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第8章 武器(剣2)
#41+ 龍物語
しおりを挟む――遥か昔、龍が空を飛んでいた頃の話。
まだ勇者も冒険者もおらず全ての土地が魔物の領域なので、人は常に命の危険に晒され怯えながら暮らしていました。
魔物は動物のように作物を荒らすにだけにとどまらず人を襲い殺します。それは食欲などの原初的欲求だけでなく、人に対して嫌悪感を抱くのでそこに明確な理由はありません。
人は魔物の侵攻に抗い必死に戦おうとしましたが、魔物に対して戦う術を知らない為に被害は甚大なもので、とにかく近付かないことしか出来ませんでした。
この状況をどうにかする為に助けを求めたのが龍という種族です。
龍はこの時代に魔物と戦える唯一の存在で全ての生物の頂点に君臨する存在でしたが、自由に空を飛び何者にもとらわれることなく気ままに生きています。なので人という種が龍の比護に入るためには、少なからず代償が必要でした。
人が龍の比護の代償として求められたことは若い子供を供物として捧げることで、その代わりとして守って貰えることになったのです。
なぜ龍が若い人の子を求めたのかは分かりませんが、龍は盟約に従い人を襲う魔物を殺すようになりました。
そして龍が守る場所は龍域と呼ばれ、魔物が近付くことが出来なくなります。その名残は各地に残り、人の領域として村や町が造られました。
こうして人が一時の平穏を手にした後のある日、人の村に近付く者がいました。
傍らに竜を携えたその者は自らを龍人と名乗り、人と共生し人を守ってくれるようになりました。そして龍人は魔物と戦う術としてスキルそして魔法を人に教え、平穏な暮らしは末永く続いていくものと思われました。
しかしその期待は人の欲によって失われます。平穏な暮らし送ることで龍に守られている恩恵を忘れ、龍人によって授けられた魔物と戦う術を覚えた人は思います、『もう子供を龍に捧げる必要は無いのではないか?』と。
そして人が龍との繋がりを断ち切る為には龍と繋がる龍人が邪魔で、人は龍人を罠に嵌めて追い出すことにします。
それに気付いた龍人は悲しみ、嘆き、人の側から離れていきました。
人は供物を捧げることを辞め、これで子供を失わずに済むようになるのでより皆が幸せになることが出来ると考えました。
しかしその希望は突如裏切られます。
龍の加護を失った龍域に、魔物が大挙して押し寄せてきたのです。龍の怒りを買った代償はあまりにも大きなものでした。
結果として多くのが命を失われ、人は龍に守られて平穏を享受していたことを思い出します。
悲しみに包まれた人は己の過ちを反省し、龍そして龍人との繋がりを取り戻そうとしましたが、既にその術を失い龍そして龍人はその後、人の前に姿を表すことはありませんでした。
それでも人の中には龍を神の化身として崇める者が現れ、龍人は神の使いであるとされるようになりました。そして人に初めて姿を表した龍人の名をとって、龍を崇めるヴァン神教としての教えが広まります。
己の過ちを反省し崇め続けた結果として後の教皇が龍と繋がりを取り戻し、龍の怒りを静めることで龍域があった場所は平穏が訪れ、町は人の領域として魔物の侵攻が無くなります。
こうして人はヴァン神教の教えを守り、龍によって守られていることを忘れず伝えていくことで平穏に暮らすことが出来るようになったのでした。
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