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短編
初めてのデート 3
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ひとまずカフェに入り、俺はチーズケーキと紅茶、アイ君はタルトとコーヒーを頼む。
内装も好みだったので見回していると、視線を感じる。
「なに。」
「さきさん。今日はありがとうございます。僕ほんとに幸せです。」
「何急に。」
「さきさんとお付き合いできて本当に嬉しいです。ずっと憧れだったから…」
「アイ君が俺に憧れるとこなくない?顔も売上もアイ君のが全然上でしょ。」
アイ君が俺に憧れてるなんて聞いたことがないし、そもそもこんな持ってる男が憧れるところがわからない。
「憧れますよ!
今は僕の方が売上あるかもしれないけど…
でもさきさんがいつもめちゃくちゃ準備してるの知ってますし…女の子の事できる限り大切にしてあげてるのも知ってます。売上だけじゃないです。さきさんは憧れです。」
「お、おう。よく見てるな。」
急に饒舌になったアイ君に少し引いてしまったけれど、
そんだけ自分の事を見てくれているというのは、嬉しいかもしれない。
「それに…」
「それに?」
「さきさんは綺麗だから…」
「綺麗?俺が?どこが?」
「全部です!顔も雰囲気も!全部綺麗です!」
「特に顔は綺麗じゃなくない?雰囲気はよくわかんないけど。」
お前のが100倍綺麗だよ。嫌味かよ。
「いえ、さきさんは綺麗です。ずっと思ってました。」
真っ直ぐな目で伝えられるので、変な否定ができなくなる。
「そ、そっか。ありがとう。全然わかんないけど。」
「はい。ずっと綺麗です。」
「うん。もうやめようか。恥ずかしい…」
「これからも言い続けますね。これからもきっと綺麗だから。」
「やめて。もうやめよう。もうやめて…お願いだから。」
「じゃあ今日のところはやめておきます。ちょうどケーキも来たし。」
アイ君の圧に負けながら今きたケーキを食べる。
相変わらず見てくるし可愛い可愛い言ってくるし恥ずかしいけれど、ケーキはしっかり美味しい。
「美味しいですか?」
「うん。めちゃくちゃうまい。アイ君も食べる?一口あげる。」
「え!いいんですか!」
「うん。ほら。」
あげると言っただけなのにめちゃくちゃ嬉しそうな顔をするからちょっと可愛く思えてしまう。
人が食べてるケーキって美味しそうだよね。わかる。
「さきさん…僕あーんがいいなぁ?」
「無理。ほら食え。フォークお前の持て。」
「ちえ。」
「ちえじゃねえよ。」
「いいですよ。また今度、ね?楽しみにしてます。」
「しないから。」
この男は油断も隙もない。
「ん!うまっ。」
「でしょ。」
「はい。ありがとうございます。
貰ったので、さきさんにも僕のあげます。はい。あーん。」
「それならいらないよ…?」
「しゅん…」
しょんぼりした効果音を自分でつけながら一口サイズのケーキを下ろすアイ君。
なんか耳見えるぞ…項垂れてる時の犬だ…。
「はぁ…。それはまた今度ね。」
「…! ありがとうございます!」
可哀想になって救済措置を入れてしまった…。
だが、ぱぁあっ!と言う効果音がつきそうなほど嬉しそうな顔をしたアイ君をみたら、まあ良いかと思ってしまう。
同時に自分がちょろすぎて恐ろしくもなるけど。
これから大丈夫か俺。
全部丸め込まれそうな気がする。
「どうかしました?」
考え事をしている間見てしまっていたようで,首を傾げられてしまった。
「お前が怖えなって思って。」
「ふふ。そうですか?まあ、さきさんの事はもう離してあげませんけどね。」
「怖いよ…」
「ずっと愛してあげますからね。」
「…もうここまできたら期待しとくわ。」
「はい!任せてください!」
もうなんでもよくなってきた。
とりあえず目の前の男がずっと幸せそうだから良いや。と思ってしまった俺も大概だ。
「そろそろ出る?ケーキ食べ終わったし。」
「そうですね。」
お会計の札を取ろうとするとアイ君に奪われた。
「払うよ。」
「いいですよ。僕払いますから。」
「でも俺一応先輩だし。売上負けてるにしろ後輩に奢る分くらいはあるよ。」
「いや、今は恋人なんで。払わせてください。」
真っ直ぐな目で見られると弱いんだよなぁ。
「いいの?」
「さきさんにお財布出させたくないです。彼氏として。」
「俺も彼氏だけど…」
「惚れた身として。」
「わかったよ。そこまで言うならご馳走様。」
「ありがとうございます!」
自分が払うのに嬉しそうにお礼を言ってくるアイ君に笑ってしまいそうになる。
「それをいうならこっちがな。ありがとう。」
「いえ、じゃあ払ってきますね!」
「おう。外で待ってる。」
「はい!」
店の外に出てアイ君を待つ。
めちゃくちゃ絆されてる…あそこまでのど直球人間だとは知らなかった。
男同士で付き合うのがぴんと来なかったけれど、これからはこう甘やかされるのかと思うとむず痒くなってくる。
でも嫌な気持ちしなかったし、むしろ嬉しかった。
告白を受けたのは案外ありな選択だったのかも、と結果論で思う。
「さきさん。お待たせしました。」
「ご馳走様。ありがとう。」
「いえいえ!次どこ行きます?」
「ぷらぷらしよ。」
「了解です!」
こんな適当な返事でも嬉しそうに返してくれるから、ちょっと付き合っていくのが楽しみになった。
「この後も楽しみましょうね!」
「おう。」
内装も好みだったので見回していると、視線を感じる。
「なに。」
「さきさん。今日はありがとうございます。僕ほんとに幸せです。」
「何急に。」
「さきさんとお付き合いできて本当に嬉しいです。ずっと憧れだったから…」
「アイ君が俺に憧れるとこなくない?顔も売上もアイ君のが全然上でしょ。」
アイ君が俺に憧れてるなんて聞いたことがないし、そもそもこんな持ってる男が憧れるところがわからない。
「憧れますよ!
