異世界に召喚されたけど商人になりました。

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第9章 事業拡大

#47 視察

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 ラーカス商会は聖都市に店を構えることになり、ハヤトはそこの運営を任されることになった。しかし営業の許可を得ただけで、他に決まっていることは何もない。
 その為ハヤトとヒソネの二人はまずは聖都市に赴き、販売店舗の確保をすることにした。

■■■

「さてお店を開く店舗を探したいけど、どうすればいいんですか?」

 勢い良く聖都市に出てきたが、中学生だったハヤトは家を自分で借りたことはないので手続き的なことは何も分からない。威勢良くしていたのに急に頼りなくなったのでヒソネに白い目で見られる。

「……はぁー、そうですか分かりました。自分で交渉していくことも出来なくは無いですがやはりこの街の商業ギルドに頼るべきですね」

「ではどの商業ギルドにするんですか? さすが聖都市なだけあって色々なギルドがありますけど」

「そこは事前にギルド[リンクス]で紹介をして貰っていますからそこに行きましょう」

 ラーカス商会が懇意にしているギルド[リンクス]が聖都市にもあれば話は早いが無いそうなので、ギルドとの繋がりもあってそこで聞いたおすすめのギルドに向かうことになった。

■■■

 商会ギルドの人の案内でいくつかの空き家を見て回るもどれも決め手に欠ける。
 事前に決めていた賃料、立地、人通りなどを確認していくもそこまで大きな差が無かったのだ。
 どうするべきか決めれないのでもう一度始めからもう一度確認しようと戻ろうとした時、ひとつの貸し出し物件が目に留まる。

「ここは?」

「ああそこはですね、えっとオーナーが特殊と言いますか……」

 大通りに面した位置にあり古びた洋館でも趣のある建物なのだが、案内人の歯切れが悪くなる。

 話を聞くと貸し出し中の物件であるがオーナーが出す条件が無茶苦茶なのだそうで、具体的に言うと周辺の相場の100倍という値段らしい。そしてお金が有ったとしてもオーナーが認めなければ貸し出さないと条件にあるが面会前に拒否されるそうだ。

「そうですか……」

 これまで見てきたなかでも店を開くのに最も適しているので、良さそうなのだが借りれないのであれば仕方がない。なので振りだしに戻ることにした。

■■■

 肩を落として移動をしていると道端の影でフードを被った子供がうずくまっているのを見つける。ギルドの案内人は無視して歩いていくのでヒソネに尋ねる。

「エルラーさん、あの子どうしたんですかね?」

「えっ? ああ、あの子供には関わらない方が良いですよ」

「どうしてですか? 子供が困っているなら助けてあげないと」

「そうですか……まぁハヤトさんが助けたいのなら止めはしませんが」

「なら助けましょう!」

 ということで、うずくまっている子供に近付き声を掛ける。

「君、大丈夫かい?」

「オ、オ兄サン達ハ誰?」

 顔をあげてこちらを見てくるとフードがはだけて隠れていた耳とモフモフな毛皮があらわになる。一見すると大きいヌイグルミのようだ。
 ハヤトが異世界に来て始めてみる犬のような亜人種でヒソネの方を見て確認する。

「そうでしたか、ハヤトさんは初めて見るのでしたっけ?」

 ということで亜人種について説明をしてもらった。

■■■□□□

 亜人とはいわゆる人である真人属以外のことを差し、獣人をはじめ、ドワーフ、エルフなど人に近しいが他に種族的な特徴を有している種族のことである。
 真人族にとって利益があり貴重な龍人などは保護をされているのだが、獣人などの種族は普通の人としての権利は保護されていない。
 そのため一部の亜人種は差別的な扱いを受け奴隷扱いもされるのだが、ここ聖都市では差別的では無く忌避される存在として扱われている。
 魔物には魔核と呼ばれるものが存在し、それがドロップした物が魔石であるが同じものが亜人にはあるのだ。その為に聖典には名言はされていないものの、同一視すべきと取られる文言があるので当然なのだそうだ。
 それでも聖都市以外では奴隷として街に溶け込む者もいれば、ギルドに所属し働いている者もいる。なので亜人と関わることは普段は無いことではないが、ここ聖都市では殆ど無い。
 聖都市で亜人といることは犯罪ではないのだが要らぬトラブルの原因にもなりやすいので避けるのが一般的で、なので道行く人は関わるのを避けていたのだ。

■■■□□□

「そうだったんですね……」

「どうしますか? なぜここにこの子がいるのか理由も分かりませんし、今ならまだ放っておいても良いと思いますけど」

 知った今どうするか、ヒソネがもう一度確認してくる。

「そうですね……」 

 亜人の方を見ると不安そうで、目が潤んでいる。

「この子を保護することは出来ないのかな」

「はぁーそうですか、分かりました。では先ほどのギルドに一度連れていきましょう。そこでならなんとかしてくれると思いますよ」


 ギルドの案内人は関わりたく無さそうな顔をしているが、聖都市で忌避される存在だといえども保護する団体がどこかにはいるのでそこを紹介してもらい連れていくのだそうだ。
 ということでまだ何も決めることが出来ていないが、一旦は店舗探しは取り止めることになった。
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