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短編

日常

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「さきさん。」

「んー?」

付き合って3ヶ月が経った。
割と家で会うことが多くて、俺の家のソファで俺を抱えてる事が当たり前になったアイ君は、今日も俺を抱きしめながら名前を呼んでくる。

正直ちょっとくすぐったいからやめてほしい。

「俺のこと好きになってきたでしょ。」

「は!?」

あぶねえ。牛乳飲んでたら吐いてた。

「え、何急に!」

「いやー?なんか、こないだのデートの後くらいから思ってたんだんですけど、俺が抱きしめるのどんどんまんざらでもなくなってくし、なんか話しかけると嬉しそうだし。あと店でよく目が合うようになったんで。」

「………。」

こないだっていつだ。動物園か?
初デート以降もカフェと、先週は動物園に行った。
ほとんど家で会ってたけど。慣れてきたんだ。

だからといって店で見てるのかよ…。アイ君にはああ言ったもののバレるとよくないし?あんまり見ないように心がけてたのに…!

…トイレ行こ。

「さきさん。逃げない。」

「逃げてない逃げてない。」

「途中退席は認めません。」

「ちえ。」

「あ、舌打ち俺に似てきた?」

「似たくなかったんだけど…!」

「あはは。好きでしょ?俺のこと。」

本当にこの男はなんでこんなに自信があるんだよ。

「まあ元々嫌いじゃなかったし…」

「大好きになっちゃった?」

「だいっ…好きじゃないことも無い。」

「あはは!かわいい。んふふ。」

上機嫌で頭をわしゃわしゃされる。
やめて今とっても恥ずかしい。
ていうか俺のが年上だし…
何この子供扱い。

「ね、好きって言ってよー。」

「え、いま?」

「いま。」

待って恥ずかしい。待って。ちょっと待ってよ。
でも言わないのもなー。そうだ。

「アイ君のこと大好き」

「さきさんそれだめ。それ営業用ですよね。」

「ばれたか。」

「語尾にわざとらしいハート見えたもん。」

「わらう。」

「ね、本当のやつちょーだい。」

「えー。」

「俺のこと仕事なんですか…?」

覗き込んで悲しそうな顔をしてくるアイ君。
お前ずるいだろそれは。そんなわけないじゃん。

顔面も本当にずるい。
誰だってその整った顔を歪ませたくはないし、そもそもそれを完全に利用してきてるのがずるい。
どっちが仕事用だよ。

「はぁ…ごめんって。
…アイ君好きだよ。大好き。
まってめちゃくちゃ恥ずかしい。」

「はぁー!僕も好きです!んふふ。嬉しい。ありがとうございます。」

上機嫌になってぎゅーっと抱きしめてくる。

「ほんっとーにかわいい。まじで好きです。さきさん。本当に好き。俺も大好き。」

こいつまじでストレート。心臓に悪い。本当に恥ずかしい。

「わかった、わかったからやめて!恥ずかしい…」

「可愛いなぁ。女の子に言うでしょ?慣れてるじゃん。」

そこで出すかよ。デリカシーとムードは?

ていうかお前もこんなに女の子にしてんの?
ずっと抱きしめてんの?

「アイ君は違うでしょ。」

そう言ってやると上がっていく口角。

「んふふ。そうだよね。」

こいつこの回答目当てで言ったな。ふざけんな。

「さきさんが恥ずかしがるのは俺の前だけにして下さいね。俺もこんなにデレるのさきさんだけだし、ずっと抱きしめてるのもさきさんだけだから。」

欲しい言葉を言われてびっくりする。
仕事だからしょうがないけれど、恋人として不安なところ。
でもしっかりと言葉にしてくれるから信じられる。

だから売れるんだなこいつ。

「わかったよ。ありがと。」

「んふふ。可愛い。はー…好き。」

「会話にならねえな。」

「へへー。さきさん、大好き。」

「はいはい。俺も好き。」

最終可愛いか好きしか言ってないよ君。


まあ別に、幸せだからなんでもいいけど。
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