7 / 28
短編
日常2
しおりを挟む
「はい。オムライス。」
「え!めちゃくちゃ美味しそう!」
付き合って4ヶ月、
アイ君は1週間に2日ほどうちにくるようになった。
出勤前に少しの日もあればお昼から来る日もある。
泊まりとかはまだしたことがない。
今日はお昼からだったからご飯を作ってみた。
前はウーバーしたから手料理は初めて。
念のため食べるか聞いてみたらキラッキラの笑顔で食べる!と即答されたので簡単だけどオムライスを作った。
キラキラした目でオムライスを見てくれててなんだかむず痒い。まずかったらどうしよう。
「それはどうも。ケチャップは自分でかけてね。」
「え、最近僕の言うことわかってます?」
「いやー?そんなことないよ。」
「ハートにしてもらおうと思ったのに。」
「ごめん知ってた。」
「ちえ。かけてよー。」
子供か。
アイ君が俺に何か1アクションして欲しいのはいつもの話。
俺がしないのもいつもの話。
「やーだね。ほら、食べろ。」
「ちえ。」
今日も軽くいなしてやったらでましたよ、ちえ。が。
なあ、俺先輩だぞ。
まあ口で言うだけいいけど。拗ねててかわいいからいいけど。
いや俺も救いよう無いな。
「食べないなら今日の俺の夕飯にするけど?」
なんか悔しいのでとりあえず脅してみる。
「ごめんなさい!すぐに食べます。」
途端にスプーンを持つアイ君。
ちょっと脅すとしゃきっとするの面白い。
「よろしい。」
「作ってくださってありがとうございます。いただきます。」
そうやってちゃんとお礼を言うところ好きだよ。
「どうぞ。」
「ん!おいし!え!うま!」
「それはどーも。」
満面の笑みで美味しいと伝えてくれるからこちらまで嬉しくなる。
作ってよかった。
「めちゃくちゃ美味しいです!え、すご。さきさん天才ですか?」
ただちょっと大袈裟だけど。
「ありがと。でもそんな褒めるもんじゃ無いよ。」
「いやいや、僕料理できないんでできる人尊敬しますよ。」
「そうなの?やってみればいいのに。器用なんだから。」
「昔大失敗して以来やらないって決めました。」
それは意外だ。なんでもできると思ってた。
料理もしてると思ってた。
ほら、イケメンだから。
胡椒高い位置から振ってそうじゃん。
「アイ君でも失敗する事あるんだね。」
「そりゃもちろん。」
「へー意外。」
「僕のことなんだと思ってるんですか。」
「完璧でイケメンで生意気な後輩。」
「後輩…けん?」
「…恋人。」
「よし。」
ちゃんと言わせるもんな。本当ぬかりないよな。
「アイ君って意外と欲しがるよね。」
「だって事実ですから。」
「まあ…ね。」
「恥ずかしいんだ。」
にやにやするのやめろ。
「うるせえ黙れ。」
「さきさんもすぐ口悪くなる。」
「うるせえよ。俺は心を許した人には毒舌なの。」
やべ、墓穴掘ったかも。
「ふーん…心を許した人…ねぇ。」
さらににやにやしてこちらを見てくる。
こいつ本当に生意気になったな。
「もうオムライス没収。」
「え!待って待って!全然食べてない!」
皿を取り上げると子供のように手を伸ばして返せと訴えてくる。
「うるせえ。欲しかったら黙って食え。」
「あ、また口悪い。もー。俺のこと大好きなんだからー。」
まだからかうか。
「次言ったら家から出す。」
「おとなしく食べます。」
「よろしい。」
脅した瞬間しゃきっとしてスプーンを持つもんだから本当に面白い。
皿を戻してやって俺も食べる。
「ん。うまい。」
我ながらいい出来だ。
「やっぱさきさん天才ですよ。」
「やっぱアイ君大袈裟だな。」
「俺、毎日さきさんのご飯食べたいです。」
