君は魔法使い

文字の大きさ
上 下
6 / 6

6.君は魔法使い

しおりを挟む
 最初はゆっくり挿入され、確かに壊れないよう丁寧に中をギードの猛りに愛撫された。何度も何度も擦られ、全部を味わうみたいにどこもかしこもその肉棒が形を辿った。
 素直に快感を拾って、僕の身体は弱く熔けていった。一度知ってしまえばもっともっとほしくなるのは本能だ。与えられることが当たり前になって、逃さないよう内壁がしがみつく。

「はっ、ぁあっ、……っあ、んんっ」

「上手……気持ちいいよ。初めてなのにすごい…ちゃんと俺の形おぼえてね?」

 だけどそんな時間はすぐに終った。
 勢いと強さの加わった責苦が訪れた。どちゅっと一番奥まで挿入されると、もう行き止まりだというのにギードは更に奥を突いた。
 長くて太い男根はありえないところまで届く。腹の中が自分じゃない誰かのもので埋められるなんて、想像もしていなかった。

「………っ……ぁ、!」

 痛いのかな。たぶん痛みなのだと思うけど感覚が麻痺して、もしかしたらこれは快感なんじゃないかと錯覚してしまった。
 どこまで挿れられるのか終わりがなく、怖いような気持ちの裏で犯されながら内壁のざわつきにどこか歓喜していた。

 喘ぎ声は止むことがなくずっと僕の口から繰り返される。息なのか声なのか、意味のない音ばかりが絶え間なく発せられた。

「ギ、ド、……ぁ、いぁっ、あっ」

「奥も好きだね、よかった」

 同じように下方からぬちゃぬちゃ水音が途切れることはない。何度絶頂を迎えたのか回数はわからないが、ギードが放ったものを受け止めている僕の腹は膨れていた。

 たまに意識が遠くなる。ぼやっとして視界がよくわからなくなって、寝てるのかなと思っていると、ゆさゆさ振動で現実へ戻ってきた。

「おかえり」

 そうするとギードが笑って楽しそうに僕へキスをする。そのまま口を塞がれ、口腔を吸われて口蓋を舐められ、また意識がぼんやりして。ずっとその繰り返しだった。

 入口近くまで引き抜くと先端で性感帯を突いて快楽を呼び起こす。そして奥深くまで抉り、背筋が震える様子を眺められた。

 ぐるんとうつ伏せにされ、力の入らない身体は腰だけ高く持ち上げられる。ぱつんぱつんギードが打ち付け、孔から精液が泡立って太腿を伝い垂れた。

「かっ、……っ、ぁー、っ」

「声出なくなっちゃったね。でもまだセックスはできそうだよ?」

 いやもうできない。無理。
 かなり前から僕の陰茎からは何も出なくなっていた。イってるようなぎゅっとしたものはあるのに、物足りないような絶頂ばかりだ。
 ゆさゆさ身体が揺れるたび、半勃ちの陰茎からポタリと雫が滴る。

「さすがに俺も少し休まないと無理かなぁ」

 どれだけ出したのか知らないが、世の中で言われる絶倫よりすごい気がする。勿論相手をしたことなどないから比べる相手もいないし、想像でしかないとしてもだ。
 何で全然萎えないんだろう。わかっている限りだけでもずっと漲って、硬さを保っている気がする。

 じゃあと一回ね。と、言ったのは冗談じゃなかった。深く穿たれた後、僕は遠慮なく意識を手放したし、ギードはその後もう起こすことはしなかった。



 あんなに酷使した身体は軋んでいるけど、驚くほどパッチリ目が覚めた。ギシギシの腕も体も筋肉痛でどうにもならないから、目線だけで何となく部屋の様子を覗う。

 室内は朝日の明るさではない。もう昼時になるんだろう。部屋の主であるギードは、どこにいるのか姿が見えない。
 と、思って横を見たらそこにいた。

「…っ、ぎっ………っ」

 声が出なくてカラカラで、けほっと名前を呼ぼうとした音は途切れた。

「大丈夫?…はい」

 そっと背中へ腕を入れて起こしてくれて、コップに入れた水を渡してくれた。コクコク飲んで全身へ染み渡る。水がこんなにおいしいなんて思ったのは初めてだ。

「……何で、こんな、こと…?」

「ん? 好きだからだけど?」

「好、き?」

 言っていることがよくわからない。いや今までキスすらしていなかったのに、急にこんな……襲うみたいに身体を繋いできた理由がわからない。

「うん。リンのこと好きって言ったよね? 少しずつ俺の好みに染めていくより、何もかもいっぺんに奪おうと思ってたから。それなのにオスカーが余計なこと言ったみたいで街裏にいたんでしょ? 汚される前にやっぱり抱いちゃおうかなって」

「………」

 言われたことが想像していなかったことばかりで、僕は絶句した。何だそれ……どういうこと?僕のことが本当に好きで合ってる?

「わざと、…見せつけてたってこと?」

「見せつけてはいないよ。勝手に告白とかしてきただけだし」

「あの、僕には何もしなくて、他の人に『好き』って返したり、デートしてたのはっ……?」

「うーん、リンと同じ瞳の色をした子かな?あとは髪色が同じ子とか、リンみたいだなとは思ったけど誰だか知らない。リンじゃないならどうでもいいかな」

「な、えっ!?」

 まさかの理由に驚愕しかない。それって僕以外に興味がないということだろうか。ちょっとおかしな執着みたいなものを感じなくもないが、とてつもなく好かれているといえなくもない。
 え、いや、ホントに?あれ、いいのかなこれで。どうしたってギードのことは嫌いにれない僕は、やっぱり一緒にいたいと思ってしまう。それならこのおかしな愛情表現を受け止める…べきなのだろう。

「ギードはモテるでしょう? 魔法も、本当はすごい魔法使いなんじゃないの? こんな何もできない見習いの僕なんかで、いいのかな……」

 少し年上の同じ魔法使い見習いだと思っていた。かっこよくて、優しくて、面倒見のいい彼に釣り合うのは、別の誰かなんじゃないかといつも不安だった。

 そしたら、僕の額にちゅっって唇が触れた。昨夜の執拗で苦しいくらいの愛撫や粘着質なものとは全然違う、同じ人から与えられたとは思えないくらい愛しさを渡すみたいな優しいものだった。

 そして―――

「魔法、使えるでしょ。だって俺のこと幸せにできるよ? すごいじゃん」

 リーンハルトは俺だけの魔法使いだよ。

 そう言ってギードは、嘘も偽りもない眩い笑顔を浮かべていた。


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

追放系治癒術師は今日も無能

リラックス@ピロー
BL
「エディ、お前もうパーティ抜けろ」ある夜、幼馴染でパーティを組むイーノックは唐突にそう言った。剣術に優れているわけでも、秀でた魔術が使える訳でもない。治癒術師を名乗っているが、それも実力が伴わない半人前。完全にパーティのお荷物。そんな俺では共に旅が出来るわけも無く。 追放されたその日から、俺の生活は一変した。しかし一人街に降りた先で出会ったのは、かつて俺とイーノックがパーティを組むきっかけとなった冒険者、グレアムだった。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【短編】眠り姫 ー僕が眠りの呪いをかけられた王子様を助けたら溺愛されることになったー

cyan
BL
この国には眠りの呪いをかけられ、眠り続ける美しい王子がいる。 王子が眠り続けて50年、厄介払いのために城から離れた離宮に移されることが決まった頃、魔法が得意な少年カリオが、報酬欲しさに解呪を申し出てきた。 王子の美しさに惹かれ王子の側にいることを願い出たカリオ。 こうして二人の生活は始まった。

かくして王子様は彼の手を取った

亜桜黄身
BL
麗しい顔が近づく。それが挨拶の距離感ではないと気づいたのは唇同士が触れたあとだった。 「男を簡単に捨ててしまえるだなどと、ゆめゆめ思わないように」 ── 目が覚めたら異世界転生してた外見美少女中身男前の受けが、計算高い腹黒婚約者の攻めに婚約破棄を申し出てすったもんだする話。 腹黒で策士で計算高い攻めなのに受けが鈍感越えて予想外の方面に突っ走るから受けの行動だけが読み切れず頭掻きむしるやつです。 受けが同性に性的な意味で襲われる描写があります。

置き去りにされたら、真実の愛が待っていました

夜乃すてら
BL
 トリーシャ・ラスヘルグは大の魔法使い嫌いである。  というのも、元婚約者の蛮行で、転移門から寒地スノーホワイトへ置き去りにされて死にかけたせいだった。  王城の司書としてひっそり暮らしているトリーシャは、ヴィタリ・ノイマンという青年と知り合いになる。心穏やかな付き合いに、次第に友人として親しくできることを喜び始める。    一方、ヴィタリ・ノイマンは焦っていた。  新任の魔法師団団長として王城に異動し、図書室でトリーシャと出会って、一目ぼれをしたのだ。問題は赴任したてで制服を着ておらず、〈枝〉も持っていなかったせいで、トリーシャがヴィタリを政務官と勘違いしたことだ。  まさかトリーシャが大の魔法使い嫌いだとは知らず、ばれてはならないと偽る覚悟を決める。    そして関係を重ねていたのに、元婚約者が現れて……?  若手の大魔法使い×トラウマ持ちの魔法使い嫌いの恋愛の行方は?

使用人の俺を坊ちゃんが構う理由

真魚
BL
【貴族令息×力を失った魔術師】  かつて類い稀な魔術の才能を持っていたセシルは、魔物との戦いに負け、魔力と片足の自由を失ってしまった。伯爵家の下働きとして置いてもらいながら雑用すらまともにできず、日々飢え、昔の面影も無いほど惨めな姿となっていたセシルの唯一の癒しは、むかし弟のように可愛がっていた伯爵家次男のジェフリーの成長していく姿を時折目にすることだった。  こんなみすぼらしい自分のことなど、完全に忘れてしまっているだろうと思っていたのに、ある夜、ジェフリーからその世話係に仕事を変えさせられ…… ※ムーンライトノベルズにも掲載しています

【完】悪役令嬢の復讐(改)全6話

325号室の住人
BL
初出 2021/10/08 2022/11/02 改稿、再投稿 わたくしマデリーンは18歳の誕生日の今日、2歳年上の第2王子から婚姻式をブッチされました。 「お前は国外追放だ!!」 と、花嫁衣装のまま国境の森に追放。 良いですわ。そちらがその気なら……… 悪役令嬢が国外追放に決まった時、友人達はプランBで、動き出した。

メゴ ~追いやられた神子様と下男の俺~

てんつぶ
BL
ニホンから呼び寄せられた神子様は、おかしな言葉しか喋られない。 そのせいであばら家に追いやられて俺みたいな下男1人しかつけて貰えない。 だけどいつも楽しそうな神子様に俺はどんどん惹かれていくけれど、ある日同僚に襲われてーー 日本人神子(方言)×異世界平凡下男 旧題「メゴ」 水嶋タツキ名義で主催アンソロに掲載していたものです 方言監修してもらいましたがおかしい部分はお目こぼしください。

処理中です...