36 / 61
第6章 回復薬(2)
#35 納入する
しおりを挟むある程度の余裕を持つことが出来たので、交代で休みながらひたすらに丸薬型回復薬を作り続けて、なんとか期日に間に合うように数量を揃えることが出来た。
後は再び、聖都市に向かい聖騎士団の団長に納品をするだけである。
■■■
今回はアダムス、ヒソネ、ハヤト、アトゥムスの4人で地竜車での移動なのだが、護衛はアトゥムスがいるので必要ないということで空いたスペースには色々な商品が置かれている。どうせならと今回の赤字を少しでも補填したいみたいである。
「ヒソネは他の商品を売ってきてくれるかな? 取り引きが終わったら合流するから」
「分かりました」
ヒソネとは分かれて、残りの3人で聖騎士団に向かう。
普通は地竜車に乗ったまま聖騎士団の本部に入ることは出来ないのだが、今回は聖騎士団長からの依頼であることそしてアトゥムスと一緒なので、聖騎士団用の通用門から入ることが特別に許可された。
アトゥムスは団長に会うのは嫌だということで、一旦別れてアダムスとハヤトの2人で聖騎士団長の元に丸薬型の回復薬1000個を納める。
「流石だなアダムス殿。多少ムリを言ったつもりだったがきちんと用意するとわな」
「皆が頑張ってくれたおかげですよ。私など見ていただけです」
「そうか、良い仲間を持ったのだな。だがこれでラーカス商会の納品能力は問題無いことは示すことが出来たから、今後も継続して取引をさせてもらおうと思うが問題無いかね?」
今すぐに取引をはじめられる訳ではなく、教会も含めて各所に話を通してからになるらしいが聖騎士団長の御墨付きを貰えたことは大きい。
「勿論ですとも、是非今後も取引を継続させていただきたい。聖都市にお店を構えた時には今回よりも早く納品出来るようになりますので頑張らせて頂きますよ」
「そうだそうだ、そのお店の許可だが」
団長が1枚の紙をアダムスに手渡す。
「これはまさか許可証ですか……それも認可済みとわ」
本来であれば1ヶ月ぐらいはかかる申請なのだが手を回して許可を取っておいてくれたみたいだ。ということはもしこの取り引きが失敗していたら破り捨てられて不認可にされていたかもしれない。
「有難うございます。それではご期待に応える為にも直ぐにでも場所を確保して店を構える準備をしなければいけませんね」
「楽しみにしているぞ」
「そうです、あとこれは新商品のサンプルなのですが軟膏型の回復薬です」
「ほう、こんなものもあるのだな。分かったこれも試させて貰おう」
「よろしくお願いします」
ということで聖騎士団長との取引を無事に終えて、部屋を後にした。
■■■
団長の部屋を出て暫くすると、アトゥムスがどこからともなく現れる。
「話は終わった? ならハヤトは連れていっていいかな?」
「ええ、構いませんよ。私はヒソネに合流して仕事をしますから」
「ちょっ! そんな勝手な……まぁいいですけどアトゥムスさんは団長に話をしなくて良いんですか? というより聖騎士団員なのにこんなに勝手に出歩き続けて良いのかというか任務は無いんですか?」
「ああ良いの良いの、その辺は大丈夫だから気にしないで」
手をヒラヒラとさせながら誤魔化されるので、触れて良いのか触れないほうが良いのかいまいち分からないが面倒なことになりそうなので聞かないことにする。
「……まぁいいですが、これから一体何をするつもりなんですか?」
「そんなの決まってるじゃないか! 約束を忘れたのかい?」
「ああそういうことですか」
ということでハヤトはアトゥムスに連れられて、剣を作ることになった。
剣自体はエルラーが作ったほうが良いと思うと伝えるも、『ハヤトに作って貰うと決めたから良いんだよ』とのことだ。約束をした手前、断ることは出来ないので了承した。
剣を作りに行く前に聖騎士団にいる人たちの剣を見せてもらったが、どれもシンプルなのだが人によって個性があって、さらに纏っている雰囲気で業物であることが一目でわかる。
このレベルの剣を作ることを求められていると思うとプレッシャーなのだが、新しい剣を作り出すということに対して心が踊り、自然と笑みがこぼれるハヤトであった。
0
お気に入りに追加
710
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
特殊スキル《錬装》に目覚めた俺は無敵の装備を作り、全てのダンジョンを制覇したい
紙風船
ファンタジー
等しく芽生える”職業”と呼ばれるある種の才能に恵まれなかった俺は森の中でモンスターに囲まれていた。
窮地に陥ったその時、偶然にも才能が開花した俺は命からがらに危機を脱することができた。
町に戻った俺が確認した職業は《錬装術師》。
聞いたことのない職業だったが、俺は偶然にもその力の一端を垣間見ていた。
それは、”武器”と”武器”の融合……”錬装”だった。
武器に備わった”特性”と”属性”。その無限の可能性に俺は震えた。
俺はこの力で強くなりたいと強く、強く願った。
そんな俺の前に現れた最強と名高い冒険者”チトセ・ココノエ”。
偶然現れた彼女だが、その出会いは俺の運命を大きく変える出会いだった。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる