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第2章 エルフの秘宝
ユキノの話
しおりを挟むエルフを保護していることをギルドとしても認めてくれる採決が下されたが、ユキノに聞けていないことも多いので再度話し合いをすることにした。
ユキノのお腹の虫が鳴ったので、食事をとってから落ち着いたところで話をする。
■■■
「それでユキノ、勇者を既に見つけたとは一体どういうことなのかな?」
「精霊が言ってるの、アヴラムと一緒にいるべきだって。それがエルフを助ける最善なんだって」
「精霊? でも俺は勇者ではないよ」
あのクズと同じ勇者と言われると少し微妙な心持ちになる。
「人にとっての勇者は知らない。でもアヴラムは精霊に愛されてるみたいだし、私にとって勇者はアヴラムなの。ここでアヴラムに助けられたのも偶然とは思えない」
勇者と言われてユウトの事だと思っていたのだが、そうではないようだ。確かにあの勇者にユキノを引き渡すのは気が引けるので、それはそれで良いのだが。
「うーん、まぁ俺が勇者かどうかは置いといて精霊って何なのかな?」
魔法を使うために大精霊の力を借りるということは知っているが、ユキノの話す精霊はそれとはどうも違うみたいなので確認をする。
「精霊は私たちの周りのいろいろな場所にいて常に見守ってくれているの。そして大精霊との架け渡しもしてくれる」
「ユキノはその精霊を見たり話したりすることが出来るの?」
「私はまだ姿をはっきりとは見れないし話せない。でも大事なことは感じ取れる。アヴラムの周りにいる精霊は楽しそうでこんなに嬉しそうなのを今まで見たこと無かった」
ユキノには光の珠のように見えているらしいので、アヴラムは周りを見るがもちろん見ることも話を聞くことも出来ない。
「あれ? でもさっき精霊が俺が勇者とか言ってたって話してなかった?」
「……それは比喩。直接聞けてはないけど精霊がこんなに好んでいるアヴラムが、探していた精霊が導きし者に間違いない」
ユキノの間違いでエルフの里に行った後にやっぱり違ったと追い返されたらどうするんだと思うが、[エルフの涙]の手掛かりを得るためにエルフの里には行きたいのでこれ以上は深く聞かないで話を変える。
「……まだということは、訓練すれば精霊を見ることが出来るの?」
「私はまだ方法を知らないし、里の大人達でも多くは見ることが出来ないから分からない。でもエルフにしか見えないとも聞いたこと無いから大婆様に聞いてみればいい」
聖騎士団にいた時でさえ精霊が見える人などいなかった。もし見えることが出来るようになるのであれば[ゴブリンの生角]どころの話では無いだろう。
「そういえば里に行くって話だけど、危機って何があるの?」
「詳しくは大婆様も話してくれなかったから分からない。でもこれまでに無かった動きが魔物にあるみたい」
魔物の動きが関係しているのであれば、もしかするとこの前に遭遇した[…]と関係があるのかもしれない。
「それは確かに気になるな。……でも本当に俺がエルフの里に行っても大丈夫なんだよね?」
いくらユキノが良いと行っても人と交流を絶っているエルフの村に行くのは本当に大丈夫なのか流石に心配になる。やっぱり勇者でないから駄目だと追い出されたらトラウマものだ。
「大丈夫、何があっても精霊に愛されてる人を蔑ろにすることはない。アヴラムと……あとはビートも大丈夫」
「ということはフォッシルさんとかモブレインさんは駄目なのか?」
「うん。特にあの人は精霊が絶対駄目だって言ってるの」
そう言ってユキノはフォッシルの方を指差す。
「精霊に嫌われるって何をしたんですか?」
「心当たりは……ありますね」
フォッシルは苦笑いしている。
(あまり深く追及しない方がよさそうだな……)
■■■
ユキノがエルフの里に連れていってくれるみたいなのだが、今後の予定についてフォッシルにも確認する。
「ならエルフの里には俺とビートだけが行けばいいんだな」
「そうなるのでしょうな。我々が付いていっても追い返されるのが関の山でしょう。[エルフの涙]を入手出来ていないのにこれ以上、力になれずに申し訳ない」
「いえここまでこれたことも、ユキノを助けられたのもフォッシルさんのお陰なのですから謝らないで下さい」
「そう言って頂けると有り難い。私はここまでの報告をするために一度、商会の本部に戻りますが、お二人のご武運を願っていますよ」
「別にエルフと戦いに行くわけでは無いのですが……」
「ほっほ、そうでしたな。ですがこれまで人を受け入れていなかったエルフの里に行くわけですから一筋縄ではいかないでしょうから、くれぐれも気を付けてください」
「そうですね、有難うございます。かならず良い報告が出来るように頑張ってきます」
こうしてユキノを助けるための長い1日が終えたのだった。
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