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第6章 回復薬(2)

#35 納入する

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 ある程度の余裕を持つことが出来たので、交代で休みながらひたすらに丸薬型回復薬を作り続けて、なんとか期日に間に合うように数量を揃えることが出来た。

 後は再び、聖都市に向かい聖騎士団の団長に納品をするだけである。

■■■

 今回はアダムス、ヒソネ、ハヤト、アトゥムスの4人で地竜車での移動なのだが、護衛はアトゥムスがいるので必要ないということで空いたスペースには色々な商品が置かれている。どうせならと今回の赤字を少しでも補填したいみたいである。

「ヒソネは他の商品を売ってきてくれるかな? 取り引きが終わったら合流するから」

「分かりました」

 ヒソネとは分かれて、残りの3人で聖騎士団に向かう。

 普通は地竜車に乗ったまま聖騎士団の本部に入ることは出来ないのだが、今回は聖騎士団長からの依頼であることそしてアトゥムスと一緒なので、聖騎士団用の通用門から入ることが特別に許可された。

 アトゥムスは団長に会うのは嫌だということで、一旦別れてアダムスとハヤトの2人で聖騎士団長の元に丸薬型の回復薬1000個を納める。

「流石だなアダムス殿。多少ムリを言ったつもりだったがきちんと用意するとわな」

「皆が頑張ってくれたおかげですよ。私など見ていただけです」

「そうか、良い仲間を持ったのだな。だがこれでラーカス商会の納品能力は問題無いことは示すことが出来たから、今後も継続して取引をさせてもらおうと思うが問題無いかね?」

 今すぐに取引をはじめられる訳ではなく、教会も含めて各所に話を通してからになるらしいが聖騎士団長の御墨付きを貰えたことは大きい。

「勿論ですとも、是非今後も取引を継続させていただきたい。聖都市にお店を構えた時には今回よりも早く納品出来るようになりますので頑張らせて頂きますよ」

「そうだそうだ、そのお店の許可だが」

 団長が1枚の紙をアダムスに手渡す。

「これはまさか許可証ですか……それも認可済みとわ」

 本来であれば1ヶ月ぐらいはかかる申請なのだが手を回して許可を取っておいてくれたみたいだ。ということはもしこの取り引きが失敗していたら破り捨てられて不認可にされていたかもしれない。

「有難うございます。それではご期待に応える為にも直ぐにでも場所を確保して店を構える準備をしなければいけませんね」

「楽しみにしているぞ」

「そうです、あとこれは新商品のサンプルなのですが軟膏型の回復薬です」

「ほう、こんなものもあるのだな。分かったこれも試させて貰おう」

「よろしくお願いします」

 ということで聖騎士団長との取引を無事に終えて、部屋を後にした。

■■■

 団長の部屋を出て暫くすると、アトゥムスがどこからともなく現れる。

「話は終わった? ならハヤトは連れていっていいかな?」

「ええ、構いませんよ。私はヒソネに合流して仕事をしますから」

「ちょっ! そんな勝手な……まぁいいですけどアトゥムスさんは団長に話をしなくて良いんですか? というより聖騎士団員なのにこんなに勝手に出歩き続けて良いのかというか任務は無いんですか?」

「ああ良いの良いの、その辺は大丈夫だから気にしないで」

 手をヒラヒラとさせながら誤魔化されるので、触れて良いのか触れないほうが良いのかいまいち分からないが面倒なことになりそうなので聞かないことにする。

「……まぁいいですが、これから一体何をするつもりなんですか?」

「そんなの決まってるじゃないか! 約束を忘れたのかい?」

「ああそういうことですか」

 ということでハヤトはアトゥムスに連れられて、剣を作ることになった。

 剣自体はエルラーが作ったほうが良いと思うと伝えるも、『ハヤトに作って貰うと決めたから良いんだよ』とのことだ。約束をした手前、断ることは出来ないので了承した。

 剣を作りに行く前に聖騎士団にいる人たちの剣を見せてもらったが、どれもシンプルなのだが人によって個性があって、さらに纏っている雰囲気で業物であることが一目でわかる。


 このレベルの剣を作ることを求められていると思うとプレッシャーなのだが、新しい剣を作り出すということに対して心が踊り、自然と笑みがこぼれるハヤトであった。
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