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短編

日常2

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「はい。オムライス。」

「え!めちゃくちゃ美味しそう!」

付き合って4ヶ月、
アイ君は1週間に2日ほどうちにくるようになった。

出勤前に少しの日もあればお昼から来る日もある。
泊まりとかはまだしたことがない。

今日はお昼からだったからご飯を作ってみた。
前はウーバーしたから手料理は初めて。
念のため食べるか聞いてみたらキラッキラの笑顔で食べる!と即答されたので簡単だけどオムライスを作った。

キラキラした目でオムライスを見てくれててなんだかむず痒い。まずかったらどうしよう。

「それはどうも。ケチャップは自分でかけてね。」

「え、最近僕の言うことわかってます?」

「いやー?そんなことないよ。」

「ハートにしてもらおうと思ったのに。」

「ごめん知ってた。」

「ちえ。かけてよー。」

子供か。
アイ君が俺に何か1アクションして欲しいのはいつもの話。
俺がしないのもいつもの話。

「やーだね。ほら、食べろ。」

「ちえ。」

今日も軽くいなしてやったらでましたよ、ちえ。が。
なあ、俺先輩だぞ。
まあ口で言うだけいいけど。拗ねててかわいいからいいけど。
いや俺も救いよう無いな。

「食べないなら今日の俺の夕飯にするけど?」

なんか悔しいのでとりあえず脅してみる。

「ごめんなさい!すぐに食べます。」

途端にスプーンを持つアイ君。
ちょっと脅すとしゃきっとするの面白い。

「よろしい。」

「作ってくださってありがとうございます。いただきます。」

そうやってちゃんとお礼を言うところ好きだよ。

「どうぞ。」

「ん!おいし!え!うま!」

「それはどーも。」

満面の笑みで美味しいと伝えてくれるからこちらまで嬉しくなる。
作ってよかった。

「めちゃくちゃ美味しいです!え、すご。さきさん天才ですか?」

ただちょっと大袈裟だけど。

「ありがと。でもそんな褒めるもんじゃ無いよ。」

「いやいや、僕料理できないんでできる人尊敬しますよ。」

「そうなの?やってみればいいのに。器用なんだから。」

「昔大失敗して以来やらないって決めました。」

それは意外だ。なんでもできると思ってた。
料理もしてると思ってた。
ほら、イケメンだから。
胡椒高い位置から振ってそうじゃん。

「アイ君でも失敗する事あるんだね。」

「そりゃもちろん。」

「へー意外。」

「僕のことなんだと思ってるんですか。」

「完璧でイケメンで生意気な後輩。」

「後輩…けん?」

「…恋人。」

「よし。」

ちゃんと言わせるもんな。本当ぬかりないよな。

「アイ君って意外と欲しがるよね。」

「だって事実ですから。」

「まあ…ね。」

「恥ずかしいんだ。」

にやにやするのやめろ。

「うるせえ黙れ。」

「さきさんもすぐ口悪くなる。」

「うるせえよ。俺は心を許した人には毒舌なの。」

やべ、墓穴掘ったかも。

「ふーん…心を許した人…ねぇ。」

さらににやにやしてこちらを見てくる。
こいつ本当に生意気になったな。

「もうオムライス没収。」

「え!待って待って!全然食べてない!」

皿を取り上げると子供のように手を伸ばして返せと訴えてくる。

「うるせえ。欲しかったら黙って食え。」

「あ、また口悪い。もー。俺のこと大好きなんだからー。」

まだからかうか。

「次言ったら家から出す。」

「おとなしく食べます。」

「よろしい。」

脅した瞬間しゃきっとしてスプーンを持つもんだから本当に面白い。
皿を戻してやって俺も食べる。

「ん。うまい。」

我ながらいい出来だ。

「やっぱさきさん天才ですよ。」

「やっぱアイ君大袈裟だな。」

「俺、毎日さきさんのご飯食べたいです。」

急に真剣な声で言うもんだから少しびっくりした。
それはどう言う意味なんだろうか。
処理できなくて、オムライスから視線を外すことができない。

「あ…えと。」

蚊の鳴くような声が出てしまう。

「あー、ごめんなさい。変な言い方した。
また作ってもらえますか?本当に美味しかったから。」

「あ、う、うん。全然作るよ!今度はアイ君の好きなもの作る。」

「本当ですか?じゃあ生姜焼き食べたいです!」

「生姜焼きね。わかった。準備しとく。」

一瞬同棲を考えてしまった。
でもその後の反応を見るとどうやら深く考えすぎたようだ。
そりゃあそうだ。

ホストだし、お互い女の子を家に入れることもあるし。
アイ君だってわかっているのだから、そんなお誘いがあるわけないのだ。

そもそも、普通に毎日食べたいってだけで同棲まで考えてしまった自分が恥ずかしい。
普通に考えて何の意味もない褒め言葉でしょ。

だめだ。ちょっと悲しくなってしまった。
勝手に考えて勝手に凹んでるのバカすぎる。

何か別の事を話そうとアイ君の方を見ると、まだ真剣な顔をしていた。

「アイ君?」

「さきさん。いつかでいいんで、毎日ご飯作ってくださいね。俺洗濯と掃除するから。」

「え…。」

ずるい。本当にずるい。
何でわかっちゃうの。
きっとアイ君は俺が最初に考えたことも、今ちょっと悲しくなってしまったことも、全部わかってる。

ちくしょう。だから売れるんだよなぁこいつは…。

「だめ?」

「いつかね。いつか。」

こんなにストレートに伝えてくれるのに俺はこんな返ししかできない。

「へへ。ありがとうございます!楽しみにしてます!」

それでも本当に嬉しそうに笑うから、俺までポカポカしてくる。

「お前には敵わねえよ…。」

「売上の話?」

「殴る。」

やっぱポカポカ違う!本当生意気!
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