急に真剣な声で言うもんだから少しびっくりした。
それはどう言う意味なんだろうか。
処理できなくて、オムライスから視線を外すことができない。
「あ…えと。」
蚊の鳴くような声が出てしまう。
「あー、ごめんなさい。変な言い方した。
また作ってもらえますか?本当に美味しかったから。」
「あ、う、うん。全然作るよ!今度はアイ君の好きなもの作る。」
「本当ですか?じゃあ生姜焼き食べたいです!」
「生姜焼きね。わかった。準備しとく。」
一瞬同棲を考えてしまった。
でもその後の反応を見るとどうやら深く考えすぎたようだ。
そりゃあそうだ。
ホストだし、お互い女の子を家に入れることもあるし。
アイ君だってわかっているのだから、そんなお誘いがあるわけないのだ。
そもそも、普通に毎日食べたいってだけで同棲まで考えてしまった自分が恥ずかしい。
普通に考えて何の意味もない褒め言葉でしょ。
だめだ。ちょっと悲しくなってしまった。
勝手に考えて勝手に凹んでるのバカすぎる。
何か別の事を話そうとアイ君の方を見ると、まだ真剣な顔をしていた。
「アイ君?」
「さきさん。いつかでいいんで、毎日ご飯作ってくださいね。俺洗濯と掃除するから。」
「え…。」
ずるい。本当にずるい。
何でわかっちゃうの。
きっとアイ君は俺が最初に考えたことも、今ちょっと悲しくなってしまったことも、全部わかってる。
ちくしょう。だから売れるんだよなぁこいつは…。
「だめ?」
「いつかね。いつか。」
こんなにストレートに伝えてくれるのに俺はこんな返ししかできない。
「へへ。ありがとうございます!楽しみにしてます!」
それでも本当に嬉しそうに笑うから、俺までポカポカしてくる。
「お前には敵わねえよ…。」
「売上の話?」
「殴る。」
やっぱポカポカ違う!本当生意気!
「え!めちゃくちゃ美味しそう!」
付き合って4ヶ月、
アイ君は1週間に2日ほどうちにくるようになった。
出勤前に少しの日もあればお昼から来る日もある。
泊まりとかはまだしたことがない。
今日はお昼からだったからご飯を作ってみた。
前はウーバーしたから手料理は初めて。
念のため食べるか聞いてみたらキラッキラの笑顔で食べる!と即答されたので簡単だけどオムライスを作った。
キラキラした目でオムライスを見てくれててなんだかむず痒い。まずかったらどうしよう。
「それはどうも。ケチャップは自分でかけてね。」
「え、最近僕の言うことわかってます?」
「いやー?そんなことないよ。」
「ハートにしてもらおうと思ったのに。」
「ごめん知ってた。」
「ちえ。かけてよー。」
子供か。
アイ君が俺に何か1アクションして欲しいのはいつもの話。
俺がしないのもいつもの話。
「やーだね。ほら、食べろ。」
「ちえ。」
今日も軽くいなしてやったらでましたよ、ちえ。が。
なあ、俺先輩だぞ。
まあ口で言うだけいいけど。拗ねててかわいいからいいけど。
いや俺も救いよう無いな。
「食べないなら今日の俺の夕飯にするけど?」
なんか悔しいのでとりあえず脅してみる。
「ごめんなさい!すぐに食べます。」
途端にスプーンを持つアイ君。
ちょっと脅すとしゃきっとするの面白い。
「よろしい。」
「作ってくださってありがとうございます。いただきます。」
そうやってちゃんとお礼を言うところ好きだよ。
「どうぞ。」
「ん!おいし!え!うま!」
「それはどーも。」
満面の笑みで美味しいと伝えてくれるからこちらまで嬉しくなる。
作ってよかった。
「めちゃくちゃ美味しいです!え、すご。さきさん天才ですか?」
ただちょっと大袈裟だけど。
「ありがと。でもそんな褒めるもんじゃ無いよ。」