今は僕の方が売上あるかもしれないけど…
でもさきさんがいつもめちゃくちゃ準備してるの知ってますし…女の子の事できる限り大切にしてあげてるのも知ってます。売上だけじゃないです。さきさんは憧れです。」
「お、おう。よく見てるな。」
急に饒舌になったアイ君に少し引いてしまったけれど、
そんだけ自分の事を見てくれているというのは、嬉しいかもしれない。
「それに…」
「それに?」
「さきさんは綺麗だから…」
「綺麗?俺が?どこが?」
「全部です!顔も雰囲気も!全部綺麗です!」
「特に顔は綺麗じゃなくない?雰囲気はよくわかんないけど。」
お前のが100倍綺麗だよ。嫌味かよ。
「いえ、さきさんは綺麗です。ずっと思ってました。」
真っ直ぐな目で伝えられるので、変な否定ができなくなる。
「そ、そっか。ありがとう。全然わかんないけど。」
「はい。ずっと綺麗です。」
「うん。もうやめようか。恥ずかしい…」
「これからも言い続けますね。これからもきっと綺麗だから。」
「やめて。もうやめよう。もうやめて…お願いだから。」
「じゃあ今日のところはやめておきます。ちょうどケーキも来たし。」
アイ君の圧に負けながら今きたケーキを食べる。
相変わらず見てくるし可愛い可愛い言ってくるし恥ずかしいけれど、ケーキはしっかり美味しい。
「美味しいですか?」
「うん。めちゃくちゃうまい。アイ君も食べる?一口あげる。」
「え!いいんですか!」
「うん。ほら。」
あげると言っただけなのにめちゃくちゃ嬉しそうな顔をするからちょっと可愛く思えてしまう。
人が食べてるケーキって美味しそうだよね。わかる。
「さきさん…僕あーんがいいなぁ?」
「無理。ほら食え。フォークお前の持て。」
「ちえ。」
「ちえじゃねえよ。」
「いいですよ。また今度、ね?楽しみにしてます。」
「しないから。」
この男は油断も隙もない。
「ん!うまっ。」
「でしょ。」
「はい。ありがとうございます。
貰ったので、さきさんにも僕のあげます。はい。あーん。」
「それならいらないよ…?」
「しゅん…」
しょんぼりした効果音を自分でつけながら一口サイズのケーキを下ろすアイ君。
なんか耳見えるぞ…項垂れてる時の犬だ…。
「はぁ…。それはまた今度ね。」
「…! ありがとうございます!」
可哀想になって救済措置を入れてしまった…。
だが、ぱぁあっ!と言う効果音がつきそうなほど嬉しそうな顔をしたアイ君をみたら、まあ良いかと思ってしまう。
同時に自分がちょろすぎて恐ろしくもなるけど。
これから大丈夫か俺。
全部丸め込まれそうな気がする。
「どうかしました?」
考え事をしている間見てしまっていたようで,首を傾げられてしまった。
「お前が怖えなって思って。」
「ふふ。そうですか?まあ、さきさんの事はもう離してあげませんけどね。」
「怖いよ…」
「ずっと愛してあげますからね。」
「…もうここまできたら期待しとくわ。」
「はい!任せてください!」
もうなんでもよくなってきた。
とりあえず目の前の男がずっと幸せそうだから良いや。と思ってしまった俺も大概だ。
「そろそろ出る?ケーキ食べ終わったし。」
「そうですね。」
お会計の札を取ろうとするとアイ君に奪われた。
「払うよ。」
「いいですよ。僕払いますから。」
「でも俺一応先輩だし。売上負けてるにしろ後輩に奢る分くらいはあるよ。」
「いや、今は恋人なんで。払わせてください。」
真っ直ぐな目で見られると弱いんだよなぁ。
「いいの?」
「さきさんにお財布出させたくないです。彼氏として。」
「俺も彼氏だけど…」
「惚れた身として。」
「わかったよ。そこまで言うならご馳走様。」
「ありがとうございます!」
自分が払うのに嬉しそうにお礼を言ってくるアイ君に笑ってしまいそうになる。
「それをいうならこっちがな。ありがとう。」
「いえ、じゃあ払ってきますね!」
「おう。外で待ってる。」
「はい!」
店の外に出てアイ君を待つ。
めちゃくちゃ絆されてる…あそこまでのど直球人間だとは知らなかった。
男同士で付き合うのがぴんと来なかったけれど、これからはこう甘やかされるのかと思うとむず痒くなってくる。
でも嫌な気持ちしなかったし、むしろ嬉しかった。
告白を受けたのは案外ありな選択だったのかも、と結果論で思う。
「さきさん。お待たせしました。」
「ご馳走様。ありがとう。」
「いえいえ!次どこ行きます?」
「ぷらぷらしよ。」
「了解です!」
こんな適当な返事でも嬉しそうに返してくれるから、ちょっと付き合っていくのが楽しみになった。
「この後も楽しみましょうね!」
「おう。」
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