り除くべく、不敵の笑みで答える。
その笑みを見ておっさんは少し安心したらしく「そうか、なら任せる」と言ってくれた。
無論、問題ない相手だ。
いくら攻撃力に欠けるとはいえ、中級モンスターであるディノサイドンなら、踊りながらでも倒せる。
俺は相棒である夜色の剣を構えて、刹那、一番ガタイの良いディノサイドンの背後に回り込み、首を切り落とす。
集団戦闘において、リーダ格の奴らから狙うのは定石だ。
少したじろぐディノサイドン達も、一斉に攻撃を仕掛けようと突進してくるが、その勇気もご苦労様といった感じで、地面に這わせたミスリル製の糸に躓き倒れたディノサイドン達を一網打尽にしていく。
僅か数秒で、ディノサイドンの群れは壊滅した。
「なっ?だから言ったろ。問題ないってさ」
あまりに一瞬の出来事に呆然としていたおっさんは我を取り戻し高らかに笑った。
「はっはっはっは!いや~お見それした!まさかここまでとは!ふはははははは!」
素直に驚いてくれるのだから、此方としても良い気分だ。
糸を回収して再び馬車に乗り、目的地であるプレイテスの町を目指した。
ひと時を過ごした後、俺は直ぐに荷物を整えて馬車の停留所に向かった。
この街からプレイテスまではざっと20キロはある。その為、プレイテス行きの馬車は早朝から出発する事が良くある。
そして運良く今日がその日だ。
お陰で、気不味い気持ちでまた1日、この街で過ごさずに済む。
停留所に着き、目的地行きの馬車を見つけた。
「すまない、この馬車はプレイテス行きの馬車であっているか?」
馬に繋いだ縄を眠そうに掴んでいる運転手に聞いてみる。一応確認は必要だ。これで違う馬車だと何かと辛い。
唯でさえ、昨夜の出来事で気が滅入っているのだ。
「そうだよ。…にいちゃん、あんた冒険者かい?」
「そうだけど」
俺は腰に剣を携えていた事に気付いた。
おそらくこれを見て、俺が冒険者なのだと思ったのだろう。
「なら丁度いい。あんたこの馬車に乗るんだろ?だったらついでにこの馬車の護衛をしてくれないか?」
「護衛…か?」
「そうさ、護衛だ。最近プレイテスまでの道中で賊やら魔獣の目撃証言があってね。冒険者ギルドに依頼しようと思ったが、何せ今は金がなくてね。勿論其れ相応の報酬は出すつもりだ?どうかな?」
そうゆう事か。確かに最近は、魔獣の出現頻度が増えていると、耳にした事がある。
プレイテスまでの道のりは、もろにその魔獣出現区域だ。
まぁついでみたいなものだし、お金もあって損する訳じゃなし。
「プレイテスまでなら、引き受けよう」
「そりゃ良かった。助かるよ」
◾️◾️◾️
護衛を引き受けて馬車が出発してから約1時間。
今は颯爽と生い茂る草原を走行中である。
世界の主導権が完全に太陽へと移り終える現在。
景色を遮る遮蔽物が少なく、遥か遠方に広がり続ける地平線を一望できる。
素朴だが、人の視線を惹きつけるには十分な絶景と言えた。
「いい景色でしょ、お客さん?」
「ああ、いい景色だ。とても心地良い」
「はっはっはっは。お客さんは見る目があるねぇ。この辺りは何の味気が無いからって、他の馬車はそんなに使わない道なんですよ。今時の若者でこの景色がわかるとは、兄ちゃんは将来大物になるねぇ」
「いやいや。そんなに大層な人間じゃ無いよ。俺はただのしがない冒険者さ」
この馬車を選んだのは正解だった。
馬車の運転手も気の良い人で話しやすいし、馬車の設備も整っている。
ここは草原で魔獣出現地帯。
遮蔽物がないこの一帯だと、身を隠す事ができない為、魔獣に見つかったら逃げられない。
そんな危険なルートを選んだのは、この景色を俺に見せたかったのかもしれない。
別にそうじゃ無くても、とても嬉しい。
心の傷が徐々に癒えていくのを感じる。
それからしばらく進んだ所で遠くから地響きが聞こえてきた。
音の大きさから、恐らくは魔獣だ。
運転手のおっさんは気付いていないようだったので、衝突する前に教える。
「遠くから魔獣が近づいてきますよ?」
「本当かい?どんな魔獣だい?」
「気配の大きさと、この一帯の魔獣出現分布からして、多分ディノサイドンだと思う」
