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第1章 魔道具(1)
#9 魔結晶の作り方
しおりを挟む魔道具を安定的に作るためには陣を刻める魔石の安定供給を実現しなければならない。
そこで様々な方法を試したのだが、どれも上手くいくことはなかった。
そして最後の頼みの綱として、勇者を召喚する為に使用する魔結晶に掛けることにしアダムスに方法を尋ねることにした。
■■■
アダムスがいる部屋に勢い良く扉を開けて中に入ると、いきなり小言を言われる。
アダムスはラーカス商会の経理も担当しているので、失敗ばかりしているハヤト達に非があるので仕方がないのだが。
「で今度は何をやらかしたのですか?」
「いやまだ何もしてないですよ!?」
「まだって……まぁいいですが何のご用ですか? お金は出しませんよ」
「実はお聞きしたいことがあって、魔結晶の作製方法を知りたいんです」
「なぜそのようなものを? 貴方達が研究していたのは魔石ではないのですか? それに勇者の召喚をもう一度行うのは無理ですよ」
「いや勇者召喚をしたいという訳ではないのです……」
ハヤトとエルラーが何に使用しようとしているのかアダムスに説明をした。
■■■
「魔結晶で魔道具を作るのですか……。たしかに面白そうではありますね」
「でしょ! だから作製方法を教えて下さい!」
「それはできません」
「なんで!?」
「いや私も知らないからですよ。あの時は過去に国の勇者召喚に関わったという魔術師がたまたま商会長と酒の席で仲良くなった後に勢いで作製したものですからね」
そんな適当なノリで作った魔結晶で召喚されたという事実にショックを受けるが、そんなことよりも今は作製方法を知りたい。
「何か手がかりは残っていないんですか?」
「うーん、確かヒソネが何やら買い出しに行かされてたから何を使ったかは分かるかも知れないな」
「本当ですか! そのヒソネはどこに!」
僅かな手掛かりでも何でも良いから知りたい。道具が分かれば作製方法が何かしら分かるかもしれない。
「あーあ、そこだ」
後ろを指差されるので振り返ると、扉の後ろから一人の女性が現れる。
扉を開けた時に巻き込んでしまったみたいだ。
「ひどいですよー。というよりアダムスさんも見てたなら直ぐに助けてくださいよ」
「影が薄いのはいつものことだろ。その扉芸はもう見飽きたよ」
一際影の薄いこの女性がヒソネというらしい。この扱いを見ていてハヤトは謝るタイミングを逃してしまったがヒソネもなれているのか気にする素振りを見せない。
「えっと、それで何か知っているんですか?」
「はい!えっと確か……あったあった、これがその時のメモです」
ハヤトは見ても読むことが出来ないので代わりにエルラーが読む。
「そうか溶かすといっても魔力で抽出するのか。その為に必要なのは……」
「ちょっと、僕にも説明してくれよ」
「ああ魔力を使えないハヤトに話しても出来ることがないから、後で作りながら説明するよ、とりあえず魔石をありったけ準備するのと、状態の良い魔石を丸く加工しておいてくれ」
「……わかったよ」
エルラーとヒソネが二人で買い出しに行って、仲間外れにされたようで寂しいが役に立てないのなら仕方ない。
■■■
しばらくしてエルラーとヒソネが帰って来たので早速、魔結晶の作製に取りかかる。
「それでどうやって作るんだ?」
「道具からの想像だから違うかも知れんがとりあえずやってみよう。えっとまずは魔石を用意して……るか、それを適度な大きさの容器に入れて、この聖水を入れる。そして魔力を込めて……」
ということで理科の実験のような地道な作業の繰り返しを行い何度も失敗したが、コアにするべく作った丸い魔石の回りに真珠の層のようにいくつもの魔結晶の層が出来上がった。これで魔道具を作ることが出来れば良いのだが。
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