9 / 61
第1章 魔道具(1)
#8 魔石の研究
しおりを挟む魔道具を作るのに重要になってくるのは魔石の質だ。だが質の高い魔石を入手するには莫大な費用が掛かるので練習に使うのには気が引ける。
ということで今日は質の高くない魔石でも、魔道具に用いる方法がないか研究することにした。
■■■
小さく質の安定しない魔石は安く幾らでも手に入るので、これを使えないか仕事を終えたエルラーと一緒に取り組むことにした。
「これまでに何か試したことはないんですか?」
「ないな、魔石を加工するだけでも高い錬金スキルがいるからな。ちなみにハヤトはどのくらいのランクなんだ?」
「錬金スキルはBだな」
「マジかよ……国のお抱え錬金術師なみじゃないか」
職人の心得のスキル効果が分かって、色々と試したあとに再度ギルドに向かって情報の更新を行って現状のスキルの状態を知った。
スキルランクが初めから高い状態だったのでこれが普通かと思ったがそうでは無いらしい。
「そんなに凄いのか? 他の生産系のスキルも軒並みBランクになってるんだけど……」
「はぁー、やっぱり勇者って凄いんだな。というよりそのユニークスキルか。俺も才能に目覚めないかな」
羨ましがっているエルラーだが、鍜冶スキルはAランクで自分より上である。だからこそ赤字を出そうが商会は彼を解雇しないし、役職も与えているのだ。そしてこの商会には他にも問題を抱えながらもAランクのスキル持ちが何人かいるらしい。
「でも加工は出来ても、知識はないから色々と教えてくれ」
「そうだな……でも扱いが難しくて値段も高い魔石で実験しようと思う奇特な人なんて俺らぐらいだろうし、文字を刻む以外の加工なんて誰もやったことがないだろうからな。うーん、まぁまずは組み木細工のように繋げてみるか」
ということで考えられる方法を次々に試していった。
■■■
検証の結果はどれも惨憺たるものだった。
「……何か昨日からずっと丸焦げな気がするんだけど」
「まぁ気にするなって、これは俺たちが努力した証なんだから」
「そんなものかな……」
まぁ煤まみれなのは置いておいても、何も結果を得られなかったのは頂けない。何か方法がある気がするのだが。
「そういえばまだ鍜冶のように溶かすとかはやっていなかったけどどうかな?」
「それは絶対に駄目だな」
「どうして? やってみる価値はあると思うんだけど」
「魔石はエネルギーの塊というのは知ってるよな? それを急激に加熱すると……」
「また爆発するのか。確かに高炉でそんなことしたら取り返しがつかないですね」
「ああ流石に俺の解雇どころではすまないし、商会が物理的に吹っ飛ぶ」
「それなら勇者を召喚する時に使う魔結晶ってどうやって作るんだ?」
溶かすことが出来ないと聞いて、それなら魔石を精製して魔結晶を作ると聞いたのを思い出した。魔石を直接使うよりも突破口になるかもしれないので是非とも作製方法を知りたい。
「それは……俺も知らないな。魔術絡みになるけど、もしかしたらアダムスなら何か知ってるかもしれんぞ?」
「そうか召喚に関わっていたアダムスなら知っていそうだな」
僅かな可能性が残っているのであれば何にでもチャレンジしてみたい。
ということで魔道具作りに反対しているアダムスに協力を申し出に行くことにした。
0
お気に入りに追加
711
あなたにおすすめの小説
神々に天界に召喚され下界に追放された戦場カメラマンは神々に戦いを挑む。
黒ハット
ファンタジー
戦場カメラマンの北村大和は,異世界の神々の戦の戦力として神々の召喚魔法で特殊部隊の召喚に巻き込まれてしまい、天界に召喚されるが神力が弱い無能者の烙印を押され、役に立たないという理由で異世界の人間界に追放されて冒険者になる。剣と魔法の力をつけて人間を玩具のように扱う神々に戦いを挑むが果たして彼は神々に勝てるのだろうか
ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜
ネリムZ
ファンタジー
唐突にギルドマスターから宣言される言葉。
「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」
理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。
様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。
そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。
モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。
行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。
俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。
そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。
新たな目標、新たな仲間と環境。
信念を持って行動する、一人の男の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
【追放29回からの最強宣言!!】ギルドで『便利屋』と呼ばれている私。~嫌われ者同士パーティーを組んだら、なぜか最強無敵になれました~
夕姫
ファンタジー
【私は『最強無敵』のギルド冒険者の超絶美少女だから!】
「エルン。悪いがこれ以上お前とは一緒にいることはできない。今日限りでこのパーティーから抜けてもらう。」
またか…… ギルドに所属しているパーティーからいきなり追放されてしまったエルン=アクセルロッドは、何の優れた能力も持たず、ただ何でもできるという事から、ギルドのランクのブロンズからシルバーへパーティーを昇格させるための【便利屋】と呼ばれ、周りからは無能の底辺扱いの嫌われ者だった。
そして今日も当たり前のようにパーティーを追放される。エルンは今まで29回の追放を受けており次にパーティーを追放されるか、シルバーランクに昇格するまでに依頼の失敗をするとギルドをクビになることに。
ギルドの受付嬢ルナレットからの提案で同じギルドに所属する、パーティーを組めば必ず不幸になると言われている【死神】と呼ばれているギルドで嫌われている男ブレイドとパーティーを組むことになるのだが……。
そしてそんな【便利屋】と呼ばれていた、エルンには本人も知らない、ある意味無敵で最強のスキルがあったのだ!
この物語は29回の追放から這い上がり『最強無敵』になった少女の最強の物語である。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる