異世界に召喚されたけど商人になりました。

シグマ

文字の大きさ
上 下
29 / 61
第5章 出逢い

#28 聖騎士団に潜入しよう

しおりを挟む

 高ランクの武器を取り扱っている場所は町の武器屋や商店ではなく商会であるが、ライバルになる商会に見せてもらえないか頼んで見せてもらえるほど世間は優しくない。なので売っている人が無理なら持っている人に聞こうということで、強い人が集まる聖騎士団に行って聞いてみることになった。

 聖騎士団の本部があるのは、王城の隣だ。

 隣といっても王城自体は大きな湖の真ん中にあり、その離れ島が聖騎士団の本部そして国教であるヴァン信教の教会となっているのだ。教会の総本山は北にある霊峰ジーフにあるのだが、ここは王城支部といった所である。

 ということでハヤト、エルラー、ヒソネの3人はまず城へ至る橋の前の門にやって来た。

■■■

「いきなり訪ねても大丈夫なのかな?」

「普通は駄目ですよ、ですが今日はこれがあるのです!」

 ヒソネが見せてくれたのは聖都市で実店舗を開く為の許可申請書だった。

 ハヤトは販売網の拡大をしないといけないなとこの町に来て来て思ったが、アダムスは既にその考えに至っていたみたいだ。

「つまり城で許可申請したついでに、聖騎士団の所を訪ねるということですか?」

「ええ聖騎士団の本部にも何度か商品を納めたことがあるので、その時の知り合いに合えれば誰かを紹介してくれるかもしれません」

「まぁ駄目で元々ですし、それでいきますか」

「そこの門をくぐることはその許可申請の為という理由で通れるけど、聖騎士団の本部に入るのは難しいからな。挙動不審な動きをしたら駄目だぞ?」

「そんなことしないって、エルラーは心配性だな」

「そうか、それならいいんだが」

■■■

 城の敷地内へは二人の言う通りすんなりと入ることが出来た。

 武器は持ち込みを禁止されたが有事でなければ理由も明確なので入れるのは当然なのだろうが、それでも門番にチェックされるときはドキドキする。

 城の内部ではなく手前にある棟で事務手続きを行い、申請はすんなりと終わった。

 許可されるかどうかは審査を行い後日に連絡が届くとのことだ。

 普通であればこれで終了なのだがハヤト達にとっての本番はこれからで、城の敷地から出る門に向かうのではなく、聖騎士団のある島へ通じる橋に向かう。

 さも聖騎士団に納品する用事がある商人として、自然に移動するのだが……。

■■■

「どうしてこうなった!」

 ハヤト、エルラー、ヒソネの三人は拘置部屋に入れられている。

「あれだけ、不審な動きをするなと言ったのにお前が盛大に転けるからだろ」

「はぁー、本当にどうするつもりなんですか」

 エルラーとヒソネがやれやれといった風にこちらを見てくる。

 何があったかと言うと、聖騎士団のある島へ向かう橋の途中で盛大に転けてしまったのだ。そこに心配した衛兵がやって来て色々と聞かれ誤魔化しきれなかったので、事前に申請もなく聖騎士団に近付く不審者扱いをされ拘束された。

 わざわざ聖騎士団に乗り込んでくる馬鹿は普通いないので、衛兵にとっても前代未聞の侵入者ということで処遇をどうすれば良いか分からず、今は団長の判断を仰いでいる間はとりあえず拘束されているのだ。

 武器を持っていないので危険性はないと思ってもらえたのは良かったが、商会の信用に関わるので大事になるのは困る。

「以前取引したという人に話をすれば何とかならないですかね?」

「こんな面倒事に首を突っ込んでくれるひとはいませんよ」

「そうですよね。ま、まぁ正直に話せば何とか……」

 どうなるか不安しかないが自分達にはどうすることも出来ないので、とりあえずは聖騎士団の判断を待つことになった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺がいなくても世界は回るそうなので、ここから出ていくことにしました。ちょっと異世界にでも行ってみます。ウワサの重来者(甘口)

おいなり新九郎
ファンタジー
 ハラスメント、なぜだかしたりされちゃったりする仕事場を何とか抜け出して家に帰りついた俺。帰ってきたのはいいけれど・・・。ずっと閉じ込められて開く異世界へのドア。ずっと見せられてたのは、俺がいなくても回るという世界の現実。あーここに居るのがいけないのね。座り込むのも飽きたし、分かった。俺、出ていくよ。その異世界って、また俺の代わりはいくらでもいる世界かな? 転生先の世界でもケガで職を追われ、じいちゃんの店に転がり込む俺・・・だけど。

ぽっちゃりおっさん異世界ひとり旅〜目指せSランク冒険者〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
酒好きなぽっちゃりおっさん。 魔物が跋扈する異世界で転生する。 頭で思い浮かべた事を具現化する魔法《創造魔法》の加護を貰う。 《創造魔法》を駆使して異世界でSランク冒険者を目指す物語。 ※以前完結した作品を修正、加筆しております。 完結した内容を変更して、続編を連載する予定です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...