49 / 61
第9章 事業拡大
#47 視察
しおりを挟むラーカス商会は聖都市に店を構えることになり、ハヤトはそこの運営を任されることになった。しかし営業の許可を得ただけで、他に決まっていることは何もない。
その為ハヤトとヒソネの二人はまずは聖都市に赴き、販売店舗の確保をすることにした。
■■■
「さてお店を開く店舗を探したいけど、どうすればいいんですか?」
勢い良く聖都市に出てきたが、中学生だったハヤトは家を自分で借りたことはないので手続き的なことは何も分からない。威勢良くしていたのに急に頼りなくなったのでヒソネに白い目で見られる。
「……はぁー、そうですか分かりました。自分で交渉していくことも出来なくは無いですがやはりこの街の商業ギルドに頼るべきですね」
「ではどの商業ギルドにするんですか? さすが聖都市なだけあって色々なギルドがありますけど」
「そこは事前にギルド[リンクス]で紹介をして貰っていますからそこに行きましょう」
ラーカス商会が懇意にしているギルド[リンクス]が聖都市にもあれば話は早いが無いそうなので、ギルドとの繋がりもあってそこで聞いたおすすめのギルドに向かうことになった。
■■■
商会ギルドの人の案内でいくつかの空き家を見て回るもどれも決め手に欠ける。
事前に決めていた賃料、立地、人通りなどを確認していくもそこまで大きな差が無かったのだ。
どうするべきか決めれないのでもう一度始めからもう一度確認しようと戻ろうとした時、ひとつの貸し出し物件が目に留まる。
「ここは?」
「ああそこはですね、えっとオーナーが特殊と言いますか……」
大通りに面した位置にあり古びた洋館でも趣のある建物なのだが、案内人の歯切れが悪くなる。
話を聞くと貸し出し中の物件であるがオーナーが出す条件が無茶苦茶なのだそうで、具体的に言うと周辺の相場の100倍という値段らしい。そしてお金が有ったとしてもオーナーが認めなければ貸し出さないと条件にあるが面会前に拒否されるそうだ。
「そうですか……」
これまで見てきたなかでも店を開くのに最も適しているので、良さそうなのだが借りれないのであれば仕方がない。なので振りだしに戻ることにした。
■■■
肩を落として移動をしていると道端の影でフードを被った子供がうずくまっているのを見つける。ギルドの案内人は無視して歩いていくのでヒソネに尋ねる。
「エルラーさん、あの子どうしたんですかね?」
「えっ? ああ、あの子供には関わらない方が良いですよ」
「どうしてですか? 子供が困っているなら助けてあげないと」
「そうですか……まぁハヤトさんが助けたいのなら止めはしませんが」
「なら助けましょう!」
ということで、うずくまっている子供に近付き声を掛ける。
「君、大丈夫かい?」
「オ、オ兄サン達ハ誰?」
顔をあげてこちらを見てくるとフードがはだけて隠れていた耳とモフモフな毛皮があらわになる。一見すると大きいヌイグルミのようだ。
ハヤトが異世界に来て始めてみる犬のような亜人種でヒソネの方を見て確認する。
「そうでしたか、ハヤトさんは初めて見るのでしたっけ?」
ということで亜人種について説明をしてもらった。
■■■□□□
亜人とはいわゆる人である真人属以外のことを差し、獣人をはじめ、ドワーフ、エルフなど人に近しいが他に種族的な特徴を有している種族のことである。
真人族にとって利益があり貴重な龍人などは保護をされているのだが、獣人などの種族は普通の人としての権利は保護されていない。
そのため一部の亜人種は差別的な扱いを受け奴隷扱いもされるのだが、ここ聖都市では差別的では無く忌避される存在として扱われている。
魔物には魔核と呼ばれるものが存在し、それがドロップした物が魔石であるが同じものが亜人にはあるのだ。その為に聖典には名言はされていないものの、同一視すべきと取られる文言があるので当然なのだそうだ。
それでも聖都市以外では奴隷として街に溶け込む者もいれば、ギルドに所属し働いている者もいる。なので亜人と関わることは普段は無いことではないが、ここ聖都市では殆ど無い。
聖都市で亜人といることは犯罪ではないのだが要らぬトラブルの原因にもなりやすいので避けるのが一般的で、なので道行く人は関わるのを避けていたのだ。
■■■□□□
「そうだったんですね……」
「どうしますか? なぜここにこの子がいるのか理由も分かりませんし、今ならまだ放っておいても良いと思いますけど」
知った今どうするか、ヒソネがもう一度確認してくる。
「そうですね……」
亜人の方を見ると不安そうで、目が潤んでいる。
「この子を保護することは出来ないのかな」
「はぁーそうですか、分かりました。では先ほどのギルドに一度連れていきましょう。そこでならなんとかしてくれると思いますよ」
ギルドの案内人は関わりたく無さそうな顔をしているが、聖都市で忌避される存在だといえども保護する団体がどこかにはいるのでそこを紹介してもらい連れていくのだそうだ。
ということでまだ何も決めることが出来ていないが、一旦は店舗探しは取り止めることになった。
0
お気に入りに追加
710
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。


貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる