異世界に召喚されたけど商人になりました。

シグマ

文字の大きさ
上 下
46 / 61
第8章 武器(剣2)

#44 リサイクル?

しおりを挟む

 鉄の剣が良いかと思えば、結局は良い剣かつ加護を施した剣が良いという。剣の質を高めることは出来ないことはないが、加護は商会に出来る人がいないばかりか他の人にも頼れない状況で八方塞がりになってしまった。

 とりあえずは剣の質の部分を工夫しながらエルラーと共に解決策を探っていく。

■■■

「だからそこはもう少し分量を増やしてだな」

「でもそれだと硬さが足りなくないか?」

「でも魔結晶との相性を考えるとな……」

 エルラーと二人でひたすら検討をしつつ剣の質を高めていくのだが、やはりアトゥムスの違和感を無くすことは出来ない。

「まぁ無理して私に合わせなくても、君が納得できる最高の剣を作ってくれるのであればそれでもいいから」

「そう言われましても……」

 使い手が納得できない剣を作り、たとえそれが業物だったとしても納得は出来ない。

 まだ答えが分からないならまだしも、違和感の原因が分かった上でどうしようもない現状が歯痒い。

「この剣がなければこんな思いをせずに済んだかもしれないのに……いやそれは無いか」

「一人で何をぶつぶつと言ってるんだよ? そんなに見るのが嫌ならインゴットに戻してしまえばいいだろ?」

「へぇーそんなこと出来るんだ……って、もしかしてそのインゴットから剣を作り直したら良いのが出来るのでは?」

「うーん、どうだろうか?」

「アトゥムスさんは何か知っていますか?」

「そうだね……確かインゴットに戻したら加護は無くなってしまうと言ってたかな」

 アイテムとしての名前が変わり定義が変わってしまうと、加護がかき消されてしまうらしい。

「そうですか……でもまぁこのまま加護以外はなまくらな刀を残していても仕方ないですし、インゴットに戻してしまいますか」

 ということで神にもらった鉄の聖剣をインゴットに戻してしまうことにした。

■■■

 聖剣を持っていても良い思い出は無く、むしろ戦闘がトラウマになりかけたので躊躇なく溶かしインゴットに形を変える。

「出来たけど、どうなんだろうか?」

 見た目はただの鉄のインゴットだ。ハヤトは鑑定ができないのでエルラーに聞く。

「これは……」

―――――――――――――――――――――――――――
[鉄インゴット(+):ランクD]
状態:良 効果:加護小+
鉄で出来たインゴット。
加護が付与されている。
―――――――――――――――――――――――――――

「どうやら加護が付与されたままみたいだぞ!」

「アトゥムスさん、どういうことなんですか?」

 形を変えると加護は消失してしまうはずだったのではないのだろうか?

「うーん、自分も神官から聞いていただけだから詳しく分からないな。でも何かは変化しているのではないかな?」

「確かに元の加護は大だったのに小になってるな」

「つまり加護の効力は弱まったけど、無くならなかったということですか……」

 神官の加護と違って神による加護だから起こった現象なのかもしれない。

「そんなこともあるもんなんだね」

「そうですね……ってこれで剣を作り直したら問題解決じゃないですか!」


 悩み続けてきたのに身近なところから解決策が舞い込んできた。そしてついに完成させる道筋が見えてきた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」 その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。 『万能職』は冒険者の最底辺職だ。 冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。 『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。 口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。 要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。 その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...