王女と魔王。

シグマ

文字の大きさ
上 下
3 / 14

#2 それは当然の反応で

しおりを挟む

 魔王ディアボロは魔王城に戻り、肩に担いでいた王女を降ろす。

「私は君を拘束するつもりはない。ここでは自由に行動するが良い」
「それならば、私を元の場所に帰して下さいませ」

 王女はディアボロから目を逸らさずに毅然とお願いをする。
 しかしドレスで隠れた足は小刻みに震えていることを、ディアボロは知らない。

「それだけは叶えられぬ願いだ。これからここが、君の家となるのだからな」
「……なぜ、貴方様はこのようなことを為されるのですか?」

 王女は臆していることに気付かれぬように、ディアボロへ質問を行う。

「そうだな……人族の蛮行を抑止するため……とでも言っておこう」

 ディアボロの中には他の目的があるのだが、それを口に出したならば魔王城は混乱の渦に包まれることになるだろう。
 自分の立場を忘れて行動したディアボロであったが、魔王城に戻り玉座に座り直して我を取り戻したのだ。

「……蛮行を行っているのは、魔族の方なのではありませんか? これまでに数多くの同胞が魔族によって殺されたと聞いていますが?」

 魔族と人族の争いの歴史は長きに渡る。
 魔法を使えるか使えないかの差しか存在しないのだが、その差ゆえに魔族の中には人を見下す者がいるとされ、人族にとって魔族は得たいの知れない力を使う脅威として捉えられるのだ。

「それは違う!」

 ディアボロは否定の発言と共に、王座から立ち上がる。
 するとそれを見て、王女の体は端から見ても一目瞭然にビクッとした。

「……すまん。声を張り上げるようなことではなかった……今日はここまでにしよう。君の部屋を用意してあるから、今日はもう休むが良い」

 ディアボロの合図で侍従たちが王女の後ろに現れて頭を下げて案内をしようとする。
 その扱いは人族にとっては貴賓に対するそれであり、人質である王女はそのような扱いを受けるとは思っていなかったので驚く。

「あ、あの……」

 そして王女はディアボロがなぜ、そこまで自分のことを気遣うのか質問をしようとするも、その声はディアボロに届かなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)
恋愛
《視点・山柿》 大学入試を目前にしていた山柿が、一目惚れしたのは黒髪ロングの美少女、岩田愛里。 その子はよりにもよって親友岩田の妹で、しかも小学3年生!! 《視点・愛里》 兄さんの親友だと思っていた人は、恐ろしい顔をしていた。 だけどその怖顔が、なんだろう素敵! そして偶然が重なってしまい禁断の合体! あーれーっ、それだめ、いやいや、でもくせになりそうっ!   身体が恋したってことなのかしら……っ?  男女双方の視点から読むラブコメ。 タイトル変更しました!! 前タイトル《 恐怖顔男が惚れたのは、変態思考美少女でした 》

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

既に王女となったので

杉本凪咲
恋愛
公爵令息のオーウェンと結婚して二年。 私は彼から愛されない日々を送っていた。 彼の不倫現場を目撃した私は、離婚を叫び家を去る。 王女になるために。

姉の代わりでしかない私

下菊みこと
恋愛
クソ野郎な旦那様も最終的に幸せになりますので閲覧ご注意を。 リリアーヌは、夫から姉の名前で呼ばれる。姉の代わりにされているのだ。それでも夫との子供が欲しいリリアーヌ。結果的に、子宝には恵まれるが…。 アルファポリス様でも投稿しています。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

結婚5年目の仮面夫婦ですが、そろそろ限界のようです!?

宮永レン
恋愛
 没落したアルブレヒト伯爵家を援助すると声をかけてきたのは、成り上がり貴族と呼ばれるヴィルジール・シリングス子爵。援助の条件とは一人娘のミネットを妻にすること。  ミネットは形だけの結婚を申し出るが、ヴィルジールからは仕事に支障が出ると困るので外では仲の良い夫婦を演じてほしいと告げられる。  仮面夫婦としての生活を続けるうちに二人の心には変化が生まれるが……

処理中です...