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第2章 エルフの秘宝
心配されることは嬉しいこと
しおりを挟む巨大なショウグンガザミとの遭遇によって思わぬ事態となってしまったが、アヴラムは事の顛末を報告をするために街に戻ることにした。
■■■
街に近づくとハンスとビートがいて、門番と何やら話している。
「だから急いでくれ! あいつがまだ一人で戦ってるんだ」
「分かったから、落ち着いてくれ! 今、街の冒険者ギルドに連絡を入れてるから直ぐに誰かしらが駆けつけてくれるはずだから」
「そんなこと言ってる場合じゃない! 化け物みたいな魔物が出たんだ、早くしないとあいつが死んでしまう!」
どうやら殿で残してきたアヴラムを心配してくれているらしい。
近づいても気付かれないので話しかける。
「勝手に殺すんじゃない。俺は大丈夫だ」
「うおっ、お前なんでここに! って大丈夫なのか!?」
「ああ、この通り何ともないよ。それよりハンスの方が重症なのに大丈夫か?」
「そうか、それは良かった。俺は応急処置を済ませたから大丈夫だ。……それであいつはどうなったんだ? まさか倒してきたのか?」
「いや戦う前に逃げられた。その事も含めて早くギルドに報告したいんだけど……。ビートも心配をかけてすまなかったな」
「ダイジョウブ。オレはアヴラムをシンじていた」
「そうか、ありがとう」
話が落ち着いたのを見て、門番が話しかけてくる。
「アヴラムさん、それでその魔物はどうなったのですか?」
「恐らく今はもう現れることはないと思う。周辺にも気配がないから、直ぐに何か被害が出ることも無いが一応は調べておいて貰えるか?」
「ああ、そうさせて貰おう。後でギルド経由で色々と報告をして貰えるか?」
「分かった」
ここでは簡単に門番の人に事情を説明し、駆けつけた冒険者に調査をしてもらうことになった。
■■■
アヴラム達は報告のためにギルド[レムベル]へ向かった。
ショウグンガザミの討伐依頼の達成報告をしたいのもあるが、駆け出し冒険者ギルドの[クリフォート]よりも何か情報があるかもしれないからだ。
ギルドに入ると中がいつも以上にざわついていた。
「急いで! 早く救出に行って……」
大声で指示を出していたネフィリムと目が合い、一瞬だけ時が止まるが、直ぐにこちらに向かって歩いてきてビンタされる。
「心配させないでよ。あなたに何かあったらルインに何て説明したらいいのよ!」
「ごめんなさい」
ハンスが門番に報告したその知らせがギルドに届き、慌てて所属の冒険者を救出に向かわせようとしていたみたいだ。
ショウグンガザミだけであれば、命の危険があるような事はなかったので、いささかハンスが大袈裟に騒いだせいではあるのだが、素直に謝った。
■■■
ハンスは怪我のため治療施設に向かい、アヴラムとビートは事の顛末を説明するために応接室に案内された。
そしてショウグンガザミを討伐していると巨大なショウグンガザミに襲われたこと、そして謎の[…]と古龍が現れたことを伝えた。
ビートも巨大なショウグンガザミ以降は知らないので、ネフィリムとギルド長のダンテと一緒に驚いていた。
「巨大なショウグンガザミが出現したこともそうですが、古龍ですか……。それに謎の[…]も何者なのか気になりますね」
「これまでに何か関連する噂などは無かったのですか?」
この質問にはダンテが答えてくれる。
「無いな。古龍なんて、一冒険者ギルドでは手に負えない案件だ。それこそ聖騎士団が対処するようなものだ。一応は問い合わせてみるが、恐らく何も情報は出てこないだろうな……」
問い合わせなくても、ついこの間まで聖騎士団にいたアヴラムが知らないので答えは分かるが、それを言うわけにはいかないので素直に聞いてもらうことにした。
「はい、お願いします。それと門番にはお願いしたのですが、消えたショウグンガザミも含めて何か手懸かりがないか調べておいて貰えますか?」
「ああそれはもちろん冒険者ギルドとしての使命だからな。何か見つければ君たちにも報告しよう」
「お願いします」
確認などの為にダンテは部屋を後にした。
■■■
緊急の報告が終わったので、依頼の報告もすることにする。
「ネフィリムさん。依頼の達成報告もここでして大丈夫ですか?」
「……そうでしたね。それではショウグンガザミの魔石を提出してもらってもいいですか?」
ハンスとビートが倒したショウグンガザミの魔石は回収出来なかったが、アヴラムが一人でも倒した魔石を取り出す。
「5個ですね。こんな短期間に……というのはもう今さらですね。大きさも状態も申し分無いので直ぐに報酬を払えますけどどうしますか?」
どうしますかとは、魔石の買い取りも行っているので売るかどうかということだ。
「はい、全て買い取りでお願いします。あと討伐の成果ですがハンスさんもしっかりと加えておいてください」
「彼は足手まといではなかったですか?」
「いえ、そんなことはなかったですよ。彼のお陰でスムーズにショウグンガザミの元にまでたどり着けましたし」
「……そうですか、分かりました。彼が戻ってきたら、彼のギルドカードにも成果を記録しておきましょう」
「お願いします」
「ギルドカードの更新が終わったらルインにも早めに報告してあげてくださいね。一応先に連絡はいれてますけど心配しているはずなんで」
「分かりました、この後直ぐに報告しに行きます」
■■■
こうして初めての冒険者としての討伐依頼は、想定外の事態に巻き込まれながらも無事に終えたのであった。
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