「ディノサイドンか、遭遇すると厄介だな。どうする、兄ちゃん?このまま迂回すると、プレイテスの町に着くには少し時間がかかるが?」
「いや、このままで問題ない、通常通りのスピードとルートで頼む。ディノサイドン程度なら、余裕だ」
「ほほう、それはそれは頼もしい限りだ。信じてるぜ兄ちゃん!」
「任せといてくれ」
そして案の定、この馬車はディノサイドンの、それも群れに遭遇した。
完全に包囲された状態で、ディノサイドン達は縄張りが荒らされると勘違いし激情している様子。
「兄ちゃん?さっきは信用してるぜと言ったが、本当に大丈夫だよな?」
馬車のおっさんもその激情したディノサイドンの形相を見て不安感を煽られたらしくそんな言葉を掛けてくる。
「大丈夫だ、問題ない!大船に乗ったつもりでいて良いぞ!」
その不安の要素を取り除くべく、不敵の笑みで答える。
その笑みを見ておっさんは少し安心したらしく「そうか、なら任せる」と言ってくれた。
無論、問題ない相手だ。
いくら攻撃力に欠けるとはいえ、中級モンスターであるディノサイドンなら、踊りながらでも倒せる。
俺は相棒である夜色の剣を構えて、刹那、一番ガタイの良いディノサイドンの背後に回り込み、首を切り落とす。
集団戦闘において、リーダ格の奴らから狙うのは定石だ。
少したじろぐディノサイドン達も、一斉に攻撃を仕掛けようと突進してくるが、その勇気もご苦労様といった感じで、地面に這わせたミスリル製の糸に躓き倒れたディノサイドン達を一網打尽にしていく。
僅か数秒で、ディノサイドンの群れは壊滅した。
「なっ?だから言ったろ。問題ないってさ」
あまりに一瞬の出来事に呆然としていたおっさんは我を取り戻し高らかに笑った。
「はっはっはっは!いや~お見それした!まさかここまでとは!ふはははははは!」
素直に驚いてくれるのだから、此方としても良い気分だ。
糸を回収して再び馬車に乗り、目的地であるプレイテスの町を目指した。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王妃様、残念でしたっ!
久保 倫
ファンタジー
私、ロザリンド・メイアは、14歳にしてクルス王子と婚約しました。
それは、借金を断る私の父ニールスと借金を申し込むクルス王子とのやり取りの中で生まれた代物です。
14歳で商売を始めた尊敬する父から、3人の優秀な侍女(という部下)を付けてもらい、私は宮中にクルス王子の婚約者として、出入りすることとなりました。
平民出身と軽く見られる私ですが、父のご縁で優秀な軍人と宮廷魔術師から支援を受け、商売を始めます。
若干14歳の私の細腕繁盛記、お付き合いくださいませ。
作者注
この作品は拙作「婚約破棄は結構ですけど」の前日譚です。
読まずともわかるように書いていきますが、ご興味あれば読んでいただけると幸いです。
……それにしても、後日譚を求める声があったのに前日譚書くのってどーよ、と思ってますがお付き合い頂ければ光栄です。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした
think
ファンタジー
ざっくり紹介
バトル!
いちゃいちゃラブコメ!
ちょっとむふふ!
真面目に紹介
召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。
そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。
ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。
皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは
リビングメイルだった。
薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが
マモリタイ、コンドコソ、オネガイ
という言葉が聞こえた。
カイは迷ったが契約をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる