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番外編

3.アルとカミル―3―

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 このときの様子を後から聞くことになったのだが、話によれば──

 意識が沈んでしまった俺はレオンに抱き上げられた。駆け寄ったカミルがすぐに魔術回路を確認してみると、付与した一部に不要な文字が入っていたらしい。その影響で感覚が昂ぶり、おかしな症状が現れてしまったようだ。

「あははー、くしゃみしたときかなあ……大丈夫大丈夫、すぐ直しますね」

 と、その場で修正してくれたものの、身体に起きている熱や感覚がすぐに収まるわけではない。寝て起きれば問題ないらしいが、『ごめんねアル、統括団長に休ませてもらって? 今度お詫びするね』カミルはそう言うと意識のない俺に向かって謝っていたらしい。

 そして俺はレオンに騎士団寮の部屋へ運ばれた。

 下ろされた寝台。熱を持て余していた俺はシーツのひやっとした感触が心地よくて、安堵に自然と吐息が漏れた。少しだけ浮上した意識を手繰り、瞼をうっすら開け、ぼんやりした世界で視線を彷徨わせる。

「苦しくない?」
「ん、……」

 こちらを見ている碧眼と重なった。ああ、レオンだ。それだけでほっとしてしまう自分がなんだかおかしい。

 病的な肉体の辛さは感じない。風邪をひいたときのような怠さや節々の痛みはなかった。身体の芯がじくじく熱いだけだ。耐えようと思えばできないことはないと思う。このまま鎮まるまで放って置いてくれても構わない。
 ただ目の前に伴侶がいて愛おしそうに見つめてくるのだから頼りたくはなる。外はまだ明るく、閉めてくれたカーテン越しの光でレオンの顔がよく見えた。

「アル……」

 頬に添えられたレオンの手の上に、自分の手を重ねる。

(レオンの手が冷たい……)

 いつもと違う手の温度に、ああそうか自分の方がおかしいからだと実感する。
 指の先でレオンの爪を撫でた。意味を持った些細な合図だというのに、どうやら正確に拾ってくれたらしい。レオンの顔が近づいてくる。

「蕩けちゃいそう……遠慮なくもらうね?」
「うん、……っ」

 ちょんちょんと唇を啄まれ、小さな触れ合いに背中がぞわりと震えた。舌先を差し出してレオンの唇をちろりと舐める。ねえ、そうじゃない。俺の仕草をクスッと笑い、そのままぱくりと食べられた。
 息ごと奪うような激しい口づけに、残っていたささやかな理性など消し飛んでしまう。夢中で舌を絡め、俺から奥までレオンを追いかけていった。

「ふっ、ん……んんっ」

 伸ばした腕をレオンの首に回し引き寄せる。形がなくなるほど溶かされたいのか、そうならないように辿ろうとしているのか、よくわからなくなる。混ざり合った二人の唾液が嚥下しきれず、口端から流れ落ちた。
 騎士服の留具を外され、俺の素肌へ伸びたレオンの手がざらりと撫でる。脇腹から腰骨を辿り、下穿きの中へ潜り込んできた。器用にズボンを脱がされてしまい、下肢はあらわになっている。
 カミルから付与された術式の間違いにより、訓練場からずっと兆していた。まさかこんな影響があるなんて思いもしなかった。俺の分身はようやく揉みしだかれ、その刺激にほっとしている反面、昂りも早い。

「ふはっ、……ぁ、あ、っ」

 唇の合わせが緩むと、隙間から甘ったるい声が漏れてしまう。耳に届く自分の声ははしたないものだけれど、それでもこの淫靡な行為はやめられないし、もっと欲しくなる。

 昂ぶっていた身体はそそのかされると簡単に陥落していくだけだ。相手がレオンだから、尚更拒むことなく快楽を求めて強請った。
 扱かれ吐精を促されれば、とぷりと白濁の液を吐き出す。余韻に弛緩した身体を投げ出しているというのに、少しも待つことなくその液を纏った指は後孔へと忍ばされた。

「っ、まっ、て、まだ………っ」

 吐息混じりの声で願うが聞いてはもらえない。侵入してきたレオンの指をきゅうっと締め付ける。拒んでいるわけではない。ただ敏感になっている身体は次の刺激を受け止めるには早すぎて、反射的に力が入ってしまった。
 けれど、俺の身体を本人以上によく知っているレオンが待つわけもない。

「嫌じゃないよね? ほら、中は蠢いて期待してる……誘っているのかな? いやらしいね、アル」
「んっん、ぁ、……待って……」

 ぬちぬち滑った音をさせながら、抜き挿しが繰り返される。ぎゅっと閉じていた蕾は解され、花のように開いていった。
 力んでいた強張りが抜けてくると、レオンの指が増やされていく。これまでに幾度も怒張を受け止めている孔は、どうすれば楽になれるのか覚えてしまっていた。

「あ、あっァ、はっ……レオン、レオッ」

 事前に取り出していた香油の瓶から潤滑の液が足され、尚更ぐちゅぐちゅ淫猥な水音が響く。
 しっかり熱を呼び起こされ、下腹の中が疼いた。悦いところを指で弄られ続け、頭の中がぐらぐら沸いてくる。本当に沸騰してしまいそうだ。手が届きそうな何かがそこにあって、それが掴めれば終わるのにあと少しのところでまだ足りない。
 先を促すために同じところを何度も刺激され、達する予兆みたいなものが掠めていく。こんなに期待して、その瞬間を心待ちにしている自分が浅ましく思えた。
 なのに、直前で後孔から指が抜かれてしまった。絶頂までは僅かに届かず、半端な状態で放り出される。

「やぁ、なんで、ぇ……」

 恨みがましく見上げると、とろりと獰猛に蕩けた雄の双眸が見下ろしていた。
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