「いやいや、僕料理できないんでできる人尊敬しますよ。」
「そうなの?やってみればいいのに。器用なんだから。」
「昔大失敗して以来やらないって決めました。」
それは意外だ。なんでもできると思ってた。
料理もしてると思ってた。
ほら、イケメンだから。
胡椒高い位置から振ってそうじゃん。
「アイ君でも失敗する事あるんだね。」
「そりゃもちろん。」
「へー意外。」
「僕のことなんだと思ってるんですか。」
「完璧でイケメンで生意気な後輩。」
「後輩…けん?」
「…恋人。」
「よし。」
ちゃんと言わせるもんな。本当ぬかりないよな。
「アイ君って意外と欲しがるよね。」
「だって事実ですから。」
「まあ…ね。」
「恥ずかしいんだ。」
にやにやするのやめろ。
「うるせえ黙れ。」
「さきさんもすぐ口悪くなる。」
「うるせえよ。俺は心を許した人には毒舌なの。」
やべ、墓穴掘ったかも。
「ふーん…心を許した人…ねぇ。」
さらににやにやしてこちらを見てくる。
こいつ本当に生意気になったな。
「もうオムライス没収。」
「え!待って待って!全然食べてない!」
皿を取り上げると子供のように手を伸ばして返せと訴えてくる。
「うるせえ。欲しかったら黙って食え。」
「あ、また口悪い。もー。俺のこと大好きなんだからー。」
まだからかうか。
「次言ったら家から出す。」
「おとなしく食べます。」
「よろしい。」
脅した瞬間しゃきっとしてスプーンを持つもんだから本当に面白い。
皿を戻してやって俺も食べる。
「ん。うまい。」
我ながらいい出来だ。
「やっぱさきさん天才ですよ。」
「やっぱアイ君大袈裟だな。」
「俺、毎日さきさんのご飯食べたいです。」
急に真剣な声で言うもんだから少しびっくりした。
それはどう言う意味なんだろうか。
処理できなくて、オムライスから視線を外すことができない。
「あ…えと。」
蚊の鳴くような声が出てしまう。
「あー、ごめんなさい。変な言い方した。
また作ってもらえますか?本当に美味しかったから。」
「あ、う、うん。全然作るよ!今度はアイ君の好きなもの作る。」
「本当ですか?じゃあ生姜焼き食べたいです!」
「生姜焼きね。わかった。準備しとく。」
一瞬同棲を考えてしまった。
でもその後の反応を見るとどうやら深く考えすぎたようだ。
そりゃあそうだ。
ホストだし、お互い女の子を家に入れることもあるし。
アイ君だってわかっているのだから、そんなお誘いがあるわけないのだ。
そもそも、普通に毎日食べたいってだけで同棲まで考えてしまった自分が恥ずかしい。
普通に考えて何の意味もない褒め言葉でしょ。
だめだ。ちょっと悲しくなってしまった。
勝手に考えて勝手に凹んでるのバカすぎる。
何か別の事を話そうとアイ君の方を見ると、まだ真剣な顔をしていた。
「アイ君?」
「さきさん。いつかでいいんで、毎日ご飯作ってくださいね。俺洗濯と掃除するから。」
「え…。」
ずるい。本当にずるい。
何でわかっちゃうの。
きっとアイ君は俺が最初に考えたことも、今ちょっと悲しくなってしまったことも、全部わかってる。
ちくしょう。だから売れるんだよなぁこいつは…。
「だめ?」
「いつかね。いつか。」
こんなにストレートに伝えてくれるのに俺はこんな返ししかできない。
「へへ。ありがとうございます!楽しみにしてます!」
それでも本当に嬉しそうに笑うから、俺までポカポカしてくる。
「お前には敵わねえよ…。」
「売上の話?」
「殴る。」
やっぱポカポカ違う!本当生意気!
3
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる